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空海と悪魔エドガー  作者: こののべ かたな
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プレゼント

夜空を滑走する車の中で、空海とエドガーは話をする。


「これからどこに行くんですか」


「プレゼントを買いにいこう。今夜の記念として」


「どんなプレゼントを買うつもりなんですか」


「私が今考えているのは、活火山に売っているマグマのマグカップをと思っている。なぜならマグマのマグカップだと、カップのマグマ素材のおかげで喉が焼けるほどの熱いお茶を冷ますことなく飲むことができるのだ。拷問に使うのもよろしい。なんせマグマに沸き立たせられたものは全てマグマと同じ温度だからな。昔はこれでよく人間を殺すことに、血道を上げたものさ」


「では僕がそれを使うことはできないじゃないですか」


「安心したまえ。飾るだけにしておけば良い。マグマカップを割ることさえなければ、マグマ素材のマグマが流れ出ることもない。町が一週間以上続く大火事になることもないだろう」


そんな話をしているうちに、目的地の火山へと到着した。

空海とエドガーは車から降りた。


大きな岩の集まった所に赤色の古びた扉があった。

開けた先には、空海が今まで見たこともない品々が並んでおり、その商品のどれもが空海の目を惹き付けた。


「やあ久しぶり」

エドガーはこの店の店主である火の精に声をかけた。


「エドガー久しぶりじゃないか。どうしたんだ。お前がこんな辺鄙な所に来るだなんて。随分出世したという噂は、ちゃんと風の精から聞いてるよ。それに何やら大きなことも考えているらしいってこともね」


「なぁに別にこの世を一つ滅ぼそうかってくらいの些細なものさ。それよりもキケロ、今日は一つプレゼントを買いに来てね。あんたの所のマグマカップのことを思い出したのさ」


「ほう。お前確か猫舌じゃなかったっけ」


「それはまだ悪魔になったばかりの頃の話さ。人間臭さがどこか残っていたんだろう」


「なるほど。しかしウチのマグマは最高級のものを使っているから、それなりに値段も張るのだが、お代はその人間の子供でよろしいか?」


「いや、この子は私の連れだ。お代はちゃんと別で払うよ」


「連れ?ほほう」

キケロと呼ばれた火の精は好奇心を刺激されたように空海に目を留める。


「君はどのマグマカップをご希望かい?」


エドガーは尋ねる。


空海は深紅のマグマカップを選んだ。


「坊主、これは坊主にとっては何かを飲むためのマグカップではない。これは中に入れたものが全てマグマの熱で温められるから、坊主がこれを使うと喉が焼けちまう」

キケロは言った。

「でも、持つことはできる。だから割る危険さえ省みなければ、このマグマカップを手に持って、公園を走り回ることだってできる」


空海は傍に立つエドガーの顔を見上げた。

エドガーは何も答えない。


キケロは続けた。

「坊主は、何でこのマグマカップのマグマは溶け出さないで、マグカップの形をとることができているんだと思う?普通はマグマなんて飲み物だ。飲み物を器にすることなんてできないよな。液体なんだし」


空海は答えた。

「マグマが器になりたいと思っているから?」


「その通り。どんなものにも意思はあるのさ」

キケロはそう言って奥から何かを持ってきた。


「ほらこれを持っていけ」

キケロは虹色に輝くマグカップを空海に手渡した。


「きれい。虹みたいだ」


「これは大昔の虹をマグカップ化したものだ。これを作るのはなかなか難しかったんだぞ」


「良いのか?それは魔王にも売らなかったやつだろう?」


「あんたと同じ気まぐれさ」


「本当にいいの?」


「あぁ。その代わり坊主の持っているマグマカップは返してもらう」


「何で?」


「坊主にはこれは必要ないからさ。第一危険すぎる。このマグマカップが割れると、確実に坊主のいる町は大惨事になる」


「でもエドガーさんは割れなければ大丈夫だって言ってたよ」


「このマグマカップは、人間が所持していると必ず割れるようになっているんだ。君が図らずも言い当てたように、これはマグマの意思さ」

エドガーは笑いながら言った。


キケロは空海から返してもらったマグマカップをエドガーに渡す。

「お前にはそのマグマカップだ。お代はタダでいい。昇進祝いのプレゼントだ」


「今日は随分と優しいじゃないか」

ふん、とキケロはばつが悪そうな顔をしながら、二人を店から追い出した。




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