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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
第4章 夏を目指して予選を戦う

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原石探し

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

4月17日 月曜日




 夏の大きな公式戦、インターハイに向けて八重葉との試合から2日。



 1日休んだ立見サッカー部は朝練から始動して、決まった時間内に基礎練習やボールを使った練習を織り交ぜる。放課後は実戦により近い練習、ミニゲーム等に取り組む。




 公式戦まで僅か5日しかない。



 かと言ってフルに毎日練習では効率が悪い為、試合前日は完全休養が確定している。



 なので本格的な練習は3日間だけだ。




 短い期間の合間に量よりも質の良い効率的な練習の方が良く、無理に量を増やしてもオーバーワークとなってしまい、怪我の恐れがある。



 それこそ去年の間宮の二の舞になりかねないだろう。



 八重葉戦で選ばれなかったメンバー達は次こそ自分が!という思いで励み、紅白戦でレギュラーに挑んでいく。




「(歳児、良い所走り込んでる!)」



 中盤の1年がボールを持つと、優也が空いてる左サイドのスペースに走り込んでいく姿が確認出来た。



彼のスピードなら縦を独走して中央へ切り込めるはずと、空いている場所へパスを出せば、そこを目指して優也は走り込む。




「(甘ぇよ!)」


「!?」



 だが、スペースはわざと空けられたものだった。スピードある優也なら狙うと、速さで対抗出来る田村はパスを誘っていて、1年から出されたボールを奪い取る。



 何時までも田村は優也にやられっぱなしではない。



 単純なスピードだけじゃなく、こういった駆け引きもまたサッカーだと、行動で田村が優也に先輩として教えていた。



 スタメンを狙う部員達の挑戦だが、成海と豪山を中心としたレギュラー組は簡単には譲らない。



「わっ!?」


 身体を後ろ向きにしてボールをキープする成海に、後ろから奪いに来ているDF。これに対して体を回転させ、成海は奪いに来たDFをターンで鮮やかに躱す。




 そこへフリーになっている豪山の姿を見逃さず、成海は左足でパスを蹴る。シュートを蹴りやすいように考えられたラストパスで、長い付き合いの相棒同士は互いに分かっていた。



 何処にどう出して来るのか、どう動いて来るのか。




 豪山の右足のシュートの振り抜きはDFの寄せも間に合わない。シュート力がサッカー部でNo.1を誇る豪山のシュートが、キーパーの伸ばした手を掻い潜って、豪快にゴールネットを揺らした。




「おー、豪山先輩らしい豪快なパワーシュートだぁ~」



 成海から豪山と、立見サッカー部の誇る名コンビが決める所を眺めていた弥一は、大門の背中を押して柔軟体操に付き合っている所だ。。



「神明寺君。俺の練習ばかり付き合ってもらって悪いけど大丈夫? 自分の練習とかは」



 何かと付き合って練習している事が多く、キーパーに適した練習法を教えて手伝ったりしていた。大門の立場からすれば相当助かっているが、弥一の練習は大丈夫なのかと心配になってくる。



「してるよ?」


「え?」



 弥一は練習してると言うが、大門の背中を押しながら紅白戦を見てるだけだ。



「フィールドの中より外から見ればよーく分かる事あるんだよ。誰がどういうのが得意で苦手なのかがさ」



 成海のパスの出し方と受け方。豪山の走りにシュートの姿勢。影山の動き出し。間宮の守備対応。田村と優也のスピード。



 それぞれの動きを弥一は見ていた。




「んー、中盤がちょっと力不足かなぁ」


「え? ちょ……」


「はいはい、柔軟集中。大事なキーパーの怪我は一番困るよー」



 先輩に聞かれたらどうするんだと大門は彼の言葉に慌てたが、弥一は特に気にする様子も無い。



 この前の八重葉戦で立ち直らせる為とはいえ、先輩達へ暴言にも当たるであろう弥一の言葉。全員が彼を認めた訳ではなく、未だに気に食わないと思うのも居るだろう。



 そういった事が先輩達に聞かれて騒ぎになるのは駄目だと、公式戦の前に避けたいと思った大門だが、今の弥一の発言は幸い誰にも聞かれてはいなかった。




「あの、力不足って? 中盤には絶対的な司令塔の成海先輩に、弥一君も厄介だと思っているシャドウボランチの影山先輩も居るし。むしろ中盤良いと思うんだけど」


「だからだよ」


「え?」



 柔軟を続けつつ大門は訪ねると、背中を押している弥一は彼の問いに答えた。



「絶対的過ぎて成海先輩には毎試合厳しいマークがつく。それに代わって影山先輩がある程度ゲーム作れるけど、いくら影が薄いからって90分間ずっと潜められる訳じゃない。シャドウボランチはここぞという1回に仕事してこそだよ。それで成海先輩はそのマークによって体力の消耗が激しくなる。試合が進むにつれてコンディション崩して、あの人崩れたら中盤はほぼ終わると言ってもいいかもしれないね」



