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「ほら。とにかく、とっとと食べてしまえ、時間が勿体ない!」
せっかちなシンラくんに急かされて僕らは急いで昼食をお腹の中に詰め込んだ。
そして午後の授業が始まるまでの間、休むことなくひたすら呪文を唱えながら、円になってグルグル回り続けた。
授業が終わり、放課後になると僕らはまた屋上に行って警備員さんに見付からないようにしながら深夜まで回り続けた。
今にして思えば常軌を逸してるとしか思えない行動だったと思う。
「それにしても……満月が綺麗ですねー」
練習が終わって各々が帰りの身支度をしている時、ふと加枝留くんが夜空の月を見上げながら呟いた。
「本当ねー、スーパームーンだっけ?」
モミジ先輩もつられて満月を見上げた。
「明日が本番だ。お前らしっかりと気を引き締めて来いよ!」
シンラくんは腰に手を当てて僕らを見渡して言った。
「シンラくーん、明日、本当に宇宙人がここに来るんでしょうか?」
僕は少し不安になってシンラくんに尋ねた。
するとシンラくんが眉をピクリと動かした。
「お前まだ彼らの存在を疑っているのか?」
「い、いえ、決してそう言う訳じゃ……」
「いいか。そんな気持ちでやっていたら彼らにメッセージなど届かなくなる。今回が彼らと接触できる最後のチャンスかもしれないんだぞ。明日もし彼らが来なかったら全部お前のせいだからな!」
「えぇーっ! そんなーっ」
シンラくん、最終的に僕に責任を押し付けようとしてるだけじゃ……?
「そうよそうよ! 明日もし何も起こらなかったら絶対猫宮くんの所為だわ!」
何故か卯月さんまでシンラくんに加勢してるーっ!
「ちょっとそれ本当なの!? これだけ努力してきた私達の頑張りが全て無駄になるじゃない! コバン、明日何もなかったらアンタ絶対許さないわよっ!」
え、何この流れ? モミジ先輩まで無茶苦茶なこと言ってない?
大体みんな、本当は宇宙人とか信じてないでしょ?
明日何も起こらないって思ってるんでしょ?
「では、明日の成功は猫宮くん次第ってことで」
なんと、加枝留くんまでこの流れに乗ってきた!
みんなヒドイニャ! これはいじめニャーっ!
「そうだ。お前達に渡すものがあった」
僕が弁明する間も無くシンラくんは何やら思い出したように鞄を漁り始めた。
一体、何が出てくるんだろう?
僕らは鞄を探るシンラ君の手の動きを見守った。