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うつりぎ  作者: 西季幽司
戦国時代編
37/68

本能寺③

 光秀が信長を討ったことは、その日の内に京に知れ渡った。

 宮廷内の貴族たちは情勢を見守って日和見をするものと、新たな支配者となった光秀の機嫌を損ねることを恐れて祝辞を届けるものに分かれていた。

 翌日、届けられた祝辞の中に、目を引く名前があった。

 徳姫だ。織田信長の娘で、徳川家康の長男、信康に嫁いだ。岡崎殿とも呼ばれる。信康との間に二女をもうけたが、信康と姑の築山殿が武田氏に通じていると信長に訴え、信康を自害に追い込んだ――といわれる女性だ。

 信康自害の後、織田家に戻っていた。

 三年前のことだ。信長は傷心の娘を慰めるべく、京に送っていたようだ。

 その徳姫が何と父親を攻め殺した光秀に祝辞を送って来たのだ。興味が湧いた。光秀となった平九郎は徳姫を尋ねた。

「何故、父上を殺した拙者に祝辞など送られたのです?」と尋ねると、開口一番、徳姫は「わらわは信康殿が武田に通じているとなど、父上に訴えてはいない!」と訴えた。

「信康殿が武田に通じていたことは明白。お家を滅亡に追い込もうとした罪人でございませぬか?」

「罪人? 武田に通じて織田家を滅ぼそうとしたのは、筑山殿じゃ! 信康殿ではない。そのことは父上にも申し上げた。だが、父上はお聞き届けにならなかった。徳川殿と示し合わせて、信康殿を自害に追い込んでしもうた。あの二人はわらわの夫を奪いおった。憎っくき仇なのじゃ! だから、仇を討った光秀殿に祝辞を贈ったのじゃ」

 平九郎は仇討話に滅法、弱い。

「わらわが男であれば。いっぱしの武将であれば、残った徳川殿を打ち滅ぼして、信康殿の仇を討ってみせるのじゃが」と歯噛みをする徳姫を見て、「徳姫殿。その志やよし!」と叫ぶと、徳姫に襲い掛かった。

「あれ~光秀殿、む、無体な。何をするのじゃ!」

「姫の望みを叶えてしんぜよう。光秀となって徳川殿を討つが良い」

 平九郎は徳姫を組み敷いた。

 こうして光秀は徳姫と入れ替わった。

 そして、わずか十日後、中国より攻め上った秀吉に光秀は討たれた。徳姫の仇討は失敗に終わった。

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