第11話:ルーチンとステータス
どもどもべべでございます!
貴重なブクマが減っていた……悲しす。でも、これもまた評価と受け止めてご投稿です!
ついにハノン君の力が明らかに! どうぞ、お楽しみあれ~
グランアインの朝は寒い。だから、霧が町を覆う事はざらにある。
今朝もまた、周囲は白銀の世界に染められてしまっていた。
まぁ、完全に見えないという程ではない。しかし、この視界の中で遠目に人物を判別するのは難しいだろう。
そんな乳白色手前の空間に、俺は一匹で佇んでいた。
冒険者になって33年、この体になって3日。欠かすことなくやってきた、朝のルーチンをこなすためだ。
場所は、竜の息吹亭の土地内にある中庭だ。ここならば、通行人と会って気まずい思いをすることもない。
「フゥ……スゥ……」
俺は後ろ脚だけで立ち、背を伸ばして瞳を閉じている。
足をべた付けで立った角兎は、見た感じガニ股気味でどうにも愛嬌しかないのだが、こうして足を揃えてつま先で立つと、どことなくシャープな雰囲気になる気がする。だからと言ってかっこいい訳ではないが。
ゆっくりと腰を落とし、精神を集中させる。自分の下腹に渦が巻いている。そんなイメージを作り上げていく。
いや……実際の所、その渦巻は実在する。俺の中に巡っている、【気】を感じ取っているのだ。この気を感じ取れ、扱える者を【気功師】と呼ぶ。魔力を持たない者でも奇跡のような力を扱える、東方の神秘って奴だな。
俺は生前、魔力持ちではあったものの才能が無かったからな。生き残るために、この気を用いた戦闘スタイルを確立していたわけだ。
「……フッ、フスッ……!」
ビシッと足を伸ばして蹴り上げのモーションを取り、停止。バランスを取りながら自分の内側と向き合う。
気は生物全てに眠っている。それを知覚し、練り上げるようになるには修業が必要だが、一度感覚を覚えてしまえば体が違っていても気を扱えるようだ。
とはいえ、気もまた訓練で総量を増やすものだからな。この体ではまだまだ無茶苦茶に使える代物ではない。せいぜい、【身体強化】を10分程度使えるくらいだろう。
この体は気よりも魔力の総量の方が多そうだしな……今までの戦闘スタイルのままって訳にはいかなそうだ。
ちなみに、生前の俺の最終技能は、【戦士】【気功師】【スカウト】【魔術師】だ。まぁ、魔術師は火種出したり、飲料水を一口分作るのが限界だったけどな。
今の身体だと……まぁ、戦士としては武器を使えないから廃業だな。徒手空拳での戦闘方法を嗜んでいてよかったと、今になって実感してるぞ。
「ッ、フゥウ……」
最後に深呼吸をし、全身に気を巡らせて循環させる。そこまでやって、朝のルーチンは終了だ。
さて、あとはハノンが起きてから神殿だな。今日も忙しくなりそうだぜ。
ピョンピョンと部屋に戻ると、そこには安らかな寝顔で布団に籠るハノンがいる。
……ま、忙しくなるっつっても今から行く必要はないしな。昨日頑張ったし、もう少し寝かせてやるかね……。
◆ ◆ ◆
「うぅ……ひっぱたくことないじゃないですかぁ」
『うっせ、あのまま寝かせてたら昼まで寝てただろ絶対! 俺がどんだけ起きるの待ってたと思ってんだよ!』
霧が晴れた事により、視界良好かつ活気に満ちた街道。野菜売りの客引きや、屋台の売り文句が響く中を、俺とハノンは歩いていた。
俺が早く起きてたってのもあるけど、結構な時間待ってたんだぞ? それなのにこいつ、まったく起きる気配無いでやんの。
このままだと装備購入まで絶対間に合わない。そう判断した俺は、とりあえず前足によるもふっとパンチを敢行。この寝坊助坊主を強制的に起こす事にしたわけだ。その後、宿の飯をしっかり平らげ今に至る。
『今日はがっつり準備して、明日っから町の外に出て依頼を受けてもらうからな。遅れる訳にゃあいかねぇんだよ』
「わ、わかりましたよぅ……その、ステータスを見るんでしたよ、ね?」
『そうだ。お前がどんだけの力を持ってんのかが目でわかるからな。しっかり参考にするように』
まぁ、何度も言ってるが……こいつの能力、絶対たかが知れてるからなぁ。
長所を見つけるというより、最低限のラインに伸ばすべき方向性を見つけるって感じになりそうだ。
「あ、神殿……ここ、ですよね?」
『おう。カード準備しておけ』
しばらく歩くと、白を基調とした大きな建物が目に入る。
グランアインの神殿だ。基本はまぁ、神様に祈る場所って認識で問題ない。
けど、俺ら冒険者にとってはなぁ。診療所では対処できない病気や、モンスターによる状態異常、呪いなんかを癒してもらう場所ってイメージのが強いんだよなぁ。
「……は、入っていいんですか?」
『入んないでどうするんだよ……ほれ、行く行く』
「は、はいっ」
俺に促されるままに、ハノンは扉に手をかける。
