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上を狙う天才と危険な存在

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 インターハイの組み合わせ。立見の1回戦の相手は徳島の泉神と決まり、初出場同士の試合となる。



 その勝者が2回戦から登場するシード校。高校サッカー界の王者、八重葉学園。




「次がもう八重葉?」



「うわー、マジかよ。えっぐい……」



 立見の部員達と同じく、前川の部員達もトーナメント表を見ていた。彼らも八重葉が強い事は当然知っている。まずは目の前の1回戦だがそれを乗り越えた先、翌日に八重葉と戦わなければならない。



 初出場とはいえ泉神も予選を戦い、全国出場を決めた猛者であり、簡単な相手ではないだろう。八重葉を意識して、彼らに足元をすくわれる可能性は充分考えられる。



「まあ、遅かれ早かれ当たるでしょうし。今更トーナメント、八重葉といきなり当たるの嫌だから組み合わせやり直してくれなんて通らないから運ですよねー」



 ほとんどの者がこの組み合わせに驚いたり、頭を抱えたりする中で弥一は何時もの調子。、彼の言うようにトーナメント表はこれで確定している。そのやり直しが行われる事は絶対に無いだろう。



 どう足掻いても、勝てばすぐに八重葉戦という現実から逃れる事は不可能だ。




「今は八重葉の事を考えず目の前の泉神だけに集中し考えよう。全国1勝を取って行こう」



 前を向かせ、泉神に集中させようと成海は皆へと声をかけていき、合同練習は再開される。



 桜王と共に今年のインターハイに参戦する立見。当然ながら全国の1勝というのはまだ無い。まずは泉神を倒し、全国大会初勝利が目標だ。





「よお」



「あ、岡田さんー」



 水分補給し、小休憩している弥一に岡田が声をかけてきた。彼も手にスポーツドリンクを持っていて、水分補給を欠かしていない。



 夏の日差しは練習開始時よりも強くなる。気温が上がっているので選手達だけでなく、マネージャー達も水分を取るようにする。その為に水やドリンク等の飲み物はこの時期、多めに用意するようにしていた。



「キーパーでの合同練習、どうですかー?」



「俺とは違うタイプのGKが居るおかげで普段とは違う練習が出来たり、参考になったりしてるな」



 岡田は大門に教えてばかりではない。大門の長所を見たり、控えのGK安藤の動きも見たりと己の糧にしようとしている。



「大門はあまり大胆な事しなくて堅実だけど技術が高いな。特にキャッチングが良いし、ジャンプ力もある。安藤は俊敏で結構前に出て行ったりと俺に近いタイプだな。あいつも中々のGKだ」



 立見の二人のGK、大門と安藤について岡田は語る。二人とも互いにタイプが異なるGK。大門が静なら安藤は動と、岡田から見てそんな印象だった。


 その岡田もタイプは動の方だ。それは立見との試合で見て、弥一もイメージが強かった。




「そういう岡田さんも中々どころじゃない凄腕でしょー。あの前川戦0-0でPK行くかと思いヒヤヒヤしてましたからー」



「何だ、マイペースで焦らないように見えて実はそうだったのかよ。全然見えなかった」



 支部予選の立見と前川の試合。結果として優也が後半に岡田からなんとか1点をもぎ取り、1-0で立見にかろうじて軍配は上がったものの、0-0でPK戦になってもおかしくない試合だった。



 そうなれば立場は逆になっていたかもしれない。



 弥一に凄腕と言ってもらい、悪い気はしなかったが岡田の表情は明るくは無い。






「自分じゃまだ凄腕とは思って無ぇよ、弱いとも思っちゃいないけどな」



 座り込む弥一と並ぶ形で岡田は立つと、夏の青空を見上げた。



「さっきお前、八重葉と試合するかもしれないって時に気のせいかもだけどよ。泉神どころか八重葉もぶっ倒そうとしてるか?」



「勿論そうですよ?」



 泉神戦の勝利だけでは満足せず、八重葉戦の勝利も狙う。岡田からの問いかけに弥一は当たり前とばかりに答えた。全国初出場なら全国の1勝で充分大きいものだが、それで終わるつもりなど弥一には無い。



「八重葉だけじゃなく、その先も倒そうと思ってますから。無失点記録を維持したままで」



「……」



 冗談で言ってるようには見えなかった。八重葉に勝つというだけで、とんでもない目標なのにその先の優勝。それも無失点記録を破られないまま、全国制覇を弥一は本気で狙っている。



 普通に考えれば初出場。しかも創設から僅か2年程になる層の薄い高校。よっぽどの偶然や奇跡が連発して、重ならない限り不可能に近い偉業に思えるだろう。




 だがDFながら高度なボールテクニックを持ち多彩な技を見せたり、本業の守備でも鳥羽や蛍坂に原木といった強豪達の攻撃を完封。


 そうして弥一は東京MVP、その称号を手にしている。



 彼なら、立見なら可能性があるかもしれない。弥一を見ていたら明確な根拠など無いが、それでも不思議とそんな事が起こるのではと、岡田は思ってしまう。




「だったら最大の壁はやっぱり八重葉だな。そりゃ全国には色々な強豪はいるけど、八重葉だけはマジで別格だ」



 一度ドリンクに口をつけて息を整えると、岡田が再び話し始める。



「うちも春に八重葉と試合やってさ、2-0。照皇に2点やられて完封された」



「前川も八重葉と試合やってたんですか」



「ああ、向こうが東京遠征で来ててな」



 春に練習試合をしたのは立見だけではない。前川も同じく八重葉と試合を行っていた。立見がこの曲者キーパー岡田から1点取るのに試合終了間際までかかった。対して八重葉は2点取っている。どちらもエース照皇のゴールで、高校No.1ストライカーに恥じない結果をしっかりと残していた。



 攻撃だけでなく守備も堅い。キャプテンのDF大城が2軍中心の八重葉を纏めていたのを弥一も覚えており、彼らが前川を完封したというのは初耳。


 照皇ばかり目立つが大城の存在も無視出来ない。更に中盤の村山も中盤を支える万能MFで照皇、大城と共に八重葉を支える要だ。




「そいつらも非常に厄介だけどな、1軍……特にあいつが合流した時の八重葉は手が付けられない。その時の八重葉は歴代最強でプロにも勝てるかもしれない、なんて声まで上がる程だ」



 岡田の言うあいつという人物。それが加わった時こそ、八重葉は高校サッカー界最強の軍団となる。



 天才である照皇に並ぶ程に危険な存在。その名が岡田の口から語られる。







「あいつ、工藤龍尾くどう りゅうびが加わったらな……」

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