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心を掴むスーパーシュート

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

「ふーん、此処で自主トレしててあの子達と知り合ったと。何か漫画みたいな展開だよねぇ、それ」


「そうかな?」


 目の前でFC桜見の子供達がサッカーをしているのを見つつ、コート外から弥一に大門は桜見と知り合ったきっかけについて話す。弥一は飲みかけていたペットボトルのスポーツドリンク片手に、大門と子供達の出会いにコミックのような珍しい出会い方だとケラケラ笑っていた。



「教えるのってやってこなかったから良いのかなって思ってたんだけどね。教えるのも結構勉強になるし、教えてるつもりがこっちが教えられる事もあって新鮮で楽しいんだ」


「ふーん」


 FC桜見のサッカーをしている光景を見守る大門。それを見て弥一は案外コーチ役とか向いてるんじゃないかと、何となく思った。心を読めるが未来予知までは出来ない。ただ彼の将来こういうコーチというのは少し見えた気がする。




「っと!?」


 子供達とサッカーをしてた優也はボールをキープしていた所に、数人がかりで来られてボールを奪取される。



「おお、さっきの良い胸トラップといい彼ら結構やるんじゃないの?」


「あの子達はレベル高いよ。FC桜見って全国出場経験のある少年サッカーの強豪チームだからね」


 たまたま出会ったサッカー少年達が、実は全国大会に出る程の強いチーム。大門からそれを聞かされると益々漫画みたいだなぁと思い、スポーツドリンクを一口飲む弥一はFC桜見のサッカーを見ていた。




「ねー、そこのちっちゃいお兄さんも入ってよー」


 一人の子供が弥一へと向かって参加してきてと声を張り上げて伝える。どうやら先程みたいな技を見たいと望んでいる様子だ。



「んじゃ、リクエストにお応えしてちょっくら行って来ようかな~」


 ペットボトルをベンチに置いた弥一は上着の黒いパーカーを脱ぎ捨て、コートの方へと入って行く。




「お前相手なら、遠慮はいらないな!」


 弥一の姿を見れば素早く優也がボールを持った所を詰めて来る。さっきまで子供相手に抑えてたスピードとは全然違った。


「それ、こっちのセリフなんで」




 トンッ




 向かって来る優也に対してループでふわりと浮かせ、優也の頭上を超えていけばそのまま子供達へのパスとなる。



「凄いループ!あんなとっさに出せるんだー」


「あの兄ちゃんもすげースピード!速ぇよ!」


 高校生同士のサッカーに外から見ているFC桜見の子供達は大はしゃぎ。




 弥一のパスからチャンスとなってFC桜見のFWがシュート。右へと飛ぶ枠内のシュートに対して、青いキーパーウェアを着たFC桜見のGKが横っ飛びで飛びつき、掌に当てて弾きゴールならず。


 決まっていてもおかしくない1点ものを止めた見事なスーパーセーブだ。



「良い!今の素晴らしいセービングだったよ!」


 これには大門もコート外から同じキーパーとして賞賛の声をかけた。



 ボールは大きくクリアされ、転がったボールは弥一の所まで来る。




「(よーし、せっかくだから!)」


 転がってきたボールに対して弥一は前を向いた状態で、そのまま思いっきり右足を鋭く振り抜く。少年達に見せてきたふわりとしたボールではなく、強めに撃たれたロングシュート。


 ボールは大きく浮いてゴールを超える勢いだ。




 これはバーを超えると誰もが思う中。



「(え、あれって……!)」


 その中で大門一人がボールにかかる回転を見て分かった。弥一の蹴ったボールがどういう物なのかを。




「(!?お、落ちる!?)」


 FC桜見のGKは大きく超えそうなボールが、自分の守るゴールへと急激に落ちてくる事にビックリしていた。そのシュートへ飛びつくも、コースはキーパーの取りづらいとされるゴールの右上隅。


 手を伸ばすが届かず弥一の放ったロングシュートは鋭く落ちてゴールネットを揺らした。





「いえー♪ロングドライブシュート大成功ー♪(あぶな、今のドライブに反応してくるんだ。あのキーパー優秀だなぁ)」


 思い通りのシュートが撃てて弥一はVサイン。ただ内心ではFC桜見のGKに反応されて止められそうになった事に、少しひやっとしていた。一歩も動けず呆然となるのかと思えば、予想外にキーパーのレベルが高かったようだ。



