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高校サッカー界の王者

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 フィールドに立つ両チーム、立見と八重葉。この2チームによる練習試合が始まろうとしていて、立見を応援する声はやはりホームの高校なので多い。


 アウェーとなった八重葉はその声を気にする様子など全くなく、それぞれが位置につく。



 立見のユニフォームはダークブルー、GKは紫。



 八重葉のユニフォームは白、GKは赤。




「守備は主に照皇を注意、見過ぎて他がフリーにならないようにな」


「っす」


 円陣を組んで成海はDF達に、照皇を中心とした攻撃陣に注意するよう伝え、間宮にそれぞれの守備陣が頷く。


「まずは立ち上がり集中してくぞ!」


「おう!」


 最後に声を出して円陣は解かれ、立見もそれぞれ位置についた。



 立見高等学校  フォーメーション 4-5-1



          豪山


           9


          成海


 鈴木       10       岡本


  8                7


      影山   近藤


      14    13


 後藤   川田   間宮   田村


 15    16    3     2


         安藤 


          1



 八重葉学園 フォーメーション 4-4-2




      照皇   坂本 


      10    18


 田中   村山   海道   山岸


 16     7    15    19


 戸川   大城   皆本   川木


 21     5    13    20


        下川


         12






 ピィーーーッ




 審判の笛で立見ボールからのキックオフ、試合は開始されて豪山が軽く蹴って成海へと渡す。



 その直後、立見の選手に対して素早い寄せを八重葉が見せる。




「(っと!流石に速いな)」


 成海へと向かっていた八重葉のMF海道に対し、成海はヒールで後ろへ下げると影山がそのボールを受け取り、その後すぐに右へと大きく浮かせて蹴り出す。そこに上がって来ていた右サイドの田村。




 田村にこのボールが渡る前に八重葉のMF田中が頭で弾き、タッチラインへと逃れて立見ボールのスローインとなる。



 田村がスローインのボールを投げ、成海がこのボールを受けると後ろに田中が張り付いている。



 これに成海は中々前を向く事が難しいとすぐに判断して、右を走る田村へと瞬時にパスを返す。そこに詰め寄って来る八重葉の左サイドバックの戸川。



「(もう詰めて来てやがる、けど速いのは分かってんだよ!)」


 詰めの速さは想定していた田村、パスをトラップしていたらやられる。田村は右足でそのままエリアへと蹴り出しクロスを上げた。




 ダイレクトで上がったクロスは高く上がりゴール前、高さのあるFW豪山の待ち構える所へと行った。




 高いボールに対して豪山はジャンプ。それと同時に相手のDFもジャンプする。




「ぐっ!?」


 相手DFとの競り合い。長身でガタイの良い豪山だが、この競り合いに負けて頭でクリアされる。







「高さに強い豪山君が競り負けてる、なんかあのDF強すぎて高校生!?て思っちゃう!」


 ベンチで試合を見守るラッキー先生こと幸。豪山がヘディングで競り負けているのを見て驚いていた。豪山が高さで負ける事は、手の使えるキーパー相手以外なら早々負けはしないのだが、相手DFはその豪山相手に高さで勝ったのだ。




大城鉄二おおしろ てつじ、身長190cm体重89kg。高校サッカー界屈指の大型CBセンターバックで八重葉の3年キャプテン。鍛え上げた屈強な守備でゴール前に鍵をかける、だそうです」


 スマホで大城についての紹介ページが検索で出て、摩央はそれを読み上げ幸へと伝えていた。主務として相手についてこうして調べる事は重要だ。




 短髪の黒髪で豪山や大門を超える大柄な身体、この大城が八重葉の守備を支える要となっている。守った後も味方にコーチングする姿が見られた。



「戸川、田中!相手の右強いぞ、注意していけ」



 成海からの田村の上がり、そこからのクロスボールは厄介だと感じた大城は二人へと声をかけている。





 再び立見ボールのスローイン。今度はさっきとは逆のサイドから投げる事となって、立見のMF鈴木がボールを投げ入れると近くでボールを受け取る成海。




 そこに後ろから伸びて来る足、成海の開いた股の間から足を伸ばしてボールに行っており、成海はこれにキープ出来ずボールをこぼす。


 これを海道が拾って村山へとパス。先程巧みな守備で成海のバランスを崩させたのは村山だ。




 村山からボールを奪おうと迫る鈴木、村山は右へとドリブルに行く。この動きが見えて鈴木もそれを追う。



 だが此処で切り返し、右サイドへ行くと見せかけて左、中央へと切れ込んで行った。完全に釣られた鈴木、ふられつつも村山を追う。



 追いつかれる前に村山は前線へスピードあるパスを右足で蹴る。そのパスの前には照皇、後ろにはマークにつく間宮が張り付いている。


「(前だけは向かせねぇ!)」


 照皇が凄いプレーヤーというのは当然間宮も分かっている、前を向かせてシュートでもさせれば距離が遠かろうが、ゴールを奪われる危険性は充分あるはずだ。



 ボールを奪うとまでは行かなくとも、前を向かせるような事はしないと照皇へプレッシャーをかけに行く。



 そのまま照皇はボールを受ける、かと思いきや彼はトラップせず右へとパス。そこに上がって来ていた八重葉DF皆本が前を向いて、右足を勢いよく振り抜きシュート。




「(やべ!?)」


 照皇のマークに気を取られ、DFが何時の間にか上がっていた事に気づいていなかった間宮。照皇はDFの上がりがしっかり見えて、自らを囮にしてシュートチャンスを作っていた。




