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プロローグ

初投稿です。

この連載小説はシリアスを主軸にしています。しかしシリアス展開で胃もたれしないよう、ギャグやほのぼの成分も配合した作品です。途中少し残酷な描写も入る可能性がありますのでご注意願います。


基本的に女性向けの小説ですが、普段小説を読まない方や男性でも楽しめるような物語を目指して頑張ります。宜しければお付き合い下さい。




大切な親友が幸せになれるなら、私はそれで良かった。

いや、それが良かった。

自分が主人公じゃなくても良い、誰かと結ばれたいなんて思っていない。


だからサポート兼友人役は私にとっては適役だった。この身を睹して彼女を守っていこう…そして出来るならばこの現実となってしまったゲームを最高のEDにしよう。


これは紛れもなく運命だ。


そう心に誓ったのを、私は昨日の事のように覚えている。そして今日、彼女は無事契りの儀を終えた。



それはそれは、奇妙ながらにとても眩く素晴らしい光景だった。

朱に染まる空。淡い光を纏う大樹。

異形の者逹が歌い舞い、新たな夫婦の誕生とこの地の安寧を願って盛大に祝う。


彼女は昔からウェディングドレス姿に憧れていたが、白無垢だってとても素敵じゃないか。

見目麗しい花婿の横で頬を桃色に染めて涙ぐむ、そんな彼女は紛れもなくこの世界で一番美しく、一番幸せな花嫁だろう。


…騒がしい宴の隅で、私は目から自然に溢れる雫をそっと指で拭った。私の願いは成就されたのだ。



そう思っていた。…のに!



「うわぁあん!逆ハー行けなかったー!!」

「なん…だ、と?」


式の喧騒から離れた花嫁の私室。

白無垢を脱いでただの友達へと戻った彼女によって、私の感動はまるで場外ホームランのように爽快にぶっ飛ばされる。

誠に遺憾である。


どうやら彼女の一番の願いは逆ハーレムエンドだったらしい。そう言えばこの子どんな乙女ゲームでも一番好きなのは逆ハーだったな。畜生。


「ちょっおま!ゲームでは良いけどさあ!現実では逆ハーレムエンドはただの修羅場の先伸ばしだって言ったよね!?私ちゃんと言ったよね!?どのルートにも入れるように攻略キャラの好感度はまんべんなく上げるけど、最後はちゃんと一人選ぶって約束したよね!?」

「でもでもでもでも!ファンタジーなら有りかもって思ってたのー!和風ファンタジーの世界なら逆大奥的なやつ狙えると思ってたのー!」

「はああぁ!?なに駄々っ子みたいにビッチで悪女的な台詞吐いてんの!このアホー!」


私がフルスイングで頭を叩いても効果はない。

彼女はさながらひっくり返った恐怖の権化Gのように仰向けで手足をバタつかせている。容姿は乙女ゲームの主人公なので美少女仕様だが、ウザさだけは立派に同格である。

…私達は互いの意志疎通が出来ず、逆ハーレムエンドの条件を満たす事が叶わなかった。


「…ふふ、仲が良いですね」


無い物ねだりをする彼女と、遠回しに今までの暗躍の日々が徒労に終わったと告げられやさぐれそうな私。

そんな二人を尻目に、彼は優雅な仕草で扇子を片手に壁の寄りかかったまま微笑を浮かべる。


「何を笑ってるんですかね?私達を愉快な道化とでも勘違いしてるんですかね?」

「いやいやまさか。この地を統べる新たな神の奥方と、巫女殿をそんな風に見る訳がないじゃありませんか」


私がギッと強く睨み付けても何ら動じず、それどころか世の中の女性を全て魅力する為にあるのではないか?と錯覚する程の色気を放つ笑みは一切崩れない。

少し前の私はその色気に多少動揺してしまっていたが、全て知っている今となってはただただ腹立たしい。


この妖艶な彼こそ、逆ハーレムエンドに足りなかった最後のピースだ。


絹糸のように艶やな純白の髪がサラリと彼の肩から滑り落ち、着物の上を流れるだけで悔しいが絵になってしまう。しかし人間とは異なった位置から生える髪と同色の獣耳は、その言葉とは裏腹にピクピクとリズミカルに動き彼のテンションの高さを物語っている。


楽しそうにしやがって!


「うああああ!逆ハーやってみたかったああ!」

「何言ってんだ!今までも充分逆ハーレムだったでしょうが!」

「だって一人足りないもーん!そこの狐さんは落とせなかったもーん!」

「はい、本当に残念ですね」

「うわーん!良い笑顔でフラれたー!語尾にハート付いてそうな笑顔でフラれたー!」

「ふふ、奥方が元気で何よりです」


どうやら私は…この我が儘な友人と、

憂鬱の原因である彼によって、

EDを迎えても気苦労が絶えない日々が続きそうだ。



「もういい加減にしなさい!推しのベストエンド迎えられただけで満足しろー!」


私はさながらオカンのように駄々っ子を叱りつける。

少しで良いからこのエンディングを迎える為にめちゃくちゃ頑張った私を労ってくれ…!

そんな切なる願いを込め、再度彼女の後頭部にフルスイング。


もしも今、ゲームの始まりを迎えた昔の自分に一声かけるのなからばこうである。


これから色々あるけど、

お前は一切!何事も期待せずに!

ただ自分なりに頑張れよ!


と…そう肩を叩いてやるだろう。

文面だけを見るとブラック企業に勤める先輩社員が言いそうなコメントだ。…誠に遺憾である。




現実のハーレムエンドは、サスペンスかホラーのただの前振りだと思ってます。

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