世界一を目指す戦い
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
『前半メキシコが押し気味で試合を進めていますが、日本の守備が跳ね返し続けています!』
『上手くブロックを作って守れていますね。攻められていますが危険なシュートは一本もまだ飛んで来てませんよ』
メキシコが持ち前のテクニックでパスを上手く回し、両サイドから主に攻めている。
左右のサイドを守る冬夜と辰羅川は守りに入っており、上手く前に出て攻撃に出る事が出来ずにいた。
初戦の漂う独特な重圧が彼らをそうさせているのかもしれない。
「サイド下がり過ぎー! もうちょっと前行ってー!」
弥一は引いている2人へ下がるなと注意を飛ばす。
両サイドを修正させてから再び中盤での攻防戦となり、激しいボールの奪い合いが行われる。
「(流石メキシコだな……上手いだけじゃなく速いし、ボールを奪うのが簡単じゃねぇ)」
最後尾で日本のゴールマウスを守る龍尾から見れば、メキシコが巧みにボールを操って、広く繋げるサッカーを展開している。
おそらくボール支配率で今、日本は負けているだろう。
「(なんとか攻撃に繋げないと!)」
影山は試合が押されてる展開だと感じ、流れを引き戻さんと走る。
「焦らずー!まだ負けてないしマイペースにやっていこうー!」
その影山を指摘するかのように、弥一は皆へ声を掛け続けていた。
前半で、まだ全然焦る時間帯ではないと。
「やはり世界の大舞台となりますから、何人かは硬さが見えてますね」
「ふむ……」
ベンチからコーチの富山と共に静観しているマッテオ。
すると彼は立ち上がると、自らの足で選手の元へ向かう。
「光明、準備をお願い出来ますか?」
「了解ー」
直接マッテオに言われると光明は席を立ち、フィールドの周りを走り始めた。
日本は前半の早い時間帯から交代に向けて動き出す。
『日本左サイド!広西が抜け出す、いや!?2人がかりで潰されてしまう!』
勝也が中盤でボールを持つと、そこから左サイドへのスルーパスが出されて冬夜が走るも、スピードに優れたメキシコ選手2人がかりに突破を阻まれてしまう。
「はぁっ……!くそ……!」
冬夜の表情に若干の疲労感が漂い、彼が頬に伝うアセを袖で拭った時。
交代が告げられる。
『おっと日本、前半の内に交代ですか。中盤の左サイド、広西に変わって背番号21源田が入りますね』
『マッテオ監督どうやら早めに手を打って来たみたいですね。やや早過ぎる気もしますが……』
場内に選手交代のアナウンスが告げられる中、冬夜がフィールドから出ると入れ替わりで、光明がフィールドに入ろうとしていた。
「あいつら相当上手いぞ。気をつけろよ」
「分かってるさ、お疲れ」
冬夜と軽くタッチを交わした後に光明は今大会、始めて本戦のフィールドに立つ。
「監督からの伝言、もっと厳しく当たりに行けってさ」
「厳しく?ああ、分かった」
光明は勝也に近づき、マッテオからの伝言を伝えていた。
「っせぇ!!」
「ぐっ!?」
ボールを持つ相手に勝也がショルダーチャージで強く当たり、相手のホルヘはバランスを崩しかける。
体制が崩れた隙に代わって入ったばかりの光明が奪取。
メキシコが若干当たりに弱い事をマッテオは見抜き、テクニックで張り合わずに相手の弱い所を狙えと、光明を通して全体に指示を出していたのだ。
『日本ボールを取った!代わって入ったばかりの源田が速攻だ!』
相手のアドニスが奪いに来るが、光明はブラジル仕込みのテクニックでボールを操り、アドニスの股下から通過させれば自身も球を追いかけて突破する。
このドリブル突破にはスタンドから歓声が上がっていた。
中央から攻め上がる、かと思えば光明は左足で右サイドを走る辰羅川にパスを送り、メキシコのDFを揺さぶっていく。
『辰羅川!高いボールが上がった!』
得意の右足によるセンタリング、高く上がった球に室が落下地点で待ち構える。
「(タツさんナイスボール!!)」
辰羅川から精度の高いクロスが来て、室は何時ものように跳躍すれば異国の空に高く舞う。
メキシコDFパブロも飛んで競り合おうとするも、室の方が頭1個分ぐらい高かった。
そこから頭で合わせると下に叩きつけるようにヘディング。