「っ!」


 皆本のシュート、これに影山がコースに飛び込んで体を張りシュートブロック。大きくボールは弾かれてタッチラインを割るとエリアの目の前。右からのスローインだ。



 ロングスローからゴールを狙えそうな位置、そこに皆本と入れ替わるように八重葉のキャプテン大城が上がって来た。190cmの長身、これでヘディングシュートが苦手な訳が無い。現に大城は頭での得点がいくつもあり、セットプレーで彼の高さは相手からすれば脅威である事は間違い無いだろう。



「5番マーク!」


 GKの安藤が大きな声でコーチング。大城に対して1年DFとして起用された川田が近づく。八重葉の高さに対抗する彼の見せ所だが相手は190cmの大型選手、決して小柄ではないはずの川田が大城と並ぶと小さく見える。





「ん?」


 その時ベンチから見ていた弥一は気付く。エリア内に居る照皇が外へ出て行く姿が見えたのだ。他の大城を中心とした長身選手はエリア内に数人居る。




 高さに対抗しようと、此処はFWの豪山も自軍ゴール前まで戻り守備に専念。立見はゴール前の守りを固めてきた。




 最も高さのある大城はゴール前の中央に待ち構えている。




「(普通に考えればあれだけ高さある大城って人の頭に合わせるかな、あれは来ると分かってても止められない確率の方が高い。シンプルイズベストってね)」


 ベンチで退屈そうにしながらも、弥一は八重葉がしてきそうな攻撃について考える。分かっていても止められないであろう高さで放り込み頭で合わせる。


 ロングスローで来るとするならこれだろう。後は何故か照皇がエリアを出て行ったのが気になるが。





「(あいつ、なんでエリアから?まさかマークしてる俺を此処から引っ張り出そうと?)影山ー!」


 その動きはマークしていた間宮も気付いた。しかし高さのある間宮までエリアから出る訳にはいかない。照皇のマークは大事だが、それでは高さある選手にやられる危険性がある。



 おびき出す罠かもしれない。間宮は影山を呼ぶと、手で自分はエリア内守るから外の照皇マークは任せる、と伝えた。


 これに影山は右手親指を立てて了解と返す。




「(けど、結構離れたな。此処までボールがこぼれてくると読んでのポジショニング?)」


 エリアから出た照皇はゴール前から距離を結構とり、セカンドボールが此処まで飛んで来ると計算して、そこで構えるのかと影山はマークする照皇を見ていた。




 ボールを投げるのは村山、助走距離はとっておりロングスローの構えだ。これにゴール前の立見の面々はロングスローに警戒を強める。



「(え!?)」


 その時、影山は急に照皇がダッシュで走りゴール前へ戻っていく姿に驚く。これに影山も追いかけるが、照皇の足が勝っていて追いつけない。




 村山は助走をつけて走り、両手で持ったボールを勢い付けて投げた。ボールはゴール前へ伸びていき、これに大城は飛んだ、そして川田も飛ぶ。



 空中戦、大城の方が高く川田は届いていない。身長だけでなくジャンプ力の差まであった。




 頭で狙って来ると、間宮もキーパーの安藤も警戒していた。




「!違うよー、大城じゃな……!」


 その時これに気づいていたのは立見の中で弥一ただ一人だった。味方にベンチから声を出して伝えるが、既に遅かった。




 大城の高さを活かしたヘディングが来る、そう思っていたら大城は撃たずに、ボールは更に奥のファーへ流れる。まさかのスルーによって、大城の頭を警戒していた立見の面々は騙された。




 このボールに対して走り込んでいたのはゴールから離れたはずの照皇、既にボールへ詰めており照皇はこのボールに合わせてジャンプし、宙に舞う球を右足で当てる。



 完璧にタイミングが合い、正確に捉えたボールは安藤の守るゴールへ弾丸の如く飛び、豪快にゴールネットを揺らした。



 走り込んでからのジャンピングボレー。このシュートに安藤は反応出来ず一歩も動く事が出来なかった。



 前半11分、村山のロングスローから照皇のゴールで八重葉が先制する。




「くう……!あれだけ照皇に注意っつっといて結局あいつにやられちまった!」


「ごめん!スピードで離された」


 間宮はこの1点を止められず悔しそうにし、影山は申し訳なく謝った。




「飲まれるな!切り替えてけ!」


 下を向きそうな雰囲気が漂う中で成海は手を叩いてチームを鼓舞。





「まだ序盤の1点だけ!皆焦らないでー!」


 幸もベンチから声をかけて励ましている。まだ前半で巻き返せるチャンスは王者相手とはいえあるはずだと。









「(あーあ、僕の出番あるのかなこれ)」


 弥一は自分の出番はこの試合あるのかどうか、今の彼は試合を見守る事しか出来ない。



 彼の視線の先にはゴールを決めた照皇。



 二人の勝負はこの試合であるのか……。

宜しければ、下にあるブックマークや☆☆☆☆☆による応援をくれると更なるモチベになって嬉しいです。


サイコフットボールの応援、ご贔屓宜しくお願いします。

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