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「今でもその光景は忘れない……まるで私の心を映すかのように、その日の夜は稲光が走り雨風が吹き荒んでいた。病院から抜け出した私は、今から行う儀式に必要な道具を家から持ち出し、庭に魔法陣を描くと空に向かって赤子を掲げ『誰でも良いから、この子の命を助けてくれ』と叫んだ。すると悪魔の気配を感じた。今、君達が知っている桔音の正体である悪魔だ。ヤツは言った。『命だけは助けてやる。ただし、その身体は頂く』と。私は死後、息子の代わりに私の魂を捧げると言ったがヤツは応じなかった。それしか助かる道はないと言った。早くしないと死ぬぞと。背に腹は代えられなかった。そして私は悪魔と契約を交わした」
「それが今の桔音くんなんですね……」
僕はお父さんと桔音くんの間に感じた不自然さの意味がようやく分かった。
本当の息子でありながら、本物の息子ではない。
そのもどかしさや、これで良かったのかという葛藤みたいなものがオジサンの中にはあるのだろう。
命と引き換えに息子の身体を人質に取られているようなものだもんな。
でも、もしそれならあの神父さんの話は悪い話ではないのかも?
取り憑いた悪魔を祓えば本当の桔音くんはどうなるんだろう?
本当の桔音くんが戻ってくるのかな?
オジサンはどう思ってるんだろう?
そんな僕らの疑問に答える様にオジサンは呟いた。
「私にはどうしたらいいのか分らないんだ……桔音を悪魔から救い出すべきなのか、果たしてそれが正しいことなのか……」
確かに複雑な話かも。
悪魔祓いが成功するのかも分からないし、失敗のリスクは相当かも。
悪魔との契約違反になるし、そもそも悪魔のおかげで繋ぎ止めてる命だから、悪魔が抜けたら本物の桔音くんの身体はどうなるのか、生きられるのか、それが分らない。
とは言えこのまま悪魔に取り憑かせてるなんて本物の桔音くんが可哀そうだとも思う。
でも、僕はこうも思うんだ。
たとえ悪魔でも、これまでずっと一緒に過ごした十五年間、息子として育てた今の桔音くんに対して何か思うことはないのかな……って。




