藤野の罠
今回、長くなってしまいました
新町地区エイテサウザ軍本部。
「グリファー総督、テロリストはほぼ壊滅状態にあります」
「そうだな。地球人なんかが我々に歯向かうからだ」
新町地区を指揮下として統治している、新町地区で最も偉いのが、このグリファー総督だ。
そして、グリファー総督に膝をついて語りかけているのが、本当のシュガロフ将軍である。
エイテサウザ軍は政治を日本に任せて、細かい統治は勝手に担当している。無論、戦争を起こさないためにも日本政府は口出しできないままである。
「先ほど何かあったと思われる国道方面にB部隊を向わせてます」
「そうか、まぁ何もないと思われるがな」
グリファーは、エイテサウザ軍ひとりひとりのGPSをマップに表示するスクリーンを見て不適な笑みを浮かべる。
スクリーンでは、国道方面に向かって4つ黄色い光が向かっている。
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音を、風を、聞いている。
煙の中で、目を凝らしタイミングをうかがう。
「...3,2,1,発車!」
トリガーにかけていた指を、引く。
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甲高いブザーが鳴り響く。
「なんだ!何が起こった!」
「先ほど発生した煙の中で何か起こったようです!ただ今確認しています!」
さっきまであったスクリーン上の4つの黄色い光が消えている。
「国道方面で何者かの襲撃を受けたようです。おそらく、テロリストの生き残りかと...」
「なに?テロリストが...?」
まだ生きてたか...。しかし生き残っているからと言って敵はそう多くないはずだ。
「一斉に攻撃を仕掛けろ!全部隊国道方面へ向かえ!」
「グリファー総督、それですと陣営が...」
「今はそんなものどうでもいい!テロリストを全滅させるのだ!!」
グリファーの声が響き渡ると共に、一斉にスクリーン上のGPSが動きだした。
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大軍が国道方面へ向かっている。
「陣営を崩したか...。かなり焦っているようだな」
武器庫に、兵を置いていなかったのは過ちだったな。
藤野は屋上から高みの見物である。
「P1!東へ前進しながら打ちまくれ!P2は県庁がある方へ手榴弾をすべて投げて援護しろ!」
『分かった!』
爆発する音が地面を振動させて藤野の耳にも届く。
『すげぇ!敵、全部やっつけたぞ...!』
『勝てる、勝てるぞ!』
テロリスト達が興奮している。
「ええい!はやまるな!敵はまだいる!P1、P2とも近くの橋へ向かえ!ダッシュだ!」
『おぉ、わかった!』
藤野の指揮による必死の攻防でも、エイテサウザ軍は全滅することはない。
橋へ向かうテロリストを見て、エイテサウザ軍は追いかける。
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「A班、B班すべてやられました!」
「なにっ⁈相手は地球人だぞ...」
「残るはC班のみですがいかがなさいますか?」
「ぐぬぬ...テロリストめ...」
そこへ速報が入った。
「テロリスト達は古川こ線橋へ向かいました!」
「ばかめ、自分から死ににいったか...。よし、C班全軍、回りこんで包囲せよ!」
シュガロフとグリファーはそれでも、正気を失わない。指揮をすることを忘れない。
スクリーン上ではすでに黄色い光で丸が描かれていた。
さすが宇宙の軍隊だけあって、一瞬でテロリストを囲んでしまったのである。
「今だ!殺せ!」
『総督!敵がいません!』
「なにっ⁈そんなわけあるか!」
『いや、本当に...うわっ⁈うわぁぁああああああ』ザザザ...
スクリーン上の黄色い光が全て消えた。新町地区にいるエイテサウザ軍が全滅したのだ。
「総督!橋、橋が...根元から破壊された模様です...」
「そんなバカな...何が起きている...⁈」
対策本部に残る彼らも全く状況を飲み込めてなかった。
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「...よくやった」
『よくやったって、もう少しで死ぬところだわ!』
『まさか、橋にダイナマイトを仕掛けて急いで逃げろなんて言われるなんてね...』
『でも、そのおかげでエイテサウザ軍はもう...?』
「そうだ、もうエイテサウザ軍はほぼ壊滅状態だ。あとは本部を叩くだけだ」
『本部を叩く...!!』
「だが、作戦を考えるための時間をくれ。十分後にまた連絡する」
藤野は無線機のスイッチを切ると、その場に横になって背伸びをした。
やった...。ついにエイテサウザを...。
軍に歯向かうなんて、到底無理だと考えていたが、案外チョロいもんだ。
藤野は安堵感を覚えていた。
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一方、新町地区エイテサウザ軍本部は。
「まずい、なんという失態か...!」
「グリファー総督、どうなさいますか...」
どうもこうも、もう兵はいない。
冷や汗だけが、垂れる。
張り詰めた空間。そこにある男が入ってくる。
「グリファー総督」
「誰だお前は...今忙しいんだ、後にしてくれ」
「特別技術班、オヤマダです」
「む、特別技術班...」
「ついに条件が揃いました」
「そうだった、まだその手があった...。早くテロリストをやっつけてくれ、そのスーツとやらで...」
「グリファー総督、ジオエイトとお呼びください」
オヤマダの自信に満ちた笑みに、グリファーさえも震えたのであった。
ジオエイト気になるよねぇ〜