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第22話:あざとい調査

どもどもべべでございます!

GWも終わりましたねぇ。また子供たちと一緒にどんちゃん騒ぎの毎日ですw

そんな時でも上げていきましょう! どうぞ、お楽しみあれ~!

 

「うひゃああああ、可愛いぃぃ」


「何が聞きたいのボク? お姉さんたちに言ってみな?」


「うんうん、目の保養になるねぇ」


「あ、あの……えと……この人、見ませんでした……?」


「あぁ、見たわよ?」


「ほ、ホント、ですかっ」


「うん、昨日も雅の極み亭にいたわね。私そこに食材をおろしてるから見たの」


 ……うん。

 うん……なんだこれ。

 1刻にも満たない僅かな時間で、確証を得られてしまったんだが。普通、こういう聞き込み調査って、相手方の信用を得るのに結構金や時間を食うもんなんだが?

 なんで、ハノンが俺を抱えて女性に近づくだけで向こうから寄ってくるかね!


 しかも、おあつらえ向きにピンポイントで情報持ってる奴が来やがった!

 俺が町の住民の信頼を得る以前は、スキンヘッドと顔面を見て怖がられたもんだってのによ……持って生まれた素質の違いに、思わず涙が出てくらぁ。とはいえ、進展は進展だ。


「詳しく……聞いても?」


「いいわよ~」


 俺らが今いるところは、貴族街にある食材関連の商店だ。1ランク上の宿屋や、料理屋なんかに卸す食材を新鮮な状態で仕入れる事ができる場所だな。

 下町にあるような、いつ生まれたかもわからん鶏卵を扱うような場所じゃねぇ。その日の内に仕入れたものを高めに扱う、御貴族様専用の食材売り場ってわけだ。

 そこに目をつけ、ハノンに向かわせた訳だが……ま~釣れるわ釣れるわ。姉ちゃんの群れが。


「さっきも言ったけど、昨日は私が雅の極み亭に食材卸してたのよね。川魚と鶏卵をね」


「はい……」


「で、ちょっとばたついてたみたいだったから、台所まで持ってったのよ。あ、受付には許可とったわよ? それで廊下歩いてたら、その絵の男の人が歩いてたわけ。その口元の傷、しっかり覚えてるわ~」


 ふむ、今現在ガジルデがあそこにいるのが確定したのは僥倖だな。

 後はもっと詳しい情報がほしいが……。


「え、えと、一人、でしたか?」


「ん~ん? 何人かと一緒にいた」


「身なりがカッチリしてるから、多分貴族の使用人じゃないかな? 執事服着てたし……まぁ、そんな感じの人と何か話しながら歩いてってたよ。んで、その後は廊下の死角に入って見えなくなっちゃった」


 ……へぇ。貴族の使用人ねぇ。

 この町の貴族は、領主である伯爵さんを覗いてもそこそこいるな。しかし、貴族絡みってのはきな臭い。

 一体誰が、どんな理由でガジルデと接触した?

 何故、ガジルデを高級な宿で匿う?


