番外編: 私の手にもお揃いの花
甘い番外編が書きたかった!(*´∇`*)
外の時計台の鐘の音が鳴る。嬉しい思い出、悲しい思い出、どちらの思い出もあるこの鐘の音は、きっと今日は嬉しい思い出の方になるに違いない。
音と同時に一つに重なり合った唇が離れると、大好きな貴方の声で囁かれる「18歳おめでとう」の声。真面目な貴方なら、きっと忘れないと思っていた。
「ありがとうございますウリクセス様。でもこれ、初めての口付けじゃないですよ?」
いつぞやに教えてもらった御伽噺。
『初めての口付けは成人する瞬間に。そうすれば永久に結ばれる』
同じ誕生日同士でないと不可能。それに、とっくの昔からそれ以上の事までしてしまっている私達にとって、そんな御伽噺、意味のない物だ。
「うん、そうだね。でも私だって貰ったし、タルジュにもあげなきゃ」
ベッドの中で抱き寄せられて感じるお互いの体温、愛する人が生きている喜び。一度は諦めて手放した物だからこそ、一つ一つの感覚すら奇跡のように思えた。
「そういえば、私は18歳のお祝いのキスもらうの初めてですね。やっと大人の仲間入りしたのかと思うと感慨深いです」
成人したからと言って私の何かが大きく変わってしまう事はないけれども。それでも、もう子供ではないというレッテルを貼って貰えた事が、昔から年齢以上に大人だったウリクセス様に少しでも近付けたように感じて嬉しい。それでもなかなか3歳という歳の差は埋める事は出来ないのだけど。
「私だけ2回貰ってしまったからね。お詫びも兼ねて、タルジュには他にもプレゼントを用意したんだ」
そう言いながらスズランの咲く手が私の薬指に銀色の指輪を通す。
「綺麗……」
派手な装飾は付いていないけれども、銀色に輝くリング自体に繊細な彫り模様が入っている。そしてその模様のデザインは勿論スズラン。独占欲の強い、ウリクセス様らしい模様だ。
「婚約しているし、こんなにも手を出してしまった後に言うのは卑怯だと分かっているのだけど。今、私と結婚してくれる?」
そう問いかけてくるウリクセス様の眼差しは優しくて、尚且つとても真剣で。ここが厳かな教会でもなんでもない、ただのウリクセス様のベッドの上だという事をついつい忘れそうになってしまう。
きっとウリクセス様の事だから、私が成人した瞬間に言おうと思い、ずっと前から計画して指輪も用意してあったのだろう。「今」と言ってくるあたりが実にウリクセス様らしくて、そんな独占欲の強い所まで愛してる。
「はい。私はずっとウリクセス様を愛していますから」
私がこの言葉以外を言う訳がないのに、どこかほっとした顔をされる。
「良かった。断られたらどうやって閉じ込めようかと、どうやって頷かせようかと考えていたんだ」
だから笑顔でそういう事言わないでください。冗談でもなんでもなく、本気で言っているの知ってるから怖いんですよ?
「じゃあこれ、気が変わらないうちに今すぐに書いてくれる?」
枕の下を探り、出してきたのは「婚姻届」とペン。しかもウリクセス様は記入済み。そんな物まで枕の下に仕込んであるとは、気が付きませんでした。
「そんなに急がなくても、私は逃げも隠れもしません」
「人生何が起こるか分からないからね。さぁ今すぐに書いて。そして私だけのタルジュになって?」
もうこれではプレゼントを貰っているのか、差し上げているのか分からないな、と思いながら婚姻届にサインする。
「あれ?これ羊皮紙ですね、珍しい」
最近では羊皮紙は紙に取って代わられ、殆ど見る機会も無くなっていた。
「私とタルジュを繋いでくれたのは、羊皮紙だからね。特別に作らせた」
ちゅっと婚姻届の私のサインに口付けるウリクセス様。「やっと手に入れた、これを手に入れるまで数百年……本当に長かった」と呟きながら再び枕の下に仕舞い込んでいる。……きっと明日あたりにでも勝手に提出しに行くのだろう。
「まだその転生させ続けた件引っ張るんですか?もう許してください……」
「ふふっ、やっと私の物になったね?この白くて長いまつげに縁取られた雨が降る前の空の瞳も、そこから流れ出した雨粒も、白くて華奢な肢体も、いつも私の好みを考慮して整えてくれる人形のような髪も、どんな果物やデザートより甘いタルジュ自身の味も、耐えきれず私に食い込んでくる綺麗に切り揃えられた爪先まで。どんな姿も全て愛しているよ」
言い終わると同時に重なる唇。歯の一本一本まで愛していると言わんばかりの丁寧で深い口付け。抵抗なんてする気もない私の両手をシーツの上に縫いとめるように抑え、捕らえるようにして愛してくる姿に……相変わらずだなぁといった感想を抱きながら。婚約者ではない、夫としてのウリクセス様に身を任せた。




