18話 『~吟遊祭~ 一日目 露天巡りしてみませんか?』
詩人祭か吟遊祭か迷ったんですが吟遊祭。
―――クラディ 視点―――
姫様の単位が足りなくて、勉強をしている中、吟遊祭が始まり聖剣のファンタが賞品となり武道大会が同時に始まった。
少々手放すのが惜しいと言っていたが、フィーカが出場するので意地でも優勝して勝ち取るだろう。
「つぅ……」
そして、俺。
現在脇腹を怪我してます。
ベッドに横たわってずっと寝たきりです。
何故怪我をしたか。
それは、姫様に八つ当たりされたからです。
試験が終わって帰ってきたと思ったら殺人鬼のような目で剣を振り回して追いかけてきました。
……死ぬかと思った……。
「私が付いていながらすいません……」
「ルーさんは悪く……無いとも言えないけど……」
ルーさんも、言わずに飛び出して行ったことに怒っていて二人に追いかけられた……。
どうせなら追いかける方がいいというのは傲慢だろうか?
「吟遊祭は、今日も含めて三日あります。最終日には歩けるようになるでしょう」
「はぁ……」
腕輪はミケが改良するとかで預けてあるから使えない。
余分な紙は城にないとか。
そういえば紙は高価なものだったと思い返しつつ、金銭感覚の狂った自分に落ち込みつつルーさんが剥いてくれた林檎を食べる。
「ルーさんはお祭りに行かないの?」
「姫様と王妃様から、しっかり看病するように言いつけられていますから」
この感動のような気持ちはなんだろう。
少なくとも、姫様に向けられているものじゃないことを願おう。
「本人は勉強してるんだけどね」
「残念そうでしたね……」
本当に残念そうに言うルーさん。
彼女のいいところだと思う。
「あ、クラさんできましたよ」
「ふは?」
林檎が口に入ったまま声のした方向を見る。
「軽量化と、体力強化を付けてみました。付けるだけで身体能力が上がると思いますよ?」
「へぇ~」
ミケから渡された腕輪を嵌めてみる。
「何もつけてないみたいだ」
「それは苦労しましたよ。一度重さという概念を頭から消して―――」
長い話は聞かないことにして、早速試してみる事にする。
「召喚」
真っ白な紙が目の前に浮いて出る。
鉛筆が俺の手の中に現れ、こっちも軽量化してあるのか重さを感じない。
「それと、麻さんと何かやってたみたいですけど、何をやってたんですか?」
「必殺技なるものを作ってた。麻美は想像力豊かだね」
俺の考えが届かないところまで考えてしまう。
尊敬できる人間……かな……。
「さて、脇腹の完治。……書けた」
光に包まれ、脇腹が直る。
少し体がだるかったが、それも直っていた。
「ミケは、吟遊祭行くのか?」
「僕は、行きません。イルシアと一緒に錬金術を学んでます。僕が描いて出した物をイルシアが補足する。こんな感じです」
「自分でやるってわけじゃないのか」
「錬金術の限界を学ぶだけです」
急いでいるのか、そのまま戻っていくミケ。
俺は、立ち上がり残った林檎を食べると、側にあった服に着替える。
さすがに恥ずかしいのでルーさんには外にでてもらっていた。
着替え終わると、廊下に出てルーさんに声をかける。
「着替えたよ」
「では、姫様の所に行きましょう。一応報告しておいたほうが―――」
「ちょっと待った」
あぁ、これも姫様思考ってやつだろうか?