 成海と影山。中盤の攻守に欠かせない二人だが、弥一からすれば弱点となっている。大門は何時の間にか弥一の言葉を黙って聞くのみだ。



「中盤が崩れたら、それで負担がかかるのは守備陣だね。いくら鉄壁を誇っても何度も攻められたらしんどい。中盤でボールを支配してもらって息継ぎとかも無しじゃ、いずれ崩れて最悪失点。最後の砦のキーパーも何処まで粘れるか分からないからね」



 中盤が崩れ、そこから守備も崩れる。ボールをキープできなければ攻撃を受け続けてしまう。失った1点で試合が終わるかもしれない。1点取られて、こっちが1点も取れなければ決勝点となって負ける。絶対に避けたい最悪のケースだ。



 大門は弥一が何を言いたいのか伝わって口を開く。



「中盤にもう一枚ゲームを作れる、成海先輩の他にこいつは要注意だと思わせて引き付けられるようなのが欲しいと」


「そういう事、分かってるねー♪」



 弥一は大門の言葉に彼の背中を押しながらも陽気に笑った。



 中盤に光と影の二人は居る。そこにもう一つ、新たな光が来てくれれば理想的だと。




「興味深そうな話、してるね」


「!? く、倉石先輩……」



 二人の背後から京子の声が聞こえて、先輩マネージャーの出現に大門は慌ててしまう。何処から話を聞かれたのかと。



「あの、何処から聞いてました?」


「神明寺君の長い説明が始まる頃から」



 中盤が力不足。そこは聞かれなかったようだが、弥一の言ってる事を京子は全部聞いていた。



「中盤については私や彼らも考えていた。もう一枚欲しいと」



 そう言いながら、京子の視線はフィールドで紅白戦を行う選手達へ向く。この中に中盤に適した存在が居るのかもしれない。





「っらぁ!」


「うわ!」



 間宮の激しいプレスによって、ボールを零した優也と2トップを組む1年のFW。セカンドとなった球を影山が拾って前へ繋ぎ、この攻撃を凌いでいた。




「(はぁ……間宮先輩のプレッシャー半端無いなぁ、容赦無いし下がろ)」



 間宮のプレッシャーに負けて萎縮したのか、1年のFWは勝てる訳がないからマッチアップを避けようと、前線から中盤へ下がっていった。





「間宮先輩、流石と言うべきか。FWを退かせちゃったよ」



 その様子を大門が見て口にする一方、京子は下がっていくFWを見た。




「……1年生の上村武蔵うえむら むさし、高校生レベルで言えばシュート力は並。ジャンプ力は若干高く、スピードも平均より少し上ぐらい。スタミナは部内で上位で当たり強さは特に無く弱い方。ドリブルテクニックも特に突出された物はなく、173cmと平均的な身長でポストプレーは得意としてない」



 部員の事はマネージャーとして頭に入っている。1年FWは若干長めの金髪で、上村武蔵という名前は弥一や大門も当然知っていた。



 かの有名な江戸時代初期の大剣豪、宮本武蔵と名前の所が同じだと摩央を加え、3人で話したものだ。




 武蔵はFW希望で入部してきた立見サッカー部の1年。中学からサッカーはやってきたが、目立った実績は無い。その能力は京子の言うように、ストライカーとして突出した物が無かった。



 豪山のような上背やパワーが無ければ、優也のようなスピードも無い。


 FW希望の本人には残酷だが、武蔵はおそらくFWとしては通用はしないだろう。



通用しても格下の相手ぐらいで、中堅や強豪クラスとなれば相手の守備も堅く、並のFWレベルで得点を奪うのは難しくなる。




 名前は立派だが、実力は残念ながら並かそれ以下だ。



 京子や成海達が彼をFWとして採用する可能性は限りなく0に近い。




 そんな中で弥一は真っ直ぐ彼を見ていた。




 かの有名な剣豪と同じ名を持つ人物を。

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