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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
第2章 いきなり強豪と練習試合

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1年の奇襲と悪巧み

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

「じゃあボールは白チームからで開始」



 弥一、間宮のチームを代表する両キャプテンでコイントスをした結果、ボールを取ったのは弥一の居る1年の白チーム。


 センターサークルに優也ともう一人が立ち、キックオフの準備は整う。




「ん?」



 その時、センターDFの位置についた間宮が1年のフォーメーションを見て気づく。中盤の方にやけに人数が多く、後ろのラインは弥一を入れて3人だ。



「(3人……3-5-2。いや、3-6-1か?)」



 3人のDFなら3バックなのは確定していて、間宮は二つの内のどちらかでフォーメーションで組んでいると見ていた。



 どちらにしても中盤が厚めのポジションになっている。



「(まさか即席でフラット3とかやる気じゃないだろうな?)」



 フラット3



 3人のDFが横一直線で並び、ゾーンで守ってDFラインの上げ下げが鍵で、相手のFWをオフサイドの罠にはめられる。かの有名な日本代表もこれを採用していた。



 即席のチームが出来るような事ではなく、フラット3の導入は非常に難しいとされている。



 いくら弥一がイタリアで、どんなに凄くなろうが無理だ。



 間宮はフラット3の考えを捨てて前を見据える。




 1年チームのキックオフから試合は開始。最初に優也が軽く味方へボールを蹴り、1年チームは各自動き出す。



「あ?」



 試合前に優也のマークを任された2年で一番の速さを持つ田村。前線に上がってくるであろう彼へ張り付こうとするが、優也は中盤付近で止まってFWの位置まで上がって来ない。



 代わりに前線に居るのは1年で大門の次に大柄な男子。180cmの間宮より若干大きく見えた。




「(中盤か……どっちにしてもこいつは厄介だよな。マークっと)」


 田村は前線に来ない優也を意外と思ったが、すぐに優也へ張り付いて作戦を遂行。



 中盤でパスを回していく1年。そこに弥一が加わって出されたパスを受け取る。




 試合開始前に全てはあらかじめ作戦で決められていた。



 時は少し遡り、紅白戦の開始前。





「フォーメーション3-6-1で行く。歳児もまずは下がって」


「俺もMFやれって事か?」


「相手の先輩達は歳児のスピードを知ってて警戒されてる。速さについてこれる人もマークに付けそうだし」



 まるで歳児にマークを付ける事を最初から分かっているように弥一は説明する。



 事実、彼は向こうで作戦会議をしている2年の心を読んだ訳だが。



「それだけ動けて更に抜群のスタミナ、中盤で速いプレスによるプレッシャーかける方が今は闇雲に走って体力消耗するより良いと思うよ」


「けどFWはどうすんだ? 歳児が中盤行ったら……」


「そこは背の高い君」



 優也以外に1年でFWが務まりそうな選手を皆が考えていた時、弥一は一人の人物を見上げていた。



「え、俺?」



 弥一に見上げられた人物は身長が183cmの長身。ボサボサの茶髪のこの男子は川田保(かわだ たもつ)。


 1年の中では大門に次ぐ大柄な男子だ。



「君がFWやって前線で体張ってほしいんだよね。大門に匹敵するぐらい体格良くて身体強そうだしさ」


「えええ~? 俺FWとかやった事無いんだけど。ボランチとかセンターDFとかばっかりで、それに中央行ったら相手はあの間宮先輩だろ? 俺で勝てんのかな……」



 中学時代の間宮の実績を知っているようで、表情から川田の自信は無さそうに見える。身長や体格だけなら互角だが、踏んできた場数が違う。間宮と違って川田はベストイレブンに選ばれるような実績が無い。



 加えてFWもやった事がなく、無論シュート練習などはしているが、DFや守備的MFを任される事が多かったので攻撃より守備の方が得意だ。



「うん、確実に間宮先輩は来るだろうね。前線にこれだけ上背のあるFWが来たら絶対に目立って無視は無い。ちなみに川田だっけ。君がFW経験無い事、立見の誰かに話したりした?」


「それは別に話してないけど……」


「だったら先輩達はまだ知らない訳だ。君がFWを出来るのかどうか」


「あ!」



 弥一の狙いが分かった気がして川田は声を上げた。2年の先輩達は弥一や優也にばかり注目が行って、他の1年についてはそこまで注意が向いていない。



 そんな状態ならば川田のストライカー経験があるのか分かるはずが無い。


 未知数の長身FWが前線に来たら、間宮はそこにも警戒してくるはず。つまり川田は守備の要である間宮を引き付ける役目だ。



「流石にずっとパス行かないと囮って気づかれるだろうから、高いパスで間宮先輩と空中戦はやってもらうけど行ける?」


「ヘディングならDFで散々やってた。クリアする方でだけどな」


「つまり自信ありと、良いね。それなら間宮先輩も競り勝ちはしても楽なクリアは難しいはず。川田が競り合ってセカンドで誰か拾ったらすぐシュートを撃つ。決まる決まらないにしても中途半端に繋ぐよりシュートで終わる方が良いし、その場で奪われてカウンターとか嫌だからね」