俺の悩みの種になりそうだ。
「一緒に、吟遊祭に行かない?案内が欲しいんだ」
少しだけ悩んだ素振りを見せるルーさん。
でも、了承してくれたのでルーさんが普段着に着替えるまで待つことにする。
☆
城下町に出ると、何処を見ても人だかりができていた。
一番人気は先日調査が終わった吟遊詩人の家だそうだ。見物客が居て、金を払えば中を見れるらしい。
管理はフィーカの父さん、カシロアさんがやっている。何か財政にまで進出しているんだけど……。
「こうやって、のんびりするのは久しぶりです」
「俺も、ここまで平和なのは久しぶりだ」
何だか日々の平和に涙が出てくる……。
人混みの中なので泣くのはやめておいたが、心が何だか痛い。
そんな感情を知ってか知らずか、ルーさんは見所を短く説明し、着いたら長い説明をしてくれるという効率的な説明をしてくれている。
中には、地元の人しか知らないようなこともあったので興味が沸く話ばかりだった。
「今日は何だか楽しいです。そういえば、吟遊祭が終わったら貴族になるんでしたよね?」
敬語じゃないルーさんも何だか新鮮だ。
「まぁ、そうだね。公爵って偉いの?」
そこら辺の勉強はまだしていないのでわからない。
「……貴族の中で一番偉いんですよ?」
「……ちょっと、時間をください。心を落ち着けるから」
あぁ、だから言われた時オリエルさんが少し驚いていたのか。
まぁ、普通じゃありえないことだしな……。
「うん、いいよ」
「公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、が爵位の種類で公爵が一番偉くて、男爵が一番下です。まぁ、この国では実力があれば男爵でも子爵でも相当の仕事にはつけますけどね……」
俺を見ているルーさん。
平民でも同じってことか。
ナックも貴族じゃないって言ってたな。
「そろそろ昼食にしましょう」
「そうだね。昼からは城で調べ物をしたいんだけど……」
「手伝いますよ?」
「ありがとう」
図書室の本の場所を大体把握しているルーさんが居ると助かる。
そう思いながら、近くの屋台で豆と鶏肉と米を炊いた食べ物を買う。
味付けは味噌で、食欲をそそる。
「おいしいです」
「うん、おいしい」
何かで棒状に固めてあるそれを近くのベンチに座って食べる。
人が行き交う中で、ここだけがゆっくりとしているように感じるから不思議だ。
食べ終えて、ルーさんの方を見てみるとまだ食べている最中のようだった。
向こうの世界ではポニーテールとか言う髪型をしているルーさんは中に何を着ているのかはわからないがコートを着ていて、下は皮でできているズボンを履いていた。
口元が緩んでしまう。
「……どうかしましたか?」
「え?あぁ、なんでもない」
ここで、褒め言葉でも言えればいいのだが、生憎そんなことを言える人間ではないので誤魔化す。
立ち上がり、周りを見渡すと昼時なので歩いている人は少なかった。
これなら、すぐに帰れそうだ。
ルーさんを隣に歩き出す。
すると、良く見慣れた長い青色の髪が目に入る。
それは、腰ぐらいまで伸びていてスッキリした体系をしている彼女によく似合っていた。
だが、それは俺にとって恐怖でしかない、そう恐怖でしかないのだ。
「る、ルーさん。少し見てまわろう。そうだ、吟遊詩人の家なんかどう?」
「急にどうしたんですか?調べ物は―――」
「あぁああ!!」
急に声をあげる。
俺でもないし、ルーさんでもない。
となると、彼女しか居ない。
「……誰……誰……誰、その女?」
「ふはは~、ハルクさん?どうしたんでぎゃぁあああ!!」
彼女。ハルク・タルトは、俺が居候していた家の娘さんだ。
姫様相手に俺が耐えれるのは彼女が居たから耐性ができていたからだろう。
ハルクを一文字で表すなら『男』で、二文字なら『男女』だ。
その凶暴きわまりない性格で俺を殴ったり蹴ったりしてくるという俺にとって害にしかならない人間だ。
「……で、何でここに?」
「……何その言い方……。折角探してたのに……」
俺を探して抹殺しようとしていたのか……。
という事は、今はルーさんが居るから俺は殺されない。もう、ルーさんに感謝感激だよ。
「私はね、吟遊祭だから来たの。べ、別にあんたが居るからじゃ―――」
「嘘だっ!!」
俺を殺しに来たにきまってる。
おばさんとおじさんが居たから居候していた時は殺されなかったけど、今は違う。
なんて、不幸なんだ……。
い、いや、待て。俺には特殊な能力があったんだ。
ふ、ふふ、ふははははは。
「殺られる前に、殺れという事か……」
「く、クラ様……。少し落ち着いてください」
何かわからないが飲み物を渡されたので飲む。
果実酒か。良く見ると酔っ払っている人がいるけど、多く飲まなければ酔わないから大丈夫。
でも、落ち着いてといいながら酒を勧めてくるのは良くないと思うんだよ、俺は。
「な、何でもいいけどさ。お客様なんだから丁重におもてなししなさい。お・も・て・な・し!!」
「残念ながら、俺にはまだ権力と言うものが無いから無理。ハルクの思っているようなおもてなしも無理」
「使えないわね」
「では、もう会えないことを願っています」
立ち去ろうとする俺を引き止める手が一つ。いや、両手で二つかな?
