気づいてしまいましたか
ラオグラフィアは新参傲慢の洗礼を受けていた。
何これ、と立ちつくす。
大金貨が溢れかえっていた。
陞爵ボーナスで、自分を倒した怠惰なるカイγーンがその杖から溢れさせているのだが、普通は100枚も出ないのに、カイγーンの眷属たちがかき集めて、別室で100枚一袋に入れながら、せっせと計算するぐらいの量が出ていた。
ざっくりと強欲のリムが1万2000枚ぐらいでは、と計算した。
まったく艶のない、闇がにじんだような黒猫姿のカイγーンは興味なさそうにコインの計算を任せていた。
ここまで高額通貨だと、ちょろまかすことはない。まず、食べられない。魔力過多になっておかしくなるし、両替も難しい。
両替できそうなのは、侯爵がいないので伯爵位ぐらい。男爵・子爵は「いやだ」と腕で×を作って意思表示している。まあそうだろう、男爵のリムが両替すると、彼女は下鉄銭しか出せないので、大金貨一枚で2億4000万枚出すことになる。気持ち的に干からびるので嫌である。何日も何日も鉄銭出し続けなければならない。
伯爵だって、上銀貨でも4000枚なので、あまりやりたくない。
盆の上に、大金貨100枚入った袋がのせられて、もってこられて。
シルヴァとラオグラフィアが泣いていた。
ボルタは数えにいったので、被害を免れていた。
今、伯爵なのは、この三名。
「まあ、ゆっくりやってほしいにゃん」
かわいらしく言うが、まったく可愛くない。
傲慢は早い内に鼻っ柱を折っておかないと、あとあと面倒だからね、とわざとやっている。それをもうみんなわかっている。
そして傲慢故、プライドが高いので『出来ません』とは言えない。
ちなみに、強欲のボルタは「え、やですよ、こんないっぱい。15枚ぐらいにしてください。なんの仕事もできなくなるじゃないですか」と、断った。生まれたときからこの領で育っているので、カイγーンに対しても嫌なものは嫌と言えるのである。
戦争で、子爵だったラオグラフィアの両親は男爵に落ちた。あと180年ぐらいの命かと、ほぼ不死の恩恵を失って、ほっとしたような名残惜しい顔をしていた。
爵位を持ち、それなりに長く生きれば、責任が生まれる。
人間は世代交代していくが、悪魔はそうではないため、倒されるまで責任が続く。終わりが見えない。
そして、寿命が見えると、夫妻はめざとく気が付いた。
「偉大なるカイγーン。妻を男に、私が女になったら、子を再度作れるのでは」
ああ、くっそ。気が付かれた。
と、カイγーンは顔には出さず、絶望した。
ただでさえ、弱弱男悪魔を女性化させる手が少ないのに。
寿命が迫ってくると子作りしたくなるのが悪魔の性。
いやー、おまえら100年ぐらいあんだろ、毒の森の毒で削れてもっ。
「できるよ」
カイγーンは嘘はなるだけつかない。色欲の大孔雀は嘘がわかるようだった。魔法ではなく経験で。
「してあげるけれど、そっちの人員からも、肉体強化や変質できる奴何人か出せ」
戦争終わったから、ジョーンとにゃんにゃんするのにゃ、と思っていたのに。
人間界で、肉体改造強化合宿だな、と。
大孔雀が絶望し自暴自棄になったのは、息子の脱落(爵位不適合)がきっかけだっただけで、長く生きている爵位持ちの悪魔は多かれ少なかれ不安を持つものだ。
およそ300年で集落や領地の平悪魔たちは半減を6回繰り返して、ほとんど残らない。
800年生きていれば、それを二度、経験したと言うことで、そんなサイクルを見せつけられて、領地随一の主砲のラオグラフィア(息子)が失われるのだ。
集団自決に舵切りしてしまっても無理はない。
だが、ペアになった平悪魔が性別を変えて二度生めるなら、50年で半減、はしなくなる。
「偉大なるカイγーン。これは、とてもすごい魔法ですよ? 長く生きている悪魔たちの憂鬱を払うような」
「知ってる。魔法を独占する気もない」
「え」
「だって、独占してみろ、ずっと僕が延々と、やってくる悪魔たちに性転換し続けなきゃならないじゃないか」
★ ☆
私「BLというよりは、究極のジェンダーシステムかなー」
無夜「魔界全土に広めれば、少なくても、やや下方になるかもしれないけれど横ばいの人口(悪魔口)を維持できるから」
私「どんだけ頑張っても領民がするする減っていけば、絶望するよね。責任がある分よけい、むなしいというかきつい」




