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ワンダーボックス   作者: 良七
4/10

中身は華麗なる嘘だった。

「すいません、真さん、今日は生徒会で会議があって本部に行けないんです」

帰りをのHLが終わると千夜が真にそう言う。

本部という単語に興味が沸き後半の授業はほぼ頭をスリープ状態にしていた界だったが耳をすませてみる。

「うん、気にしないで行っていいよ」

そう気さくに答える真に千夜は、どこか不満そう

で、口を尖らせる。

「……少しくらい残念がっても良いじゃないです

か」

そう呟く千夜に真が苦笑いする。

「前にそれやったから千夜、本部で生徒会の仕事する様になったじゃない、生徒会長なのに、次は会議もあそこでやるって言いそうだから、駄目」

千夜が生徒会長だと言うのは話の流れで理解していた界だが、どうも真に御心中の様でまともに仕事をしているか疑問に思う。

「……駄目ですか?」

「「駄目だろ」」

妙な所でハモってしまう二人だった。

「そんなぁ、なんだか二人分ぐらいにディスられた気がします」

取り合えず界の声は聞こえていません。

勘が良いだけです。

「はいはい、撫でてあげるから落ち着こうね、なでなで」

言いながら千夜の頭を撫でる

「そんなことで誤魔化せると……あぅ」

しかし、誤魔化せてしまうのが千夜なのである。

「……百合は慎め」

界のツッコミに反応したのか真は撫でるのを止めてうっとりとした顔の千夜から手をどかした。

「ほら、遅れるよ?」

「は、はい~、失礼します~」

そう言ってふらふらしながら千夜は教室を出て行った。

大丈夫なのか心配しながらも、真に気になったことを聞いてみる。

「本部ってなんだ?」

「あぁ、委員会で使ってる空き教室のこと」

なぜ本部なのかと聞いたら、本部は本部だろ?と言う回答が帰って来た。

「委員会とか入ってたんだ? だったら自分も行けないって連絡して来たら?」

この後にルシュファーとの決闘が控えている、行かなくても泣かれるだけだけど、当然それだけではおさまらないだろう。

「大丈夫、私一人しかいないから」

「ふーん……ん?」

一人で成立する委員会なんて存在するのか?

「面倒だけど、この学校、なにか部活か委員会に入らないといけないらしいからさ」

帰る支度をしながら説明している真

「……何の委員会入ってるの?」

嫌な予感しかしない。

どうせ、自分で委員会作ってそこに居すわっているのだろう。


「風紀委員」


「……斜め上の回答だよ、自ら風紀を乱す風紀委員ってなんだよ?」

頭を抱えながら何とか混乱せずに頑張る界。

「失敬だな、私が居ると言う抑止力のおかげでこの学校の風紀が守られているんだよ」

核か? やったら核、射っちゃいますよ? 的なあれか?

「風紀委員ってどんな仕事だったけ?」

「ジャッジメンツですの!! って言ってれば良いんでしょ?」

「そんなわけあるか!」


集合は四時十分前だが、界がいるので遅刻はあり得ないだろうと、真が一端本部に行きたいと言うのでそこに向かっている。

なぜ、瞬間移動で行かないかというと、人に見つかる可能性があるため極力使わないらしい。

学校は広く、本部はかなり隅の方にあった。

「それで、これが本部か」

「そ、ようこそ、風紀委員本部へ」

部屋の標識に手書きで風紀委員本部と書いている。

真が鍵を開けて中に入る、何かの準備室の予定だったのかそれほど広くはない。

本棚にテーブル、その上にノートパソコン、そしてパイプ椅子が二つ、質素な雰囲気な空間。

「完全に私の私室になってるけどね」

本棚の中には結構な量の資料がある

「も、もしかして、意外にちゃんと仕事してる?」

「それ全部千夜が持って来たやつ」

「感心して損した」

本部に入ると界の姿が見える様になったていた。

真と出会った時のままと同じで、制服を着ている。

「ところでその制服、内の学校のだけど、内の生徒じゃ無いよね? 服とか創れるの?」

言いながら真はテーブルの上のノートパソコンを取り外し始めた。

「あぁ創れるよ、三日間も透明になってるのも疲れるから、たまにこのまま彷徨いてた」

三日間もよく疑われなかったものだ、それなりに広い学校だとは言え、こんな人居たかな? ぐらいは思われ、先生方から何か聞かれなかったのだろうか。

(あぁ、影が薄いのか……)

