第55話:神威の惨禍と残された遺志
ゴガガガガガガガガガガガガッ――――ッ!!!!
天を切り裂き、降り注いだのは一本の光などではない。
この世界のいかなる魔術、いかなる【深層】をも遥かに凌駕する――本作史上、間違いなく最高峰にして絶対最強の神撃【天穿つ神域の槍】の群影だった。
「な……何だこの魔力はぁぁぁぁッ!?」
「アハハッ! 嘘でしょ!? 避え――」
ワビーとサビーの悲鳴すら、世界を崩落させるかのような威圧の中に掻き消える。
絶望的な速度と質量で地表へ叩きつけられた巨大な神域の槍は、空間そのものを穿ち、双子の【完全風化】も【完全腐敗】も、その領域ごと容赦なく押し潰し、砕き割っていく。
ズドォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!
天地を揺るがす光が収まった時、そこには絶大な惨禍の跡だけが残されていた。
数キロ先まで広がっていたオアシス跡地の岩盤は跡形もなく穿たれ、世界の果てまで届くかのような底なしの巨大クレーターと化していた。
「はぁ……はぁ……ッ」
右手をゆっくりと下ろすリンド。
その巨大な穴の底――消滅を免れ、辛うじて転がっていたのは、かろうじて原型を留めた双子の『腕と上半身の一部』だけだった。
「……逃がさねぇよ」
リンドは穴の底へと飛び降りると、虫の息となっている双子の残骸へ手をかざした。
「【捕食】――ッ!!」
ゴォォォォォォォォッ!!
漆黒の泥のような魔力が双子の肉体を貪り喰らう。
【五角】――世界の頂点に君臨する怪物たち。その肉体と魔力は、一匹喰らうだけでもリンドの身体構造を底上げし、強さを『格段』に跳ね上げさせる極上の糧だ。
『個体名:ワビー・カマエルおよびサビー・カマエルの【捕食】を完了』
『【完全風化】および【完全腐敗】を獲得』
『基礎ステータス、全魔力容量が飛躍的に上昇しました』
ドクンッ……ッ!!
全身の細胞が鳴動し、背筋が泡立つほどの凄まじい力が湧き上がってくる。
カガヤの【神域】、そして【五角】二人分の【捕食】。リンドの存在価値は、もはや人間どころか【五角】すら超越した神の領域へと足を踏み入れつつあった。
「す……すごすぎるよ、リンド……。これが……おじいちゃんの……そしてリンドの力……?」
クレーターの上で呆然と立ち尽くすアイリス。ダイダラとエルニャも、かつてない究極の破壊力とリンドの異常な成長スピードに息を呑んでいた。
死霊バンドとディープ・ゴーレムが静かに影へと消えていく中、リンドは地上へ戻り、かつてカガヤの家があった場所へ歩み寄った。
「カガヤ……あんたの命と想い、確かに受け取ったぞ」
胸の中に残る熱い血の温もり。カガヤが命を懸けてリンドに託したのは、単なる【神域の魔術】という暴力だけではない。国王アダムスという世界の歪みを正し、生き直すための「牙」だ。
「みんな、休んでいる暇はない。【五角】の双子を喰らった。……アダムスもすぐに気づくはずだ」
振り返ったリンドの瞳には、かつてないほど濃密で凶暴な決意の光が宿っていた。
「ここからが本当の決戦だ。いくぞ――【五角】の本拠地へ!」
「「「おーっ!!!」」」
カガヤの遺志を抱き、双子を喰らい尽くして次元の違う強さを手に入れた四人は、ついに【五角】の残党、そして国王アダムスの待つ最終決戦の地へと足を踏み出すのだった――。
その頃。
「ぐぅぅぅぅぅぅ!!ま....まさかここまで...と....は....。」
別の戦場で倒れたのは【五角】フェリス。そしてその対面にいるのは【深層化】した桐原蓮だった。
しかしその姿は以前のアルス=ノヴァよりもさらに凶悪な姿になっており、まさに「異形」という言葉にふさわしい禍々しい姿だった。
「これがさらに【深層】の魔力を覚醒させたパワーなのか...。この力なら僕は...!!」
自分の覚醒した力に驚く桐原。
「これで条件は整ったね!さぁ、おめでとう!君は今この瞬間から【五角】、桐原蓮になったんだよ!!」
拍手しながら桐原を称えるシュウ。一体何が目的なのか。この時はまだ、誰も知る由もなかった。