「すげー!何今のドライブ!?」


「ねえ!どうやんの!?どうやんの!?」


「教えてー!」


「おわー!?」


 Vサインを決めた弥一の元へ、FC桜見の子供達が一斉に弥一へと詰め寄って今のドライブシュートについて教わろうとしている。



 スーパーゴールを一発決めた事で、弥一は子供の人気をかっさらっていた。




「あー、教えるから教えるからー。一回クールダウンといこうか諸君♪」


 ドライブシュートで盛り上がる子供達に対して落ち着くようにと弥一は伝える。





「子供相手にあんなドライブシュート、あいつ意外と大人気ねぇな」


 自分の方では本気のスピードを出さず加減していた優也。それとは対照的に、小学生相手に本気のロングドライブシュートを放った弥一。


 そこまでするかと優也は皆へ今のシュートを教えている弥一を見て、小さくため息をついた。


「凄いな、今のドライブ……あんな鋭く落ちるのは実際見るのは初めてだよ」


「俺もだよ。俺の中学でああいうの撃てた奴はいねぇ」


 大門は優也へとタオルを差し出すと、優也はそれを受けとり軽く汗を拭く。二人とも弥一の撃った高レベルのドライブ、見た事あるのはテレビやネットぐらいで現実で見た事は無い。


 あそこまでのドライブシュートを撃っていたのは、互いの中学のチームや対戦相手にもいなかった。



 あれはプロが撃つようなシュートだ。



「縦回転入れるだけじゃないよー、普通のシュートより深く踏み込んでー」


 高校1年にして既にそんなシュートを撃つ事を可能としてる弥一は、マイペースにシュートに挑戦する子供へとアドバイスを送っていた。




「(あれだけ守備も上手いし、体格に不安はあるけど彼がその気になれば日本の他の強豪チームとか、そのままイタリアに残ってビッグクラブ入りも狙えるかもしれなかったのが……何で彼はわざわざ新設のサッカー部の高校に来たんだろ?)」


 弥一のサッカーとしての力を思えば、立見以上の強豪チームでもやっていけそうに思える。それが何故立見のような創部数年程のサッカー部の高校に来たのか、大門はそれを不思議に思った。



 なんだったら弥一の方が余程漫画っぽい感じだ、というのは本人には内緒。





「で、後はマリーシア。いかに狡賢くやれるかも重要でー」


「待った待った神明寺君!そういうのはまだ教えなくていいから!」


「なんでー、世界じゃこれぐらいから使うの当たり前だし日本サッカーに一番足りないのにー」


 その後に弥一は子供達へといかに狡賢くやるかを教えようとしていたが、それは早いと大門に止められ、この講座は幻で終わる。







「今度の八重葉との練習試合頑張れー」


「おおー」


 子供達とサッカーを楽しみ、時間は昼前を迎えて子供達は昼食の為、此処で家へと帰宅。別れ際に弥一達に八重葉との練習試合を応援してもらい、小さなサッカー少年達のエールを受けつつ3人はFC桜見を見送った。




「二人ともお昼どうするかとか決めてる?」


「いや、特には……」


「僕も。どっか美味しい店でも行こうかな、それかスーパーで済ますか」


 大門に昼はどうするかと聞かれると弥一も優也も特にそれは決めてはいない。




「それならうちとかどうかな?家に連絡したら是非連れて来なさいって」


「大門の家?……いいのか?」


 大門家へと誘われ、優也は急に高校生二人も家に行って昼飯を作ってもらうのは大変な負担だろうと、遠慮しようとしていた。


「連れて来なさいって言ってんだから、むしろ行かないと失礼じゃん?行こう行こうー♪」


「お、おい」


 遠慮しようとしてる優也とは逆に、弥一は大門家に行くつもりで昼をご馳走になる気満々だ。ペットボトルのスポーツドリンクを飲み干せば、専用のゴミ箱へと捨てて足取り軽く先を行く。



「よし、じゃあ行こう。って神明寺君!上着忘れてるよー!」


「あ、ヤバ」


 弥一は黒いパーカーを脱ぎっぱなしにして忘れたまま移動しようとしていた。これに大門が気づいて声をかけると、置いていた場所へと取りに行って再びパーカーを着る。



 その姿はあのスーパーシュートのロングドライブを見せたプレーヤーとは思えなかったが、小学生チームはあの一瞬を忘れはしないだろう。

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