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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
第1章 高校入学

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1年の彼らは3年のキャプテンと副キャプテンに挑む

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 練習メニューの一つであるミニゲームの4対4。1年生同士がそこで組んで、先輩達による高校サッカーの洗礼を浴びる。



 そう思われたはずが今、信じられない事が起きている。



 1年生のチームが先輩のチーム相手に連戦連勝。DFの弥一が相手の攻撃チャンスを事前に潰して、ワンチャンスのカウンターを快速FW優也が決める。


 攻撃の優也、守備の弥一がコンビを組んで無双状態に入っていた。



「どうなってんだあいつ!?」



「まさか、全試合無失点で行くって言葉は本気かよ?」



 自己紹介の時に言った弥一の出場試合全試合無失点という大胆宣言。ミニゲームを見るまで、ただ大口を叩くだけの1年のチビ程度にしか思っていなかった。



 だが、目の前でプレーを見て成果を出しているのを見れば、最初に思っていた事は訂正せざるをえない。



 1度目はまぐれのインターセプトかと思っていたが、それは2度、3度と続いて起きている。そんなまぐれが続けて都合良く起こる訳が無い。



 今彼らは弥一に対して背筋がゾッとする物を感じているかもしれない。体は小さいが、最も厄介なDFだと。





「おい蹴一、此処は行こうぜ」


「! 待てよ。もうすぐ朝練終了が迫ってるぞ」


「短時間でケリつけりゃ問題無ぇだろ」



 時間はもうすぐ朝練終了で学校の授業に備え、準備して戻らなければならない。だが、副キャプテンの豪山は構わずミニゲームをこのまま続行し、弥一達1年チームと成海、豪山の居るチームで戦う事を希望していた。



「そこの1年達! 来い、俺らが相手になってやるよ」



 豪山が弥一、優也達4人へ来るようにとフィールドを指差す。



「ついにキャプテンと副キャプテンが僕らと対決してくれる所まで来たんだー、このまま全勝行っちゃおう!」


「相手はレギュラー揃いだぞ。実力はさっきよりも絶対高いって!」



 キャプテン、副キャプテンを前にしても負ける気の無い様子である弥一。チームメイト二人は弥一の度胸が凄すぎると思い、同時に聞こえたらどうするんだと慌てている。



「(立見の攻撃の要である長身FW豪山先輩とキャプテンの成海先輩……DF二人もレギュラー。けど関係無いな。やるからには勝つ)」



 弥一とは逆に無言で準備へと入っているのは、此処まで自慢の快速で活躍の優也。彼も弥一と同じように先輩相手だろうが負ける気など更々無かった。




「あ、二人とも。流石に今回は僕一人じゃちょっときついから、二人で成海先輩から目を離さずマークよろしくね」


「え? 豪山先輩はどうするんだ?」


「そっちは僕一人で抑えるよ」


「はああ!?」



 開始前にMF二人へとキャプテンの成海をマークするよう弥一は前もって伝え、豪山は自分が抑えると何の迷いもなくあっさり言う弥一に、MFの1年二人は今日何度目なのか再び揃って驚く。



 180cm以上ある長身FWの豪山を150cm程しか無い弥一で抑えられるのか、いくら先輩達相手に勝ち続けているとはいえ無謀に思える。




「……抑えられんのか? お前とのパワーと体格差、分かってるとは思うけど相当のもんだぞ」



 黙って準備していた優也が静かに口を開く。


 普通に考えて競り合いになれば、上背と体格で勝っている豪山が圧倒的に有利だ。弥一が抑えるとなると彼へボールが飛んで来る前に、今までのようにパスをカット。



 インターセプトを狙うしかない。



「全国のストライカーはもっと凄いの居るでしょ? 此処で抑えられないようじゃ、全試合無失点なんか到底出来ないって」




 全国



 弥一がそれを口にした時に優也は思わず目を見開く。練習初日の高校生になったばかりな1年の小柄なDFが、もう全国の方へと目を向けている。予選すら始まっていないのに気が早すぎると言えるが。



