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寝取られジョーンのヒモ生活  作者: 無夜
ジョーンは王侯貴族の夫である 下
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決着と契約

 混戦の中に、黒豹を振り払わんと狂ったようにはね回るヘラジカ。

 カイγーン領の領民は最近は癇癪を起こしたシャチの津波に襲われなれていたので、回避がうまかった。なんならティリクムはその巨体で、駄々をこねることもあって、陸地でも滑空してきたので。

 カイγーンは顎に力を入れた。

 くしゃみしたら、仕切直しで、次はこんな理想的に噛みつかせないだろうから、必死である。

 ラオグラフィアは敵味方を、というより主に味方を吹っ飛ばしながら激しく動き回ったが、肉体の防御力は、カイγーンの噛みつきに負けた。



 悪魔は核と脳との連絡経路を切断されても死ぬ。

「ああ、ここまでしても(獣性に戻っても)、負け、か」

 と、ラオグラフィアは力尽き倒れ、人型に戻ると、

「陛下、公爵に取り立てていただきましたが、私はその器ではございませんでした。申し訳ありません。せめて、杖は、その器ある者に継承を」

 公爵杖を手に顕現させ、カイγーンに差し出した。

「え、死なれては困るから、ちょっと待ってよ。杖は貰うけど」

 喉は潰れたが切断されてない。

 ラオグラフィアは体格が優れているので、防御力が高いし、生命力も高い。

 戦闘を控えていた癒せる部隊に手当させた。

 ここでは魔法が使えないので、使えるエリアに引きずっていってから。

 なにせ、色欲の伯爵には子作りして貰わないといけない。恨みを買って、なけなしの勇気で女体化した弱弱な悪魔達に乱暴な真似をされては、困るというか嫌だ、と思っている。 眷属たちはカイγーンのことを『無慈悲だが無用に残忍ではない』と評するが、長く一緒にいれば情が湧く。仕掛けられた戦争を迎え撃つのに、必要とあれば死ににいかせることも躊躇はないが、そういう特殊な事情がなければ、皆には安楽に生きて欲しいと思っている。

 終わってみて、死人が双方に出なかったようで、ほっとした。

 敵捕虜については爵位は一階級ずつ落とすが、色欲は伯爵のままにしておく。男爵はそれ以上は落とせないので、そのまま。

 ラオグラフィアに関しては、伯爵にした。つまり、カイγーンと交換のような形だ。侯爵の杖がなかったから仕方ない。




 とりあえず、魔法無効広場に、怪我を治した親夫婦、ラオグラフィア、その兄弟2人を呼んだ。

 今後の身の振り方である。

 他の連中は牢獄に入れてある。人数が多すぎる。

「自決しにきたのは、迷惑だったよ。二度と僕の領地に仕掛けてこないでね。生き残ってしまったのだから、まあとにかく生きればいいんじゃないかな。うちの領民になるなら、受け入れるけれど、嫌ならラオグラフィアは伯爵にしておいたから、伯爵領作って、自分たちの領民連れて行って。とりあえず、色欲の伯爵はここで子作りして貰うけれど、そうだな、3年(当人の体感は30年だが)ぐらい居てくれれば家族と合流していいよ」

 それだけ時間があれば、ほかの色欲も育つだろう。生まれてくることにも期待しよう。

 カイγーン領はカイγーンがジョーン以外と性的なことをしたくないせいか、一夫一妻が多く、色欲でさえそれほど多情にならない。

 カイγーンは説明しながら、戦闘用第一広場で正座している一家を、居心地悪そうに見た。

「僕は説教しているわけじゃないから、タイルに直座りの正座はやめようか。椅子もあるから、座ってくれない?」

 と勧めた。が、捕虜の立場としてはカイγーンが立っているのに、椅子に座れるわけもない。さらには、戦争を決めた戦犯なのに。 生真面目すぎるから、追いつめられて集団自決のような戦争をやるに至るわけで、その熱が冷めやれば、ひたすら謝罪するしかない。

 その後正式な契約が結ばれた。

 人間と契約するときに使う魔力で生み出す契約書に書き込まれ、これに悪魔同士の場合、血判ではなく、角を押し当てて魔力を記憶させる。

 契約書を頭にぐりぐりするんである。見た目がわりと間抜けなので、本当に必要なときしかやらない。




 甲はカイγーンとその眷属と親族

 乙はラオグラフィアとその眷属と親族

 とす。


① 甲と乙は互いの領地を侵犯しない。期間は魔界時間にて50年とす。


② 乙は憤怒の熊ラザーニを甲の暴食のティリクムの夫として婿入りさせること。夫婦期間は未定とす。


③ 乙の色欲のセンティスは甲の領地にて子作りに協力すること。期間は魔界時間にて3年とす。


④ 双方の捕虜返還条件は、一人につき魔上銅貨5枚とす。

甲の有する捕虜は1199人なので、魔上銅貨5995枚だが、魔下銀貨958ないし魔上銀貨79枚でも可とす。

 乙の有する捕虜は0人のため、相殺はないとす。


⑤ 乙は甲に公爵になったらせねばならない事柄をすべて伝えることとす。




④の金額が少ないのは、捕虜はいらない。とっとと連れて帰れ、でも無料だと生真面目なあんたらごねるだろ、という心遣い。


大孔雀「当たり前のところに、わざわざ注釈入っているのは何故ですか。魔界時間やら、『魔』通貨やら」

カイγーン「うちは紛らわしいからだよ」

大孔雀「当方に未出産の娘が居るので、妻はおこがましいが、偉大なるカイγーンの側室のお一人に加えるというのをここに」

カイγーン「契約に加えないっ。あと、代表はラオグラフィアなのに、なぜあんた出張る?」

大孔雀「僭越ながら敗戦の賠償契約なので、ここは海千山千の私が先に。とはいえ、800年しか生きておりませんので、千とはおこがましいのですが」

カイγーン「そういうところだよ、今回の集団自決になったの。ラオグラフィアが潰れただけなら、他の兄弟は領地切り離して独立すればよかっただろうに。あんただ、あんた。契約にもう一つ、加える。ラオグラフィア、あんたも一年、こっちの領で暮らす。親離れしよう。子離れしよう。固まっているのはもはやよくない」

ラオ「え、あ、はい」



⑥ 乙のラオグラフィアは魔界時間1年の甲領への人質留学することとす。


⑦ 乙の嫉妬のターニャは見合いをするため、甲の領地に半年間とどまることとす。



⑧ ②③⑥⑦に関する当事者たちの持参金、生活費等の支払いは乙が責任を持つこと。


 もはや、賠償というより、不健全化しているラオグラフィア領の親子を一次解体するための、まったくカイγーンたちには利がない契約が大半であった。

 ラオグラフィアは契約書を何度も読み返した。

「ええ、これでかまいません」

 カイγーンとしては変な笑い方しているなと思ったが、賠償が少なく、戦死者もおらず、捕虜も帰ってこられるからだろう、とさして深く考えなかった。




 かくして契約は締結した。



 カイγーンは領地統合後、

「なんで全部捕虜に至るまでうちの領にとどまったわけ?」

「契約締結後、約定にある者以外速やかに領地より去れ等の項目がなかったので」 

 しれっと傲慢のラオグラフィアは言った。


 傲慢とは、本来こざかしい連中である。

無夜「知能低下から醒めれば、ラオグラフィアはわりと頭良いので」

私「こんな賠償で許されるのもプライドが許さないでしょうしねー」

無夜「しばらく、親以外の主人に仕えるのも良い経験でしょう」 

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