「さぁ、二択よ。ここで死ぬか、それともおもてなしするか?どっち?」
「……勿論、このまま逃げる方向で」
「選択肢にすらないわ。問題外よ。だから、この馬鹿は……」
何だか酷い言われようだ。
少なくとも、ハルクよりは頭がいい自信はある。
「あぁ、もう……一応、恩は返さないとね。着いてきてよ」
「わかればいいのよ。わかればね」
「……クラ様……」
あぁ、そんな悲しい声をしないでルーさん。
きっと、吟遊祭が終わるまでの辛抱だから。
☆
帰ったら殴られました。
浮気って何?
どういう意味かわからない単語を使われてもわからないよ。
ただの理不尽だよ。
……あいつは、恩人だからってことで豪勢なおもてなしをされているし……。
「痛々しいな……」
「ボフスト。大会にでてるんじゃないの?」
「昼休みだ。それにしても……アレは……苦労するな」
「ゴメン、胸を貸してくれない?」
涙が止まらない。
もう、洪水だよ。雪崩だよ。
せき止められていた物が一気に崩れたよ。
「ボフスト、君は親友だ」
「あぁ、お前も俺の親友だ」
友情ってこんな感じのものなのかな?
「何処かに隠居できる物件は無いかな……」
「逃げるの前提か」
「だって……だって……」
危険すぎるんだ。
俺が人間だとしたら、あいつは太陽だ。
それも、最低な性格をしている。
夜が来ない。雨が降らない。
死んじゃうよ?
「ゴメン、俺もう寝るよ。きっと、目覚めた時には全部夢だったていう……」
「あぁ、頑張れよ」
「うん、とりあえず頑張るよ」
何を頑張るかわからないけど、頑張ろう。
俺は、そのままベッドへと向かい寝た。
―――ハルク 視点―――
どうしても、キツイ言葉を言ってしまう。
自分でも本心がわからない。
終いには、一人になると涙がでてくる。
何でだろう……。
わからない気持ちは私を押しつぶそうとして、どんどん巨大になっていく。
私は、そんな中反発するようにあいつにキツイ態度を取る。
でも、そうすると心が痛むような……。
わからない。
でも、一つだけ。
一つだけわかることがある。
それは、私はあいつが嫌いだという事。
見ているともやもやした感情が私の心を握り締め、私を苦しめる。
他の人には抱かない強い感情。
それは、私があいつを嫌いだという証。
「えぇと……ハルクとか言ったか?」
「……へ?あ、あぁ。えぇと。はい!!」
どうやら、考え込んでいたらしい。
私はこの国のお姫様という人を前にして何ていうことをしていたんだろう……。
特に気にしている様子は無いが、内心では怒っているかも知れない。
それが、私にのしかかってくる。
「どうやら、お前は考え込む性格らしい。クラとかミケとかと違うやつだがな」
「はぁ……」
考え込む。
私はそうなんだろうか?
