ひとつのメルヘン
同名の「超」有名な詩があって、むろんその詩は明治以降はな開いた自由律詩のなかの白眉であり、そのあまりにも幻想的な美しい地獄の風景は、読む人すべての人々のこころを捉えて、もう離さない。
平成が終わろうとする時節にあって尚、彼の存在はべつに日本的というわけではさらさらないが、その早熟の天賦の才、にありがちな挙動不審、詠みあげる詩の読む人との同一性を保証する「自分だけが彼を理解している」感。夭折、ひっくるめて、我が国が持ち得た最適な憧憬されるべき詩人の順位をつけるなら、一位を譲ることなどあり得ず、仮に一位をのがしたとしてもだれもがそれに準じる評価をあたえる今尚大人気な。ひとつのめるへん。
うつむいて幸せ色を飲みほして茜の空に消え入るため息
あの時の白い日記を一新し古びた銀貨を落とすメルヘン
あちこちにこぼれるミネラル塩あめをかばんに仕舞ってゆく夏の午
蛇つかい星座になるほど有名ななにをしたひと くるまは出してね
本を買う 横に並べるまえに読む 戦場で亡くした指輪の空箱の
おもろうて やがてかなしきことが好き 翔び 踊る蝶 死に 蟻の餌
さがすふり 幸せ色は知っている ありかも順路もそのむだ足も
その銀貨 二度ときえるなマジックでおれのものさと君の名を書く
ーーーーーーーーそこに陽は
さらさらと
さらさらと 射しているのでありました
べつにどこにも勝ち負けなんかないんだけど、やっぱりまけまくってる感が凄いのであります。