守備で咲く華
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
『立見の攻撃はオフサイドで止まり真島ボール。GKの田山一気に前線へ大きく蹴り出した!』
全国大会の経験を持つ白い帽子を被った186cmの長身。真島キーパー田山周一郎。滞空時間の長いロングキックを蹴ると、前線はその間に立見サイドのフィールドへ上がって、止まっていた鳥羽も動き出す。
その鳥羽にボールが来ると、近くに川田も来ていて二人は同時にジャンプ。
鳥羽のポジション取りは良かったせいか、高さに強い長身の川田と頭で互角に競り合い、球は流れていく。
真島の選手がボールを取りに行くと、先に取ったのは影山。此処は立見が誇るダブルボランチのおかげで真島の攻撃を凌ぐ。
影山がパスを出すと、ボールを受けた成海に対して真島は峰山と戸田で囲みに行く。
二人がかりに対して成海は取られずにキープを続ける。その時、右から田村の上がる姿が見えた。
成海は左足でパスを送り、走り込む田村へ向かう。
「うぉわ!?」
そこに待っていたのは激しいスライディング。
急に人の足がボールへ向かって来て、田村は驚きつつも自身は寸前で避けるが、ボールはタッチラインに流れる。田村に対するスライディングはボールに行っていると判断され、ノーホイッスルと審判は反則を取らず。
このスライディングをしたのは、全国出場経験を持つ183cmの長身CDF田之上雅彦。田村の上がりが見えたので早めに動き出し、右サイド独走の阻止に成功する。
『これは激しいー! 真島DF田之上、思い切ったスライディングで立見の右サイド田村を止めた!』
『田村君の右サイド突破は立見の大きな武器ですからね。ファールでも構わないから止めて流れを切ろうという狙いだったのかもしれません』
「きついな、田村先輩でも突破が厳しいってなると」
「立見の右を警戒する真島、だとしたら今……」
田村が止められ、守りが堅いなと思って見守る摩央の横で、京子は何かを確認するように呟くと控えの一人に声をかけた。
「上村君、準備して」
「え? は、はい!」
前半20分程で京子は武蔵に声をかける。アップをするよう伝えると、武蔵はベンチから立ち上がって走りに向かう。
ボールを持つのは立見。相手ゴール前のマークは厳しく、中々シュートを撃たせてもらえない。真島がシュートを撃ってるのに対して、まだ立見は0本だ。
「9番見失うなー!」
真島のゴールマウスを守る田山のコーチングが飛ぶ。
要注意ストライカー豪山には、真島DFの要である田之上がきっちりとマークしている。
岡本、成海とパスを繋ぎ、ボールを持った成海には前からDFの厳しいプレッシャーがあって、シュートに持って行けない。そこに鈴木がフリーの姿を見つけて成海はパス。
受け取った直後、鈴木がミドルを放つ。立見の1本目のシュートに対して、真島DF矢野の肩に当たってシュートをブロック。
ゴール前でボールが高く上がり「任せろ!」と声を出すと共に田山が前に出て、上がった球が落ちてきた所をジャンプして両手でキャッチング。立見の攻撃を断ち切る。
すると田山はキャッチしたボールを素早くパントキック。攻撃から守備への切り替え、それが切り替わる前にカウンターを仕掛けて来た。
低いコースでボールは鳥羽に向かい、この速いボールを左足で難なくトラップしてみせる。
『おーっと田山から速い速攻! 真島のエース鳥羽に渡ったー!』
『これは田山君、低くコントロールの良いキックですよ!? このパスをトラップする鳥羽君も流石の技術ですね!』
「(間宮からは離れてる。田村も上がりっぱなし。DFのプレッシャーは感じない。行けるな!)」
周囲の状況を瞬時に判断し、鳥羽は前を向いてドリブルを開始。このまま行けばキーパーとの一対一もある。
そうはさせないとばかりに、小さな影が鳥羽の前に突然現れた。
「!」
これに鳥羽はドリブルから立ち止まる。
目の前に立見の無失点を支えるDF、弥一が鳥羽の前に立っていて、彼と一対一のデュエルだ。