 こうして弥一を中心に作戦は決められ、本来FWである優也とMFである川田の位置を入れ替えて今回の紅白戦に臨む。






 時は現在。パスが来たボールに対して、弥一はダイレクトで高い浮き球を中央から前線へ送る。



 その先に居るのは川田で、間宮がマークに張り付く姿が見えた。



 高いボールに対して川田が飛び、間宮も同時にジャンプ。



 ガッ



 長身で体格のある選手同士の空中戦。頭での競り合いは間宮が制してクリアをするも、楽にとは行かなかったせいか、ボールは思った方向に飛ばない。



 セカンドとなった球に詰めていたのは1年の選手。間近には2年のDFがすぐ迫って来ている。



「(シュートで終わるっと!)」


 距離はあるが拾った1年選手は作戦通り、右足を振り抜いてシュート。このボールは浮いていき、枠を捉えられていない。


 2年のキーパーもシュートを見送って2年のゴールキックとなる。



「(最初から結構押せ押せで来るのか)」



 引いて守って来るだろうと思っていた長めの黒髪。キーパーとしては小柄な176cm。2年のGK安藤次郎(あんどう じろう)。


 まだ公式戦には出ておらず、去年は控えキーパーとしてベンチに座ったままで、今年は正GKを狙っている。



「びびるなよ! しっかり攻めていけー!」



 後ろから声をかけ、味方を鼓舞しながら中盤へと安藤は蹴り出した。再び空中で頭の競り合いとなれば2年が勝ち、今度は先輩チームがボールを取る。



「(っ! すんげぇうじゃうじゃ居るじゃねぇかこれ!)」



 パスを出そうとした2年MFだが中盤を固めている1年チームを前に、パスの出しどころが難しく足を止める。そこに今回、後ろへ下がっていた優也が素早く相手へ詰め寄る姿が見えた。




「(ぐっ!? こいつ!)」



 早い寄せに動揺する2年MF。ボールをキープしているが、優也に押されている。



「戻せ!」


「!」



 間宮の指示が後ろから飛び、2年MFは器用にヒールで後ろへと流すと。間宮がパスを受けに来た。優也は素早く追いかける。



「(取られるかっての!)」



 優也のチェックが来るよりも速めに、間宮は右サイドに居る選手へパス。受けたのは田村だ。



「(右ガラ空きだ! チャンス!)」



 前を見れば相手の右が空いている事に気付き、近くの2年選手とワンツーで繋ぐと、右サイドを自慢の脚力で駆け上がる。



 1年側のエリア内をこの時ちらっと田村は見ていた。自軍のFWが上がって1年DFが居る。そしてエリアの外から離れた所に、長身の選手が走り込んでいるのが見えた。


 おそらく1年DFは今、FWへの対応で頭が向こうに意識が向いてるのだろう。



 此処は1年が自軍のFWに気を取られている間、走り込んで来ている方に合わせるのが良い。



 ただ、低いボールを出してしまえば弥一が何処かに紛れ、インターセプトを狙うかもしれない。



 身長が致命的に低い弥一が相手なら、読んでいようが防ぐ事は出来ない高いクロスを上げ、走り込んで高い打点のヘディング。これなら分かっていようが止める事など無理だろう。



 田村は走り込んで来る位置を計算し、得意の右足で高くボールを上げた。




「高い! キーパー!」


「任せろ!」



 高いクロスを上げてくると察知した瞬間、弥一が後ろへ声をかけると1年の大型GKが動き出す。傍には上がった球に長身の選手が頭で合わせようとする姿。



 その手前でボールは取られる。



 飛び出した大門が地を蹴って跳躍から、ボールに向かって長い腕を伸ばせば、大きな両手でキャッチしてみせた。



「大門ナイスプレー♪」



 これを見た弥一は軽く手を叩いて喜ぶ。



「な!?(なんつー高さのジャンプしやがるんだあいつ!)」



 行けると思っていたのか田村はぎょっと驚く。大門が長身で腕も長く、高いボールには強いだろうと分かっていたが、予想を超える高さに迷いの無い飛び出し。力強い跳躍からクロスボールを取ってしまった。


 本来走り込んでヘディングを叩き込むつもりだった2年も、予想外という顔を浮かべる。




 キャッチしたボールを大門は素早くスローイング。そのボールを受け取ったのは弥一だ。



「(あの田村って人、歳児に張り付いてたよね。となると今は……)」



 弥一は優也の方を見ると今は左の方に居て、マークは誰もいない。




「(よし、フリー!)」



 誰のマークも無い。此処で彼のスピードで突破が行ければシュートチャンスまで持っていけるかもしれないと、弥一は速いパスを送った。


 他の1年では追いつけそうにないスピードボールだが、快足FWの優也なら追いつけるだろうと。



「っ!」



 その前に選手の足でボールは弾かれ、タッチラインを割る。



「!(何時の間に……)」



 弥一としては今のパスを防がれたのが想定外だったらしい。優也の方も急にパスに対して、人が飛び込んで来た事に驚いている。



 ボールに飛び込んで止めたのは影山真樹。試合前に弥一が見ていた2年の影のようなボランチだ。




「よーし、いいぞマサ! 神明寺や歳児にそう簡単に良い格好させてたまるかよ!」



 後ろから声を出して間宮は影山を褒め、チームを盛り立てていく。



 パンパンとホコリを落としながらも、影山は間宮に右手の親指を立てて応えた。




「(ふーん、これは想像以上に嫌なタイプだなぁ)」



 影山の姿を見ながら弥一は後ろに下がる。

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