10/14
第三章「夜と朝の間に①」
空海とエドガーはキケロの店を後にした。
帰りの車中では、雑談に花を咲かせることになった。
例えば、この車の名前はギルトと言うらしい。
「ギルトは失われた傑作の一つである」とエドガーは言った。
またマグマにも好物というものがあるらしい。
マグマの好物は"森"であり、エドガーが言うには、マグマの声に耳を傾けることができた時には「森を一つ食べたい」という可愛らしい少女の声を聞くことができると教えてくれた。
意外だったのは、エドガーはこの世のことにも多岐に渡って精通した話をすることができることであった。
まるで、この世に根を張って日々を過ごしているような印象を受けた。
"悪魔は色々な人物に姿を変えて現れる"
と言うが、エドガーもその例に漏れず、この世界のどこかでひっそりと何かに成りすまして、生きているのであろうか。
赤いスポーツカーのギルトは飛行艇のように、大空を走り続ける。
雲が薄れて、空気に光が増し、夜明けの近いことが分かった。
朝日が東の地平線を染め始めていた。
空海はこの長くて短い夜がもうすぐ終わろうとしているのを感じていた。