「私がわかるのはこのくらいかな。役に立てた?」


「は、はいっ、ありがとうございました!」


「んふふ~、良いのよ良いのよ」


「いいな~、私ももっとお話ししたいな~」


「ちょっとボク、こっちでお姉さん達と休憩していかない?」


「え、あの……」


 ハノンの左右に姉ちゃん達が陣取り、視線を合わせてくる。

 うん、まぁなんだ。大小さまざまな幸せの象徴が、丁度ハノンの近くにきてるな。ハノンが真っ赤になって狼狽えている。


「あははっ、やっぱりカワイイわねぇボク!」


「ほら、ご飯とかも奢ってあげちゃうよ?」


「あ、あわわ……!」


 いかん、これ以上ここに居たら変に足止め食いそうだ。

 ハノンもそれを察したのだろう。焦りながらぺこりと頭を下げた。


「あ、ありがとうございました! では失礼します!」


「「え~」」


 名残惜しそうな女性たちに何度も何度も頭を下げながら、ハノンは商店を後にした。

 小走りで離れ、路地裏に足を踏み入れた段階で、ふぅと息を吐く。


「緊張したぁ……」


『上出来じゃねぇか。今度から聞き込みはお前のやり方に任せるわ』


「勘弁してくださいよ……僕はただ、ヴォルさんを抱いてた方が落ち着いて話せるから……」


『これが天然タラシってやつか……』


「?」


『気にすんな。しかし、貴族か……』


「で、ですね……なんで貴族様が絡んでくるんでしょう」


 ハノンも気になってたみたいだな。

 貴族がガジルデを匿う理由か……現時点で判断がつくのは、一点だけだわなぁ。


「……ゴブリン?」


『そうだろうな』


 現時点でわかってる森の異常はそれだけだ。ガジルデはゴブリンを見て貴族に報告したと仮定しよう。


「そう、なると……なんで、僕らが先……なんですかね」


『だなぁ』


 ガジルデが宿に匿われたのは、最低でも3日前。

 俺らがゴブリンを発見したのは、今日の朝から昼にかけて。

 つまり、ガジルデから報告を受けた貴族は、この数日間俺らに何も報告を回していない事になる。大量のゴブリンなんつう、爆弾みたいな情報を、だ。


『もしそうだとしたら、その貴族はとんでもない悪党だって事になるな』


「…………」


『そうなると……ガジルデは匿われてるというよりは、』


「……軟禁、されてる?」


『そう思うのが妥当だな』


 情報の秘匿が、その貴族にとってどんな思惑かはこの際置いておこう。

 問題は、ガジルデが容疑者ではなく、貴重な証人にまで格上げされたという点だ。


『もしこの線が大当たりなら、ゴブリンの情報が漏れて冒険者ギルドが動き始め、領主に報告が行ったタイミングが事態の動き時だ』


「ガジルデさんを……口封じして、犯人に仕立て上げる……?」


『もしくは、無理矢理自白させて事実を作り上げるとかな。どっちにしろ、ガジルデにとっては時間がねぇ!』


「す、すぐに話を聞きにいかないと……!」


『だな。あくまで可能性に過ぎんが、情報の塊であるガジルデがいなくなる可能性は捨てきれん』


 俺らがそう結論付け、雅の極み亭に向けて走ろうとしたその時だ。


「う、うわぁぁぁぁ!!」


「「っ!」」


 路地裏の奥。

 そこから、成人男性の悲鳴が響く。同時に、何かをひっくり返しながら走る足音が聞こえてくる。


『ハノン、奥だ!』


「は、はい……!」


 俺も地面に降り、ハノンを先導する形で走る。ハノンもまた、盾を構えて俺に付いてきていた。

 路地裏は入り組んでこそいないが、貴族街の汚い部分を隠すために大きめに作ってある。人気がない空間は生まれやすい。

 そして、その分隠れ蓑にされやすいんだ……こんな風にな!


「た、助け、はひ、ひぃ……!」


 足音の方向を聞き、先回りしたかいがあった。

 俺達は路地裏を彷徨う男の前に出て、道を塞ぐ形になる。


「ひ、ひぃぃ!」


「はぁ、はぁ……が、ガジルデさん、ですね? 冒険者ギルドの、者です……!」


 そう、俺らの目の前にいたのは、間違いなくガジルデその人だった。

 みっともなく尻もちをつき、ハノンにすら怯えている始末だ。


「え、あ……ぼ、冒険者……ホント、に?」


「は、はい、カードです」


「た、たすたすたす助けて! 殺される!」


 ガジルデは、恥も外聞もなくハノンにすがりつき、野生の角兎ホーンラビットが如く震えている。

 声がでけぇ……だから、俺も反応が遅れた。

 チッ、やべぇな。


『ハノン……囲まれてんぞ』


「うぇぇ!?」


 そう、本当に小さな足音が、すり足で近づいてくる雰囲気を察したのだ。

 数にして、3つ。この3本道の路地裏で、俺達は囲まれてしまったのである。

 

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