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強豪達が見守る前で見せつける今の強さ

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 2次トーナメント開幕の日を迎え、立見はその開幕戦からの試合で登場となる。



 相手は1次予選から登場し、支部予選を免除されているシード校の空川学園。攻守共にレベルが高く、去年は真島の前に惜しくも敗れている東京の強豪校だ。




「GO!GO!立見ー!」



 2次トーナメントの会場は広く、より多くの観客が収容可能となっている。立見の応援も規模が大きくなり、チアガールや吹奏楽部の応援もついていた。



 立見への期待が増している証拠だ。



「やっぱ女子からの、チアからの応援は嬉しいもんだよなぁ~。お、あの子とか可愛い♪」



 応援するチア達の姿に田村はその光景を眺めている。目当ての子を見つけたりと、分かりやすくモチベーションが上がっていた。



「チアに見蕩れてミスしやがったらケツ蹴り飛ばすぞ草太」



「まあ応援は嬉しいもんだからね、それも女子からとか」



「気持ちは……うん、俺もそれは否定出来ねぇわ」



 田村ではないが間宮、影山の二人も女子から応援されると、やはり男としては嬉しい。それが素直な気持ちだ。




「はーい、皆さんご声援ありがとうー♪」



 立見の応援席の前に弥一は現れ、笑顔で手を振って応えていた。



「神明寺君!今日もうちの孫と共にゴール守ってくれよ!」



 弥一へと応援席から立ち上がる重三が声をかけ、その隣に座る立江が「目立つからじいさん座って」と重三のシャツの袖を引っ張る。



「いやー、どうせなら相手ゴール一発ドカンと弾丸シュート行ってほしいなー」



「うむうむ、DFだからって守ってばかりじゃないしな」



「あー。機会あったら勿論狙いますよー♪」



 応援席に重三と共に応援するのは、中華料理屋に通う常連の年配客達。彼らもサポーターとして応援してくれている。




「神明寺ー!何時までアップやってんだ、早く来い!」



 遠くから間宮の声が聞こえ、弥一を呼んでいる。




「雷大きくなる前に戻りますねー、じゃ!」



「頑張れよー!」



 あまり待たせてチームの遅れが生じるのもよくない。弥一は最後に応援席へ声をかけてから、間宮の居る方向へと軽く走って戻って行った。










「どう見る?立見と空川」



 立見の応援席とは別で、観客席には他校の生徒も見に来ていた。昨年の選手権で東京代表となり、全国出場を決めた真島高等学校。


 観客席に座る主務を務める真島のサッカー部員、そして横に座るMFでキャプテン。チームの司令塔を務める黒髪の坊主頭、峰山健太みねやま けんたが両校の試合を眺めつつ真島の主務に尋ねる。



「空川が実力兼ね備えてますけど、前の試合でエースが負傷したのが相当痛いですからね。新鋭の立見は此処まで支部予選と1次トーナメント勝ち上がって勢いあってそれも5戦とも無失点、古豪の前川に競り勝ったりとクジ運だけで来たとは思えない」


「つまり空川の負傷がある分、立見有利と」



 空川はこの試合の前にエースのFWが負傷している。彼はチームの要であり、彼の抜けた穴は空川にとって非常に大きいと言わざるを得ない。



「確か立見は去年に要の一人が病気で亡くなったよな……そこから夏は欠場したけど選手権予選でベスト8。今年の新体制でこの成績、よく此処まで立て直せたなって敵ながら感心しちまうよ」



 立見には去年までもう一人、成海や豪山と共にチームを支えた要が居た事を峰山は聞いている。その要を欠いて精神的にも計り知れないショックがあったはずだが、彼らは奮起し、去年の選手権以上の成績を残さんと、この夏の東京予選に挑んで来ている。



 その原動力が要となってる成海、豪山の二人だけとは思えず、今日の試合で峰山は見極めようとしていた。









「真島さんもわざわざお越しとは、意外と立見って注目されてんのかね?空川目当てかもしれねーけど」



 遠くの席から偵察する真島の姿を見つけたのは、桜王学園の偵察隊。その中に冬夜の姿があった。



「冬夜、別にお前まで来なくても良かったのに」



「つれねー事言わないでくださいよ先輩ー」



「前言ってた立見の控えの奴がそんな気になるのか?」



 3年の主務に引っ付く冬夜に主務は気色悪いわ、と引き剥がしてフィールドの方へしっかり視線を向けた。ベンチ付近には軽く走る優也の姿が見えて、主務共々そちらへと冬夜も見る。



