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そして私は、救済の聖女になった。  作者: 五乃ふゆ
第一章

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16/22

馬車の上から

 少ししてキーランとロナンが合流し、一行は再び王都を目指した。


 亜里沙は体力作りのために歩きたかったが、四人に反対されてしまった。

 流石に昨日の今日では強く言い返せず、黙って荷台に納まった。そう言えば酔わなくなって来た気もする。



 やがて亜里沙たちが通って来た街道は石で舗装された街道と合流する。


 しばらくまた大自然の風景を眺めていたが、ふと気になって、荷台の側、亜里沙の隣辺りを歩くキーランの肩に手を置いた。


(……もう熱くない)


 今だとマントの厚さも加わるが、あの熱さならマントをしていても分かるだろうと思った。


 荷台の上からだったのでキーランに半ば覆い被さる形になり、至近距離でキーランと目が合った亜里沙は慌てた。


「ん?」


「あ、いや……熱、下がったかなって」


「自分の心配をしてください」


 少し棘のある口調で同じ荷台のロナンから言われる。亜里沙は体勢を戻した。


「もう大丈夫だってば……あ、大丈夫、です」


「楽に話してくださって結構ですよ」


「う、うん……わかった」


 こちらを見るロナンにへらっと笑いかけると小さくため息を吐かれてしまった。



 王都が近くなって来た最後の休憩で、荷台から降りて伸びをしていた亜里沙の側へ、ロナンがやって来た。

 キーランはこちらに背を向ける形で荷台にもたれて、遠くを眺めている。ルイとベンはいつものように馬に草を与えていた。


「アリサさん、貴女の怪我の事ですが」


「う、うん」


「知っておかれた方がいいと思うのでお話ししますね」


 ロナンは亜里沙の怪我の回復は通常あり得ない事を話した。亜里沙は驚いたフリをしたが、演技はそんなに得意ではない。

 幸い誰も亜里沙を疑わなかった。


「それも来訪者としての能力の一つかも知れません。ですが前例が無かったので……昨日の砦の兵たちには口止めをしておきました」


「……やっぱり黙っていた方がいいのかな?」


 ロナンは顎に手を当てて考え込んだ。


「国王陛下は、貴女のその回復力を知ったとしても、それを利用する方ではありません」


 ですが、とロナンは亜里沙を見つめた。


「私は黙っていて欲しいと思っています。

最終的にアリサさんが決める事ですが」


 亜里沙が答えられないでいると、ロナンは微笑んだ。


「どちらを選んでも、心配はいりません。私が貴女の盾になりましょう」


「うん……ありがとう」


 気恥ずかしい思いで頷く。


「あ、それから」


 もののついでのようにロナンは続けた。


「キーランは国王陛下のご子息です。王子の身分ではありませんけど」


 キーランが勢いよく振り向いた。

 目を見開いて固まる亜里沙を見て、慌ててロナンを咎める。


「ロナン!」


「キーランがいつまでも言わないから、私が仕方なくお話ししただけです」


「アリサ……違うんだ」


「……って事は王子様!? だからみんなやたらとキーランに様様言ってたの!?」


「いや、違うんだ……」


「キーランは王子ではありません。庶子ですからね」


「ショシ……?」


 馬たちの方からルイとベンのハラハラしたような視線を感じる。


「私の口からはそれ以上は……」


 今更だとは思うが、意外とロナンは真面目にキーランに気を遣っているようだ。

 亜里沙の視線を受けたキーランは観念した様子でため息を吐いた。


「庶子というのは、本妻ではない女性から生まれた子の事だ。僕の場合、父が国王で、母はアストラムだけど王妃ではない、何の身分もない人だったから」


「あ……そっか……」


 何故か一瞬、好きだった童話を思い出した。継母とその連れ子に虐められる美少女の話だ。

 どんな顔をしていたのか自分では分からないが、亜里沙の顔を見たキーランは慌てた。


「そんな顔をしないで、アリサ。大丈夫だ。国王陛下からも王妃様からも良くして貰ったから。兄と弟も僕を虐げるような人たちじゃない」


 亜里沙はホッとして頷いた。


「あ、私も、話し方とか気を付けた方がいいかな……」


 と言いつつ、割と最初からキーラン相手には砕けていた事を考える。今更変えるとなるとかなり大変そうだが。

 亜里沙の気まずそうな顔を見つめて、キーランは笑みを浮かべた。


「……ああ。ではそうしてくれ」


「あ……は、はい、気を付けます。キーラン、様」


「キーランが王族に準ずる扱いを受ける事を陛下もお望みですから。賢明ですね、アリサさん」


 それではロナンも呼び捨ては駄目なのではないだろうか。



 その後王都の壁が遠目に見えてくるまで、やたらとキーランが亜里沙に話しかけてきて、亜里沙は必死で敬語を使った。

 単に目上というだけではなく相手は王様の子なのだから、常に正しい言葉遣いか悩む亜里沙の様子を見て、突然ロナンが笑い出した。


 小さく吹き出し、肩を震わせて笑うロナンの様を見て、唖然とする亜里沙。

 すると荷台の側を歩くキーランからも、控えめながら可笑しそうな笑い声が聞こえる。


 ポカンとする亜里沙を、ルイが振り向いた。


「アリサさん、からかわれたんですよ」


 はは、と朗らかに笑う。

 亜里沙は再び一番笑っているロナンを見た。


「いや……すみません」


 ふう、と息を整えて、ロナンはにっこりした。


「馬車の上から見下ろしながら敬うなんて、なかなか面白いですね」


「うん……アリサは面白いな」


 そう言ってふふっと笑うキーランを見る。


「……じゃあ結局いつも通りでいいって事?」


「いつも通りにしてくれ」


 まだ可笑しそうなキーランとロナンに、亜里沙は全然面白くない、とムッと膨れた。




 そして、とうとう亜里沙たちは今度こそ王都マグヌフィリアに到着した。


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