机の向こう側に座るこの国のお姫様を見て考えてみる。
「そう。この間だ。考えてから話すのではなく、思いついたらそれを口にだすというのも面白いぞ?」
「えぇと……」
このお姫様は何を言っているんだろう。
もしや、怒らせてしまったんだろうか?
自殺したい。あぁ、もうここから消えたい。
そんな感情でいっぱいになる。
「礼儀とかそんなものはいらない。っていうか、堅苦しいのは嫌いだ。ハル、普通だ、普通にしていればいい」
「は、ハルですか……」
初めて言われたのだが、馴染みやすい感じだ。
まぁ、姫が言っているのを否定もできないのでそのまま受け流す。
「え、えぇと、な、何の用で?」
「……本当に聞いているのか?」
「……はい?」
えぇと、何か変なことを言っただろうか?
「お前が、おもてなししろとクラが言ったから私が会っているんだろう。正直、胸では負けていると思うが、私のほうがクラへの愛情は強い!!」
「あ、愛情って……」
何で、そんな事で張り合っているんだろう。
クラなんか、姫ならすぐに手に入りそうなのに……。
チクリと痛む心を無視して、私は考える。
きっと、クラを見たからだ。
クラが居なくなればこんな感情は消える。
そう、自分を納得させる。
「一つ、言おう。私の恋敵になるつもりは無いか?敵が居た方が何でも盛り上がる」
「こ、恋敵って……。その……遠慮―――」
「自分の気持ちに嘘を付くなら、もっとマシな嘘を付け。そうだな……真実だけの人生はつまらない。だったら少しの嘘を混ぜればいい。でも、自分自身に嘘を付くのは良くない。体に悪いぞ?」
「そ、その……」
わからない。
ほんの数分前に出会ったこの女性。
私の何を見たというのだろう。
わからない。
「ルー、アレをもってこい」
「こちらに……」
何か服のような物を持ってくる。
「これはな……メイド服だ!!」
「え?」
頭が苦しい。
理解できないとはこの状況の事をいうんだろうか?
「吟遊祭が終わるまでの間、お前はクラのメイドだ。王族命令!!」
もう、反論できない。
死ぬかクラのメイドになるかだったら生きる道。つまりメイドになる方を選ぶだろう。
少しの間我慢すればいいのだ。
「はい、わかりました……」
「二日後にはどうなっているかな……ふふふ」
最後の、姫様の笑いが気になったが、明日からクラのメイドになる事が決まった。
何故だろう。
クラの一番近くの存在。
嬉しい……のか?
『後書きと言う名の調査プロフィール』
イルシア・アルー 女 13才
説明 一言で言うなら女の子。子供なのに頑張っている頑張り屋さんな性格をしていて、一種の強がり?常識を持っています。
『人生表
0歳~3歳
立ち上がり、話せるまで順調に成長。
3歳
赤ちゃんなどの世話などをする(仕事)。
3歳~5歳
みんなのお姉さん的立場にまで成長。
5歳
とある錬金術師が村へ立ち寄る。
5歳~10歳
錬金術の勉強をする。
10歳~13歳
知識を深めるために旅へ。
13歳
国家資格を取り、姫様に気に入られそのまま国御用達の錬金術師に……。
以上』
容姿
少し白みがかった青。幼さが残った顔立ちに、優しさがプラスされたような顔をしていて、体はまだまだ発育途中!!
能力
『無し』
概要
職業として神を信仰しているが、神には認められていない。
作者から「ベッドの中で構想を考えていたら何か錬金術師=錬金術師というわけのわからない考えが思いついて出てきた子。姫様グループの中で一番幼いですね」
シア『改めて見ると普通な人生ですね~。転機は立ち寄ってくれた錬金術師さんですか。ありがとうございます。あ、次回予告ですね?』
シア『波乱万丈な人生を送る恩人さんに新たな災難?今回”も”休めないの?次回!『~吟遊祭~ 二日目 凶暴なメイドはいりませんか?』えぇと、勇者伝説の真実も?』