「やるんなら去年以上の成績とかじゃなく、全部勝って全国で一番強い。そっちの方が絶対に格好良いからさ」



 優也も大口は叩く方だが弥一はそれ以上だ。こんなビッグマウスな奴に会うのは初めてで、口だけでなく先程のプレーを見た限り、本気で小柄なリベロは全国制覇、更に全試合無失点を狙っている。



 こいつは本気だと感じると、優也は此処に来て初めて口元に笑みを浮かべた。



「言ったからには豪山先輩に勝てよな」


「当然ー♪」




「お前ら、此処まで中々やるじゃないか。特に神明寺弥一、お前がただの1年じゃないっつーのはよく分かった」



 豪山は1年チームの顔それぞれを見てから最後に弥一の顔を見下ろす。身長差は35cm程の大きな差があり、大人と子供という表現が実にこの二人にピタリと合っていた。



「うわぁ、凄ぇ身長差……」


「巨人と小人じゃねぇかあれ」



 回りの部員達も圧倒的なまでの身長差を見てざわつき、此処までの身長差によるFWとDFというのは同じ年代で見る事など滅多に無いだろう。



 そんな中でも見下ろされている弥一は豪山の顔を見上げて、楽しげな笑みを浮かべていた。



「(蹴一、開始なったら軽く俺によこせ。あいつがいくらインターセプトが凄くても位置的にこっちの開始からのパスは流石に奪えないはずだ)」


「(まさか……そのまま直接中央突破で行く気か?)」


「(見ただろ、どういう訳か読みが鋭い。下手にパスを出したらすぐ向こうに奪われる可能性は高い。なら直接ドリブルに持ち込んで抜く)」



 1年とのミニゲームを自ら臨む辺り、血の気が多く好戦的な感じだが豪山は意外と冷静だ。



 弥一の読みが鋭くインターセプトが得意というのを認め、それに対する対抗策を成海と耳打ちで練っている。真剣な豪山を見れば、成海も本気で打ち合わせに応じて作戦を決めていた。



 足の速い優也にDF二人がマークするよう成海は二人へと伝える。もし豪山が止められた時にカウンターを受ければ、今までと同じように自分達も敗れる事になるだろう。



 豪山が弥一を抜く事は勿論信じているが成海は過信しない。もしもの可能性がある限り、それを疎かにする訳にはいかなかった。



 開始は3年生チームのボールから始まり、センターサークルには成海と豪山が立っている。打ち合わせでは成海が軽く豪山へと蹴ってのキックオフで、豪山がそのまま持ち込む。



 これなら、どんなに弥一の読みが凄かろうがカットは不可能なはずだ。




 朝練の終了時間が迫る中、3年チームと1年チームのミニゲームが始まる。




「!」



 優也が動き出すと同時に3年DF二人がマークにつく。優也のスピードを警戒して二人がかりの徹底マークだ。



 作戦通りにDFは動き、成海も軽く豪山にボールを転がしてから動き出す。



 それと同時にMF二人はボールを持つ豪山を無視して、成海へと二人がかりで張り付いた。



 ドリブルで攻め込む豪山の前に居るのはゴール前、ペナルティエリア中央の外付近に立つ弥一だけだ。



「(こっちがドリブルで持ち込んで1対1の形にするつもりだったのに、向こうもタイマン上等って奴か!? 本当に良い度胸だなチビ!)」



 ニヤっと一瞬笑った後に豪山は、そのまま弥一が待ち構えるゴール前へドリブルで突き進む。



「(そう来るのは心でとっくに分かってたよ、パスを警戒してドリブルで持ち込んで来る事はね)」



 彼らの耳打ちによる打ち合わせは弥一からすれば全部丸聞こえで、作戦を自ら教えているも同然だが、今回はインターセプトは出来ない。



 キックオフで転がすだけのボールは弥一の位置からではカットは出来ず、成海とのコンビネーションを使わせずMF二人にマークをつかせて、豪山と1対1の状況に持ち込む。



 その瞬間、弥一が動き出すとボールを持つ豪山に向かって行った。



 小柄な後輩に対して、容赦なく潰そうと長い右腕が伸びて来る。



「(こいつにはテクニックよりパワーで抜く方が良い!)」



 腕を使って1対1のマッチアップに挑む豪山の身長は185cmで、長身を誇る彼の腕は長く、腕を使ってのパワーによるブロックで弥一を寄せ付けず、体格差の有利を最大限に活かしての突破を狙う。