鳥羽は右、左と素早いフェイントで揺さぶりをかけるが、それに弥一は全く釣られる気配が無い。その動きを冷静に鳥羽の前で見ている。
「(駄目かい、これならどうよ!)」
釣られない相手に対して高速で跨ぐフェイント、シザースで再び揺さぶる。その動きを見ている弥一に鳥羽は次の行動に出た。
またぎのフェイントの最中に右踵にボールを乗せて蹴り上げ、相手の頭上を超える。お洒落にして華麗で高度なテクニック。
弥一の頭上を超えて会場は驚きの声に包まれる。
ただし驚いたのは鳥羽にではなく、弥一に対してだった。
「(な!?)」
ボールが弥一の頭上を超えて、鳥羽は同時に彼の横を通り過ぎる。
これで躱したと思ったが、弥一は瞬時に行動すると、それに鳥羽の表情が驚愕へと変わる。
頭上を超えるボールに対して振り向き、追いかけると思ったら弥一はそのまま飛び上がり、地面に背を向けた状態となる。
空中で逆さの状態となって、そのボールを思い切り右足で蹴り飛ばし、ボールはタッチラインへ逃れた。
鳥羽の魅せる高度なフェイント。これで抜いたと会場は驚くが、それ以上に直後に守備のスーパープレーを見せた弥一に会場は盛り上がり、立見応援席は弥一コールだ。
『これは凄いー!? 鳥羽がシザースからヒールで頭上にボールを浮かせ、躱したかと思えば立見DF1年の神明寺が大技オーバーヘッドでクリア!!』
『その前の鳥羽君の巧みなフェイントに全く釣られなかったりと、完全に読んでるように見えましたね!? こんな攻防プロでも中々見れませんよ!?』
「ゴール無くても華麗な華、あるもんでしょ? お客さん盛り上がってるよ」
フィールドから立ち上がり、埃を落とす弥一は鳥羽へ声をかける。フィールドに華を咲かせると言った彼に対しての言葉だ。
ゴールが無かろうが華はそこにあると。
「やってくれんなチビ君よ、守備で俺より魅せた奴はお前が初めてだ」
「へえー、Uー16でもそういうのいなかったんだ?」
互いに言葉を交わす弥一と鳥羽。その間に火花が飛び散っていた。
「おい鳥羽、あのまま勢いでDF突破出来てなかったか? お前何時もやってたろ」
鳥羽に峰山が近づくと、何時もやっている事を改めて伝える。今回鳥羽がやらなかったのは何故なのか。調子でも崩したのかと、彼の身に何か起きたのか心配もあった。
「行ったらチビ君、あのDFに多分取られると思ったんだよ。そうなったら最悪カウンター返しを食らってこっちがヤバかった」
ストライカーとしての勘。それが危険を伝えていたのか、鳥羽はあのままスピードに乗っての突破を避けた。
行ったら弥一に取られてしまう。彼の姿を見た瞬間そう思って足を止め、プレーを切り替えていたのだ。
それだけ言うと、鳥羽はポジションに戻って行った。
「(確かに厄介なDFだけど、鳥羽の足も止めさせるなんて……何者なんだよあの1年小僧)」
峰山が目を向ければ、身体の小さいDFで味方へ声をかけている姿。あんな小学生並の体格しか無い1年が、東京No.1ストライカーの鳥羽に立ち塞がったのは今更ながら信じられない。
「峰山ー!」
「!?」
味方の声にハッと気付く峰山。前を見ればボールが自分へと向かっているのが見えた。
弥一に意識が向き過ぎたのか、集中力を欠いていた峰山は慌ててパスを受けた。それを横から弥一がそれを狙っていたか、巧く峰山からボールをカットして奪い去る。
『おっと、どうした峰山!? 得意のキープが出来ず神明寺にあっさりとボールを取られた!』
「ペースを乱されるな!落ち着け!」
これには真島ベンチから監督が立ち上がり、前に出て選手達へ伝える。
彼らは鳥羽が弥一に止められた事で微妙にリズムを狂わされていると感じ、このままではいかんと判断したようだ。
「相手さん今ガタガタだよー! そのまま行っちゃってー!」
影山へパスを渡してから弥一は後方からのコーチングに徹する。
この声に後押しされるかのように、立見は再び攻めへ転じた。
宜しければ、下にあるブックマークや☆☆☆☆☆による応援をくれると更なるモチベになって嬉しいです。
サイコフットボールの応援、ご贔屓宜しくお願いします。




