41.マズドールの金庫
シャーメインの話が終わるとタンクが口を開いた。
「リディア、金庫は良いのか?」
「あ!忘れてた」
リディア様はそう言うと俺達を見た。
「マズドールの金庫を回収したって聞いたんだけど」
「あ!ありますよ。マジックバッグの中に入ってるはずです」
「出してもらえる?」
「はい」
俺はマジックバッグから金庫を取り出した。
「シャーメイン。これはお前が作ったのか?」
シャーメインは金庫を見た。
「あーそうです。現魔王軍には戦闘に使わないマジックアイテムを提供してましたので。これはマズドールの魔力でしか開けられない金庫です」
「シャーメインでも無理か?」
「いえ。開けられれます!特注のマジックアイテムは発注した者の魔力でしか作動しないことになってますが、すべて僕の魔力で動かせるようにしてます」
「さすがだね」
「当然です」
シャーメインは金庫に触れた。
カチャ
金庫から鍵が開く音が聞こえた。
扉を開くと、中には大量の金貨と注射器のような物が入っていた。
「なんですかこれは?中身が入っていますね」
ルゼは注射器を持って言う。
「これは魔力を体内に注入マジックアイテムです。現魔王から購入することができます」
「魔力を注入?」
「はい。戦闘時に使用すると魔力量が増えると言われています。僕は1度も使ったことがないですが、これだけの量を所持してたという事はマズドールはよく使っていたみたいですね」
俺はその注射器に見覚えがあった。
「あれ?この注射器、マズドールが使ってたな。これを刺してから少しおかしくなってた気がする」
「え!?そんなこと言ってました?」
「ごめん。完全に忘れてた」
ルゼはジト目で俺を見た。
俺達のやり取りをみて、シャーメインが口を開いた。
「ハルキさん。さすがですね、魔力を注入したマズドールを倒すとは」
「スキルの相性が良かったから倒せただけだよ」
シャーメインに詳しく伝えるともっと興味を持たれてしまうので謙遜しておいた。
「現魔王軍はこのマジックアイテムを使って、魔力を他国に売っています。元幹部の皆様の魔力も売られていたみたいです」
「魔力を売る!?」
リディア様は驚いていた。
「はい。人族の国では勇者召喚というものを行っているらしいです。勇者召喚には膨大な魔力を使うみたいで、生贄で足りない分を購入した魔力を使ったりしているみたいです。他にも戦争で兵士の強化に魔力を使っているとか」
「はぁー。勇者召喚も気になるけど、無理に魔力を身体に入れて問題はないの?」
「身体に合わなければ意識がまともに保てませんし、四肢がはじけ飛ぶこともありますね」
「ヴィアルドはそんなものを他国に売って何をしたいんだ!」
リディア様は怒りで震えていた。
「このマジックアイテムの作成者は不明。それとこの2つも制作者が不明です」
シャーメインは2つのマジックアイテムを取り出した。
「これは?」
「魔力を奪うマジックアイテムです」
魔力を奪うマジックアイテムは金属製の水鉄砲のような形をしていた。
タンクの所が透明なガラスでできている。
「見覚えがあるね…」
リディア様は嫌そうな顔をした。
「それでこっちがスキルを奪うマジックアイテムです」
こっちは金属製のゴツイマスクだった。
「これは故障しております。リディア様達がスキルを改変された後、大罪スキルを取得したものに使用して壊れたようです。ヴィアルドから解析を依頼されましたが、私では直すことはできませんでした。これを直せれば、リディア様達にスキルを返すことだってできたはずなのに……」
シャーメインは悔しそうにしていた。
「シャーメイン、気にしないで。僕もルゼも今のスキルで生きていくと決めてる」
「そうです。落ち込まないでください。あなたのおかげでこれから動きやすくなるんです。感謝してもしきれません」
ルゼ達はシャーメインを慰めた。
シャーメインから話を聞き終え、俺達は研究室から出た。
▽ ▽ ▽
俺とタンク達はシャーメインからもらったマジックアイテムの確認をする。
ルゼ達はこの街にいる虫人族の長に会いに行った。
俺達は城壁の外に出た。
「そろそろ『異世界装備』を解除してもいいよね?」
「ああ。あいつがいないから問題ない」
タンクがそう言うと、みんなは装備を解除した。
「ビーとティー。これ付けてあげるから前脚出して」
「うん!」
「付けたら走ってもいい?」
「いいよ!」
俺は2匹の脚にもらった腕輪を付けた。
「えーっとどうすればいいんだ?」
「マジックアイテムは魔力を込めて使うものが多い」
「そうか。じゃあその腕輪に魔力を込められる?」
「うん!」
「やってみる!」
すると腕輪がうっすら光り、ビーとティーの体が徐々に小さくなっていく。
「おお!すごい!」
最終的にハムスターほどのサイズになった。
「どう?違和感ない?」
「うーん。平気―!」
「ねー走ってもいい?」
「走るときは元の大きさでね」
「「はーい」」
ビーとティーは体のサイズを戻して走りに行った。
「タンクありがと」
「気にするな。俺らがそっちの世界に行くとビーとティーだけがこっちに残ることになってしまうからな」
「いつもタンクには助けられてるよ」
俺がそう言うとタンクはたぶん照れ臭そうにしていた。
「あれー?ハルキー」
ビュラが近づいてきた。
「ん?どうした?」
「いつ怪我したのー?すぐに直してあげるからね」
腕を見てみると、小さい傷が2つできていて血が出ていた。
「本当だ。治してくれる?」
「うん!」
ビュラは光の球を俺に当てると、傷は綺麗に無くなった。
「どこで怪我したんだろ?」
怪我の原因を考えたが、何も思いつかなかった。
▽ ▽ ▽
「シャーメイン」
「はい」
「ゴーレムについての情報はある?」
「ゴーレムですか…。15年前より警備ゴーレムの数は減っています」
「減ってる?」
「はい。警備ゴーレムは本島にしかいません」
僕は予想を外した。
あんなに強いゴーレムを増やさない意図が理解できなかった。
「聞きたいのですが、リディア様達が特殊なゴーレムに襲われたというのは本当ですか?」
「ああ。あの時は…。4体の特殊なゴーレムがいた」
僕は当時の事を思い出して、気になることができた。
「なるほど。15年前、僕は本島にいたので特殊なゴーレムを人伝にしか聞けてなかったんです」
「確かにいたよ。強力なゴーレムが4体」
「なるほど…」
シャーメインは何か考えていた。
「当時、かなりの数の警備ゴーレムの修理を頼まれました。残念ながら修理はできませんでした。修理依頼の中に特殊なゴーレムがいなかったので半信半疑ではあったんです。8つ脚のゴーレムとは別ですよね?」
「8つ脚のゴーレム?逆に僕がそれを知らない」
「なるほど」
「当時の僕は意識がほとんどなかった。意識があっても戦闘することが出来ず逃げてばっかり。あの戦いの全貌を聞くならゴフェルが良いんだけど…。鬼人族のガシャールも知ってると思うからもし会う機会があったら聞いてみればいい」
「わかりました」
僕はそう告げて、シャーメインの研究室を出た。
僕は嫌なことを気づいてしまった。
当時、僕達を襲ったゴーレムの名前。
ムサシ・クレオパトラ・リョフ・フランクリン。
どれも異世界の歴史上の人物の名前だった。
もしかしたら異世界人があの争いに関与していたのかもしれない。
そう考えると色々警戒をしないといけない…。