 すかっ



「(え!?)」



 向かって来た弥一に触れると思われた豪山の腕だが、彼はその腕を低い身長をより低く身をかがめて躱す。触れる感触が感じられず、腕が空振りになった豪山はバランスを崩し、転倒しそうになる。




 その一瞬の隙をついて弥一は豪山からボールを奪取。




「(なんだ今の神明寺の動き!?)」



「(豪山先輩の長い腕を躱した……!)」



 摩央も大門も豪山を相手に見せた弥一のプレーに、口を開けて驚いていた。絶対に不利であろう、体格差のある豪山からボールを奪い取ってみせたのだ。二人だけでなく周囲も驚愕する。




 そのままドリブルで弥一は攻め上がると、DFは相変わらず二人で優也に張り付いている。



 DF二人よりもやや前に成海も待ち構え、飛び込む気配は無く弥一の出方を伺う。



「(うーん、あれは守りかったいなぁ。中盤二人でパス回して崩せるかな?)」



 成海も守備寄りのポジションについて、守りを厚くしてきた事に弥一はボールを出しづらくなった。この間に後ろから大きな影が迫る。



 豪山が追いかけて来て、弥一からボールを奪い返そうとしていた。



「(こいつで、どうだ!)」



 豪山は弥一に対して肩でぶつかりに行く。ショルダーチャージで弥一のバランスを崩して、ボールを奪うつもりだ。この体格差ではバランスを崩すどころか、弥一の小柄な体は間違いなく吹っ飛ばされる。




 だが、豪山のショルダーチャージは寸前で止まる事になる。




 ピィーーーーーーーッ



 彼の動きを止めたのは長いホイッスルだった。笛を吹いたのはマネージャーの京子だ。



「朝練、もう終了。授業の時間迫ってるから」



 京子はスマホの時計を豪山へと見せた。時間を見れば8時20分、朝練の終了時刻だ。ミニゲームは此処で強制終了となる。



「ああ悪い、もうそんな時間か。午前の練習は此処で終わりだ! 各自速やかに授業へ向かうように!」



 キャプテンの成海もミニゲームに熱中して時間に気付いてなかったようで、彼の口から改めて今日の朝練終了が告げられた。




「なんだ、これからボールを奪い返してすぐにゴールって所で……」


「副キャプテンが時間破ったら示しつかない。文句ある?」


「っ……悪かったよ」



 不満を口にする豪山も京子に反論は出来ず、着替えに部室へと向かって行った。




「杉原ー、すぐ着替えて来るからちょっと待っててー。大門行くよー」



 見学していた摩央に一声かけた後、大門と共に弥一も制服へ着替えに行く。姿だけ見れば無邪気な子供のようなもので、先程まで先輩達や豪山相手に大活躍を見せたプレーヤーと同一人物には見えない。




「……」



 その弥一の後ろ姿を見て何を思っているのか、優也は黙って弥一を見た後に自らも授業を受けに向かう為、制服へと着替えに部室へ向かった。





「(不思議なリベロに快速FWの1年生二人、今年は……良い1年入ったかもしれない)」



 部室に向かう彼らが、光り輝くダイヤモンドとなって本当の試合で活躍してくれる。そんな未来を頭の中で思い描きつつ、制服の彼女はそのまま教室へ歩いて向かう。



 こうして初日の朝練は終わりを迎え、各自で授業を受けた後にまた放課後の練習が待っている。

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