「そりゃあね、途中出場で全試合ゴール中とあっちゃ知り合いじゃなくても気になりますよ」



 同級生の幼馴染で今は敵同士。ライバルの姿を冬夜は静かに見て、そのサッカーをしっかり目に焼き付けようとしていた。










 2次トーナメントの戦いが今キックオフとなり、空川の攻撃から始まる。流石強豪と言われるだけあって、洗練された早いパス回しだ。



 再び司令塔の8番へと折り返される、そこに忍び寄る影山。突然詰め寄られ、気づかなかった空川の8番はボールをキープ出来ず、球は流れて間宮がこれを取った。




 間宮から影山、更に成海へと繋がり、攻守は一気に逆転して立見が攻勢に出た。



 成海へのマークが集中しようとしている。その前に成海は左サイドへとパス、受け取ったのはこの試合スタメン出場の武蔵だ。




 ボールを取り成海と豪山に注意が行っている分、武蔵のマークは甘く、左サイドをドリブルで走る。



 高いクロスを豪山に上げた。このボールを頭で落とすと、そこに落ちると見ていたのか成海が絶妙なタイミングで走り込んでダイビングヘッド。



 DFの寄せが間に合わず、キーパーの伸ばした手もボールに届かずゴールへと入る。




 武蔵から豪山、成海と守りからの速い攻めで、立見が強豪空川相手に開始早々先制点をもぎ取った。



 立見の応援席は先制点が決まると喜び、大いに盛り上がり声援が大きくなる。



 成海は立見の応援の前に豪山達と共に行き、喜びを分かち合う。




「先制点ー♪さあさあ守備の皆さん、6試合連続無失点行くよー!」



「分かってるって、お前も緩めんじゃねーぞ!」



 1点が立見に入ると弥一は守備陣へ声をかけていき、間宮も弥一へと気を抜かないように注意する。勿論守備はこの試合も無失点を狙っている。


 相手が強豪空川だろうと、エースの負傷があってもなくても、やる事に変わりは無い。









「空川、エースが居ない影響はあると思うけど動きは悪くないですよね」



「ああ。新設の立見と違って向こうの選手層は厚いはず、1人エースを欠いたぐらいじゃ崩れないだろ」



 2校の試合を偵察していて、空川の動きは峰山と主務の後輩達から見ると、共に動きは悪くないと意見が揃った。にも関わらず今押しているのは立見。



 空川はこれ以上の追加点は許さんと、必死のディフェンスでゴールを守っていく。




「去年は主に成海と豪山、全国クラスの二人を軸に立見のサッカーが展開されてたよな」


「二人に頼ってたのもあって抑えられたら脆い所あってそれで負けたりしてましたよね、けど今年はその二人だけじゃない」



 峰山達の目は守備陣へ向けられる。



「DFのリーダーである間宮、右サイドバックの田村。あいつらのゾーンがかなり固い、それにその前に居る1年の川田が高さあって守備が巧くガタイ良いから競り合いも強い。後は中々気づかれにくいけど影山が色々と良い仕事をして攻撃でも守備でも機能している。あと……」






「いっただきぃー♪」




 弥一が相手から出されたスルーパスをインターセプト。これで既にこの試合3本目だ。






「……結構良いパスだったように見えるけどな、何であそこまであの小さいDFは読めるんだ?」



「明らかにDF、それもセンターに不向きな体格で小さいですよね。それに補うような読みの鋭さ、今までの相手は多分彼の見た目で侮って読みの鋭さの前に攻撃が沈黙してしまった……といった所ですか?」


「この5試合を空川の方も見てきて此処であのDFを侮る、なんて事は無いはずだよな。にも関わらず空川を手玉に取ってる、あいつ見かけによらず相当の実力者と見て間違い無いかもしれない」



 試合を見つつ峰山と主務による会話が続き、弥一も警戒しなければならない一人だと真島の間で決定となった。あの異常なインターセプト率を見れば嫌でもそうなるだろう。



 そして弥一が心を読める、当然ながら彼らは全く考えもしていない。






 川田から田村へボールが渡り、サイドを駆け上がる。と見せかけて中央の成海にパス、すぐに成海は右サイドへと折り返し、走り込んでいた田村が再びボールを受け取れば、かなり大きなワンツーとなる。




 右から右足で正確な低いクロスを上げ、この速いボールに豪山は右足ボレーで合わせた。



 キーパーの反応が遅れ、慌てて足を出すも、その足元をすり抜けてゴールに入る。




 追加点が決まり吠える豪山の元に、立見チームが集まり共にゴールを喜んだ。



 応援も益々勢い、そしてノリに乗って歌い続ける。





 2-0。前半終了間際に大きな1点が入りハーフタイム、空川にとっては痛恨の失点だ。





 後半。空川も反撃へと出るが此処でも弥一のインターセプトが光り、更にオフサイドにかけられて攻撃のチャンスが貰えない。




 思い切ったロングシュートを放つも、立見GK大門が正面でしっかりとキャッチしてボールを抑える。





 このまま時間は流れ後半30分、立見ベンチが動く。



 優也がユニフォーム姿となって、フィールドに入ると一際大きな歓声。此処まで予選全試合ゴールを決めているスーパーサブにして、スーパールーキーの存在をもう皆が認識している。



 立見の無失点と同時に優也の連続ゴール記録も続いているのだ。彼にかかる期待は大きい。





 此処まで続けて立見の攻撃を受けている空川DF陣にとって、このタイミングでスピードスターによる速さで掻き回されるのはかなり嫌だろう。



 この10分間で優也はきっちりと仕事をする。




 ボールを受けた武蔵は2トップとなった前線へと、ダイレクトでボールを浮かせてDFとキーパーの間のスペースを狙って蹴る。優也がいち早くスタートを切って、前に居たDFを追い越していく。迫り来るキーパーに対して、開いていた股の間を右足のシュートで通し、ボールはゴールにそのまま転がっていった。




 3-0



 またしても優也がゴールを決めて、会場のボルテージは最高に達していく。脅威の6試合連続ゴールだ。








「ふうん……」



「どうだ?ライバルの活躍にやっぱメラメラ燃えてきた?」



 冬夜の前でゴールを決めてきた優也。先輩の主務はこれにやはり冬夜は燃えてきたのではと訪ねた。






 すると不敵に笑った冬夜は答える。






「いや?俺の方が速いなと思いましたね、昔も。今も」







 優也のゴールが決まると空川はこれで希望が絶たれたのか、ガックリと肩を落とす。試合はこのまま終了。



 エースが負傷で欠いていたとはいえ、攻守で圧倒の立見が強豪空川を相手に勝利。2回戦へと駒を進める。



 東京の各強豪も立見要注意だと、いよいよ新設サッカー部も無視されない所までやってきた。




 立見3-0空川



 成海1


 豪山1


 歳児1

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