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不安とやる気

『……』


 そんな僕を呆れた顔で見ていたタマは、不意にくすりと笑う。


 ……む。笑ったな!



 ムスッとした僕の顔を見て、タマは笑いを堪え、『仕方ニャいニャん……』と呟きながら、アドバイスをくれた。


『……まずは、跳び跳ねた時の高さが足りニャいニャん。空中で廻るから、高く跳ぶ必要があるニャ。

 まずはそこから練習からするニャん』

 言って、タマはこっちに来いとばかりに僕を呼んだ。


 行くとそこには、大きな枝下(しだれ)(やなぎ)の大木が生えていた。

 けれど、葉っぱはまだついていない。


 柳の木は、もう少し暖かくなると萌黄色の小さく細長い葉っぱをつける。

 夏の風に、サラサラと垂れた緑の葉っぱが吹きそよぎ、とても涼しげな木だ。


 今はただただ細長い枝ばかりが垂れ下がっていて、ちょっと不気味なんだけどね……。

 まるで肉のついていない細い指先が、地面を掴もうとでもするかのように見えて、少しゾッとする。

 これが木なのだとは、ちょっと不思議な感じもする。



『この枝についている狐火目指して、跳ぶ練習をするニャん』

 木を見上げながら、タマは言う。


 言われて見ると、なるほど先ほどの青白い狐火が、この柳の木にも沢山くっついていて、風もないのにユラユラと揺れていた。


 僕は、試しにピョーンと跳んでみる。

 けど、まったく届かない。

『……』

 そんな僕の様子を見て、タマは苦笑する。


『ほら、やっぱり高さが足りニャいニャん。

 タマでも、ここまで届くニャん……!』

 言いながらタマは、勢いをつけて高く飛び跳ねた。



『うわ……っ!』



 小さい体のどこに、そんな跳躍力があるのだろうと驚く程に、タマは高く飛び跳ねる。

 その姿がとてもしなやかで、僕は惚れ惚れと眺めた。


 あんな風に、跳ねてみたい……!



 でも、ちゃんと届くようになるのだろうか?

 猫のタマだから出来るんじゃないの? 少し心配だ。


 タマが指定した場所はかなり高い。


 そもそも狐火は、地面近くにはあまりなく、結構高いところでフワフワと漂っている。


『……』

 僕は少し、自信をなくす。僕、本当は出来ない子なのかも……。

『まぁ、しばらく練習するニャん。

 タマは、庭を掃いてくるから……』


 言ってタマは、再び人形(ひとがた)変化(へんげ)すると、竹箒を掴み、カラコロと下駄(げた)を鳴らしながら、走って行ってしまった。



 タマは綺麗好きなんだな……。

 僕はぼんやりと、その背中を見送った。


 寺の境内がチリひとつかなった理由を、改めて実感する。タマがこの寺の掃除をしてくれるお陰で、庭は驚くほどキレイだった。

 庭だけじゃない。多分、寺の中も。


 寺は決して小さくはない。それをたった一人で掃除するんだから、楽なはずはない。それなのにタマは文句一つ言わないんだから、すごいと思う。

 僕も見習わなくっちゃ……。



 でも、今は変化(へんげ)の練習だ! 自信をなくしてる場合じゃない! タマが戻って来るまでに、少しでもなにか出来るようになって、タマを驚かせてやるんだ!


 僕はそう意気込みながら、練習に力を入れた。


 それにさ……。

 僕は思う。


 僕に優しくしてくれた和尚さまは、目が見えない。だから出来ないこともたくさんあるのに違いないって思うんだ。

 タマが掃除をするように、僕だってなにかを手伝ってあげたい。誰からも話しかけられなかったあの過去の日々を思うと、今は信じられないほど幸せだから。

 だから、その幸せをくれた和尚さまに、なにか恩返しがしたかった。


 まぁ本当に、小さなことしか出来ないんだけどね。

 だけどその小さな事を積み重ねて、いつの日か大きく出来ればいいやって、そう思うんだ。



 妖怪なんて、みんな自分勝手に過ごすものだとばかり思っていた。

 タマみたいに、人のために生きる妖怪もいるのだなと、僕は感心する。僕もそうなりたい。


 人の姿になったら、タマみたいに、和尚さまのお手伝い出来ることもたくさん増える。そして、目指す九尾にも近づける……!!


『よぉし……っ! 僕、頑張るぞっ』


 僕は自分自身に気合いを入れると、ピョーンピョーンと練習を始めたのだった。



    挿絵(By みてみん)


           × × × つづく× × ×


   ┈┈••✤••┈┈┈┈••✤ あとがき ✤••┈┈┈┈••✤••┈┈



     お読み頂きありがとうございますm(*_ _)m


        誤字大魔王ですので誤字報告、

        切実にお待ちしております。


   そして随時、感想、評価もお待ちしております(*^^*)

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