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「僕の予想では彼らは三日後の満月の夜に現れるんじゃないかと思っている」
シンラくんは人差し指をくいっと上に向けて月を見上げて言った。
「三日後?」
えらい早いな。もうすぐじゃん。
「そう、だから僕は彼らが間違えないように、より高い場所でこうしてメッセージを送っているのだ」
「だから学校の屋上を選んでいたのか……」
あれ? でも多分、裏の神輿神社の境内の方が高いし、もっと言うと稲荷邸の裏の空き地の丘の方が立地的に高いような気がするけど、まあいっか。
すると加枝留くんが突然僕の袖を引っ張って周りに聞こえないように声を潜めて言った。
(……で、どうします?)
(ど、どうするって……?)
(記事ですよ。取り敢えず森羅くんが言う『三日』とやらを待ってからにします?)
(うーん……そうだなぁ……)
シンラくんが三日後の満月って言ってるから新聞的にはそうした方が良いんだろうけど、三日待ったからって何も起こらない可能性大だしなぁ……。
僕らがヒソヒソと話し合いをしていると、シンラくんが突然何か閃いたように手のひらに拳をポンと乗せて声を上げた。
「そうだ! 良いことを思いついたぞ! 良かったら君たちをこの素晴らしい体験に招待しようじゃないか!」
「……はい?」
僕らは何だかすごく嫌な予感がした。
「一緒に宇宙人を呼ぶのだ!」
「えーっ!」
なんか、巻き込まれてしまった感じがする。
すると卯月さんが片頬に手を置いて相変わらずのおっとりとした調子で言った。
「ウフフ……何だか楽しそうね」
卯月さんだけが何だか乗り気なんですけど!
「よし! そうと決まればお前ら、輪になれ! 交信を始めるぞ!」
シンラくんが途端にテキパキと仕切り始めた。
有無を言わせぬ強制イベントが始まったニャ!