重たい洞窟への入口。
お寺の中は薄暗かった。
そりゃそうだよね。もうとっくに日は暮れてしまったんだから……。
昼間は太陽の光が差し込んで、明るかっただけれど、今はもう夜だ。
外では、たくさんの星の光が輝いていて、暗闇に慣れさえすれば、その淡い光だけでうっすら辺りの様子が窺えた。
けれど、お寺の中は違う。
燭台の灯りがなければ、真っ暗闇だ。
僕は自分が光っているせいなのか、余計に辺りが何も見えず戸惑った。けれど、和尚さまは迷うことなく、本堂へと急ぎ足で入っていく。
その和尚さまに抱かれている僕は、いつか柱にぶつかるんじゃないかって、ビクビクしていた。
『──……っ、』
ど、どうして迷わず進めるの……っ!
身を強ばらせる僕に気づいて、弦月和尚さまは、困ったように笑って言った。
「おお……。怖がらせてしもうたか。すまなかった。
儂は目が見えぬゆえ、陽の光も夜の闇も関係ないのじゃよ。
……さすがに見えなくなった時は、怖かったがの」
ふふふと和尚さまはそう言って、愉快そうに笑う。
「もう少し、辛抱するんじゃぞ? 洞窟の中に入ったなら、瑠璃姫が狐火で明るく照らしてくれているからの」
言いながら、お寺の奥へと急ぐ。
その言いようはまるで、信頼しきっている友だちの話をしているかのようで、僕は驚いた。
……瑠璃姫さまを封じたのは、和尚さまじゃないってことなのかな?
「うん……」
僕は頷いて、ぎゅっと弦月和尚さまの衣を握りしめた。
本堂にたどり着いた頃、僕の目もいくぶん暗闇にも慣れ始めて、周りの様子が見えるようになっていた。
本堂の真ん中に安置された、巨大な阿弥陀如来像の裏に、その問題の地下洞窟への入り口はあった。
『……こんな所に扉が……』
僕は呟く。
僕はまだ、お寺の事はよく分からない。
阿弥陀さまの後ろなんて、行きもしなかったから、こんな扉があるなんて、知らなかった……。
鉄の扉は頑丈で、とても僕には動かせそうにない。
鍵は掛かっていなくて、弦月和尚さまは、僕を床に下ろすと、その重たい扉を力を込めて開ける。
「ふん……っ!」
──ギギギギギギ……。
鉄の扉は、不気味な音を立てながら、ゆっくりと開いていく。
──ビュオォォォ……。
『!』
地下洞窟から、冷たい風が吹いてきた。
冷たいどころか、いっそ凍りそうなその冷気に、僕は慌てて和尚さまにしがみつく。
和尚さまは、そんな僕を見て(いや、見えないけど)少し笑った。
「はは。……そんなに怯えんでも大丈夫じゃ。
瑠璃姫は、ああ見えて優しいからの。
……ほれ、この下に瑠璃姫がいるぞ」
静かに弦月和尚さまはそう言って、下へ下へと降りて行く。
僕はその後を、てとてと……とついて行った。
タマも辺りをキョロキョロ見廻しながらついて来る。
こっそりついて来たタマだけど、多分和尚さまには気づかれてる。
だって開けた鉄の扉をほんの少し、開けたままにしていてくれたもの。
× × × つづく× × ×
┈┈••✤••┈┈┈┈••✤ あとがき ✤••┈┈┈┈••✤••┈┈
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