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街灯の真下にあるベンチに僕ら三人は腰掛けると、おじさんは徐に話し始めた。
「……桔音が、普通の少年じゃないことは君達も知っているだろう。
そう、桔音はヤツの言う通り『悪魔』なのだ」
「さっきの神父さんは貴方が故意に取り憑かせているようなことを言ってましたが……」
加枝留くんの言葉にオジサンは静かに頷き、小さく「そうだ」と言った。
「何故、そんなことを?」
オジサンは深くため息を吐くと、心苦しそうに目を閉じて言った。
「私には最愛の妻がいた。お腹には既に桔音もいて、私達夫婦はとても幸せだった……」
そして意を決したようにそっと目を開き、語り始めた。
「しかしある時、妻を乗せた車が事故に遭い、私が病院へ駆けつけた時には既に妻は亡くなっていた。……私は深く絶望した」
桔音くんの家には執事さんや使用人の姿はあってもお母さんらしき人がいなかったから何となくそうなのかなって思ったけど、やっぱりそうなんだ。
そしてオジサンの話は続く……。
「だが帝王切開で奇跡的にお腹の中の子は無事だった。それだけが、私にとって唯一の救いだった。最愛の妻の忘れ形見……愛する妻を失った私にとって桔音はたった一つ残された最後の希望……生きる希望だった」
そう語るオジサンから、桔音くんを大事に思っていることが窺えた。
「しかし、それでも救い出された小さな命は重体で、予断を許さない状況が続いた。衰弱し非常に危険な状態だと医者から告げられた。誰もが助からないだろうと思っていた。そして私の願いも虚しく、最期の瞬間がまさに訪れようとしていた。異常音を鳴らしながらベッドサイドモニターの波が弱まり、直線になろうとしていたのだ。それは息子の死を意味する。
私は咄嗟に赤子を抱き抱え、駆け出していた。医者や病院のスタッフの制止の声も聞かず、死にゆく我が子を連れ去り、家へと向かった。それは、魔術師の『禁忌』とされる術を使う為だったからだ」
「『禁忌』……?」
僕と加枝留くんは息をのんでオジサンの話に耳を傾けた。