「今、失礼なこと考えなかった?」

「ううん、全然」


「あれ? 昼からずっと透明だったけど、平気なの?」

透明化がフルで数日なら数時間でも疲労するので

は? と思い聞いてみる真、決戦前に疲れるのはあまりよろしくない。

「まぁ、頑張れば三ヶ月は大丈夫」

「……それ数日なら透明のままでも、諸ともしないってことじゃないの?」


「そのパソコンどうするの?」

真が小脇に抱えたパソコンを指さし聞く界

「秘密」

「……じゃあいいや」

聞くんじゃなかったと心から後悔する界。

「え、そこは粘ろうよ?」

……イラッ

「面倒くさいなー何だよ?」

不満をいっさい隠すことなく界は理由を聞いた。

「さっき授業中に調べてたんだけど公園にある時計がさ音出せるタイプならなんか音楽とか流せるらしいから、やってみようかなーって」

「……それ、授業中に調べることか?」

先程の授業中のやり取りの伏線が早くも回収され

た。

「よし、少し早いけど行こう、あ、それと、

スニーカー創ってちょうだい」

そう言えば真は今上履きを履いてる、今から学校の昇降口に行くのはさすがに時間をオーバーしてしまう。

先の服の質問もこれの確認だったのかと思うとふざけている様で色々考えているらしい。

「けど、何だか僕の扱い雑になってないかな?

サイズは?」

しかしなんだかんだ言いながらも創ってくれる界、嫌いじゃないよ。

サイズを聞くと界は手のひらを前に出す。

すると、ぽん、とスニーカーが飛び出した。

あらためて見ると何がどうなっているのかさっぱりと分からない。

真の中で物理学と言うものが消滅してしまいそうであった。

「ほら」

「……お、おう」

若干ビビりながら受け取った真は、早速履き替え

る。

「よし、ぴったり」

「じゃあ行くか」

そう言って手を差し出して来る界、それを掴むと直ぐに公園に移動されるのだろう、真は少し間を置いて頷いてみせた。



鬼ごっこの会場は真の下校途中にある公園。

公園と言っても遊具の数は少なく、ブランコに

滑り台、砂場、あとは広めの広場があり見えやすい所に時計が立っている。

この時間帯なら子供たちが何人かで遊んでいてその親子さん、お年寄りが集まる。

そんな憩いの公園

「何、これ……?」

しかし、二人が瞬間移動して来た公園は別世界と

言って良いぐらいに変わり果てていた。

人の気配がなく、空はどこまでも黒く淀んでいて、太陽は黒く日蝕でも起きているかのようだった。

そしてその公園の中心に居る二人を囲む様に黒く薄気味悪い小さい生き物が所狭しとはびこっていた。

ざっと数えただけでも百近い、その生き物の赤い目がじろじろと二人を見る。

どろどろとした、背筋がに寒気を覚えさせる様な

殺意のこもった視線。

「これは、どういうことだ? ルシュ」

界は、とっさに真を庇う様に後ろにして、黒い生き物の軍勢の中に居るルシュファーに問い掛けた。

ルシュファーは片手で顔を抑えている。


「ちょっと! 早く来すぎだろ!? せっかく台詞とか考えてたのに! 空気を読めよ、色々台無しじゃない

か!!」


「……」

……本当に色々台無しである。

がしがしと頭をかき始めるルシュファーに界は、深い溜め息をつき改めて問い掛ける

「それで、この悪魔たちはなんだ?」

「へぇ、これ悪魔なんだ」

「あ! こら! 触ったらいけません!」

おかんか。

気が付くと真が何のためらいもなく小さい悪魔の一体をぐねぐねと弄んでいた。

真も真でこの状況に特に何も気にしていなく、適応能力が高い

怒られても解放する気配がない真だったが、弄ばれている悪魔が泣きそうなので放してあげた。


「フッ、貴様らはノコノコと亀の様に死にに来たと言う所だ、開始十分前に貴様らを殺さないと誰が

言った?」


いつの間にか調子が戻ったルシュファーがいつもの芝居がかった口調に戻っていた。

ついでに上手いこと言ったとドヤ顔になっている。

「まだ二十分あるけどね」

「さぁ、行け、お前ら! 雑魚の人海作戦だ!!」

真のツッコミにもいつものとうり聞く耳持たない

ルシュファー。

ルシュファーの号令と共にまわりにいた悪魔達が一斉に真達に飛び掛かって行った。

「……!!」

しかし、真達に飛び掛かった悪魔達だったが何か壁にでも当たったかの様に止まり瞬間に吹き飛んだ。

「……次はどいつだ?」

手を鳴らしながら界が悪魔達に睨み聞かせる

見るからに悪魔達が吹き飛んだのは界の仕業らし

い、魔法使いの業界は知らない真だが、界はなかなか強いんじゃないか? と考え改めた。

その一連を腕を組、見ていたルシュファーは、

ニヤリとすると。


「……やっぱ駄目か」

そうそうにあきらめた。

すると悪魔達は先程までの恐い雰囲気を消して騒ぎ始めた。


「む、無理だ、勝てっこない!」「あ、悪魔だ!!」

「殺される!!」「あのクソ堕天使が!!」「逃げなきゃ殺られる!!」「逃げろ!!」

わーー!


悪魔達は逃げて行った。

「あ、おい、逃げんな! 後、俺ディスったやつ誰だ!! 待てー!!」

しかし、ルシュファーの声に止まる悪魔は誰もいなかった。

勿論、ディスったやつも逃げて行った。

「……喋れたんだ」

そして、どうでもいいことを呟く真だった。


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