バウンドしながらゴール右へ向かうが、GKカディナの左腕によってボールは弾かれる。
難しい球をセーブしてメキシコはCKへ逃れた。
『ああ〜、惜しい室のヘディング!先制のチャンスでしたがメキシコGKカディナのファインセーブに阻まれた!』
『身長は170にも届いていないそうですが、良いセービングを見せますね。やはりメキシコはレベル高いですよ』
「GKのユニフォーム派手だなぁってなったけど、派手だけじゃないねー。ちゃんとセーブしてくるしー」
後方から見ていた弥一は相手GKが結構出来ると龍尾に話す。
「ありゃ結構な曲者タイプだな。今のセーブで多分あいつ乗ってくるぞ」
「日本で言えば岡田さんっぽい感じかなぁ〜?」
相手GKは調子に乗れば止めまくるタイプだと、2人は見ていて分かった。
「その前に1点どうにか欲しい所だねー……」
今回はリーグ戦、このまま点が動かなければ勝ち点1で終わってしまう。
初戦で3の方が欲しい日本としては厄介な壁で、弥一の目はメキシコのゴールを真っ直ぐ見据えている。
『照皇のシュート!ガーメッドが体を張ってのブロックで弾く!』
メキシコDFも守護神の活躍に刺激されたか、勝也から来たパスを受けた照皇が振り向きざまにシュート。
ガーメッドの左肩が弾くとボールは大きく左へ流れ、日本ボールのスローイン。
「どらぁぁぁ!!」
ボールを投げる番から雄叫びが出れば、クロスが蹴られたように球がメキシコのゴール前に高く舞う。
室が再び飛ぶと、今度はゴールを狙わず頭でエリアの中央、外側に落とすポストプレーを見せる。
そこに走り込むのは上がって来た影山で、右足のミドルを狙いに行こうとしていた。
「っ!」
此処はシュートさせたくないという気持ちからか、アドニスの右手が影山の背中を掴む。
「わぁっ!?」
シュート体制からガクッと崩れた影山はゴール前で転倒。
その瞬間に主審から笛が鳴らされる。
『メキシコにファール!チャンスになりかけた所へ影山にアドニスが後ろから掴んでしまった!』
『これ掴んでますね、イエローは……ああ、当然出ますよね』
主審はファールしたアドニスへ、イエローカードを掲げていた。
「リュウさん」
「ん?」
弥一は名前を呼びながら龍尾へと振り向く。
「此処で1点取るから守りきろうね♪」
そう言って陽気に笑えば相手ゴールへ小走りで向かった。
『日本、ゴール正面からのFKで得点チャンスを迎えて神明寺弥一が上がって来ました!』
『さぁ来ましたよ彼の見せ場が!今回はどう蹴るんでしょくかね?』
弥一がゴール前に来てキッカーの位置に着くと、メキシコの選手達は皆が小柄なDFへ鋭い眼差しで注目。
日本の事は無論調べており、弥一が厄介なキックをしてくる事も分かっていた。
「(曲げて落とすんじゃないか?)」
「(距離が近いから無回転の速い球は蹴り難いはず)」
「(横や上とか、あいつの技術なら平気で信じられないぐらい曲げるだろ)」
壁のメキシコ選手達は小声で打ち合わせ。
この局面なら弥一は壁の上や横を抜けて、鋭く曲げて来るだろうと意見が交わされる。
「(狙いは君だけどね?)」
弥一が目を付けたのは右から2番目の選手ホルヘ。
彼の心を読み、蹴る手段は既に決めていた。
始まる日本のFKにスタンドは固唾を呑んで見守る。
会場から多くの注目を受けながらも、弥一は助走を取って右足を振り抜く。
「!?」
上を越して来るだろうと思ってジャンプしたホルヘ。
その下をボールが通過していた。
地を這うような速いグラウンダーのシュートが急に飛んで来て、これまで好セーブを見せていたカディナは一歩も動けないまま、ゴールネットを揺らされる。
「やった先制ー!!」
飛び上がって喜ぶ弥一に勝也や他のイレブン達が駆け寄って行く。
U-20ワールドカップで日本の最初のゴールは小さなDFから生まれ、この得点にスタンドから割れんばかりの大歓声が巻き起こる。
詩音「はぁぁ!決めた神明寺先輩!」
玲音「初戦で決めちゃうなんて神過ぎる……!やっぱりスターだ……!」
摩央「予想通りのリアクションだな、あの兄弟」
彩夏「毎回同じ反応しますよね〜♪」
川田「弥一の活躍を見れば大体が興奮するから分かりやすいわ」
翔馬「ちゃんと背番号6のユニフォーム着て応援してるし」