さほど重くもないその扉の向こうは、冒険者ギルドよりも清楚な雰囲気を漂わせた空間だった。
神聖って言った方が陳腐かね? 基本的に物音がなく、神官たちが厳かに来訪者の対応をしているのがわかる。
ここは受け付けの空間で、最奥の大きな両開きの扉の向こうが大聖堂だな。まぁ、今回は大聖堂に用はない。
「あ、あのっ」
「はい、いらっしゃいませ。お祈りですか?」
「い、いえ、その……冒険者、ですっ」
ハノンが神官の姉ちゃんに冒険者カードを見せると、姉ちゃんは「あらっ」と意外そうな声をあげる。まぁ、わからんじゃない。
「失礼しました。本日はどのような御用です?」
「あ、いえ……その、冒険者カードに、ステータスを表示してほしくてですね……」
「あぁ、能力の啓示ですか。それでしたらば、事前に銀貨10枚をお支払いいただく事になりますが、よろしいですか?」
「……は、はひ」
銀貨10枚という単語に頬をひくつかせながら返事をするハノン。銀貨10枚あればしばらく安定して暮らせるからなぁ……そりゃ引くよなぁ。
とはいえ、これは一度払ってしまえば更新に金いらねぇし、必要経費だってことは事前に説明済みだ。
「……お金、その、カードの中にあります……」
「はい、失礼しますね……ふむ、確かに。ではこちらへどうぞ」
カードを受け取り、冒険者ギルドのものと同じ金銭ボードに通して残高を確認した神官は、問題なしと判断した様子で案内を開始した。
これでハノンの残金は銀貨30枚……これがあっという間にぶっ飛んでいく予定だから、冒険者ってのは本当に金食い虫だ。安定するまでが本当に大変なんだよな。
「こちらです」
ハノンが連れてこられたのは、無駄な装飾が一つもない四角の部屋だ。
その部屋の真ん中には大きな水晶玉があり、中では煌びやかな靄が渦巻いていた。
「この水晶に手を触れていただきますと、ステータスが正確にわかります。ハノン様は従魔師ということですので、契約獣の能力も同時にわかりますね」
「わ、わ、それ凄いですっ」
「ふふ、では、どうぞ」
「い、痛くないですか?」
「ご安心を。悪しき者が触れると防衛機能が作動しますが、神殿に足を踏み入れた時点でそういう精査は済んでおりますので。通常はありえません」
そこまで聞いてようやく安心したのか、ハノンはゆっくりと水晶に手を当てる。
中の靄が、触れた手に集中するように偏っていき、数度明滅したのがわかった。俺も昔やったからわかるが、なんか体の奥に視線を感じるというか……こう、気持ち悪いんだよなぁ……。
「……はい、もう大丈夫ですよ」
「っふはぁ! ひぇぇ~……!」
案の定、ハノンも口を結んでプルプルしてた様子。神官から許可が下りれば、すぐに手を放して体のゾワゾワを取り除くべく深呼吸していた。
「ふふ、慣れない内はそんな感じですよね」
「うぅ……も、もうこれでいいんですか?」
「はい。カードにステータスも記載されたはずですので、後でご確認くださいね?」
「は、はいっ」
さて、ようやくこれでハノンの能力がわかるわけだな。
俺達はすぐに神殿を出ることにした。本当なら俺の死体を見に行く位はしておきたいんだが……時間ねぇからな。
『さ、後はカードに触れて、ステータス、もしくは能力値って念じるだけでいい。カードの面が変わって映し出されるぞ。本人か契約獣、または認証された第三者以外にはぼやけて見えるから気にせず見ちまいな』
「は、はいっ」
喉を鳴らして、カードを両手に持つハノン。
そんなに力んで念じなくてもいいんだが……まぁ、最初はそんなもんだと割り切って指摘しないでおく。
やがて、カードの面に1/3って数字が滲んできた。これで、指を使ってスライドさせれば能力値の画面に映せるわけだ。
冒険者ハノン。はたして、その潜在能力は……
《パーソナル》
名前:ハノン 年齢:10 性別:♂
《能力値》
筋力:☆ ☆ ☆ ☆ ☆
敏捷:☆ ☆ ☆ ☆ ☆
知力:★ ★ ☆ ☆ ☆
精神:★ ☆ ☆ ☆ ☆
魔力:★ ★ ☆ ☆ ☆
《技能》
従魔師:Lv1
「……ねぇ、ヴォルさん?」
『ん?』
「この星って、どういう基準なんです?」
『星1の評価が、ギリッギリで冒険者としてやっていける、かな~? ……って評価だな』
「……僕、弱くありません!?」
だから言ったろ? お前弱いんだって。
ちなみに、この世界では銀貨1枚=1万円の価格設定です。
つまり、ステータス観覧は10万円……病気予防も10万円……ひえぇぇっ。神殿アコギすぎぃ!
追記。
神官さんはおじさんだったんですが、急遽お姉さんに変更です。
モブさんなので、お華係に回っていただきました。なむ~。
また、ハノンくんの初期の知力を、★2に変更いたしました。
ハノンくんの設定上、★1では低すぎました。申し訳ございません




