エピローグ:移ろう火
「……っ!!」
「あ……起きたんだね、炎」
飛び起きる。
ここは……保健室?
壁の時計を見れば、もう夜の七時だった。
「オレ、そんな寝てたのか」
「うん。決闘空間で戦っても疲れとかは残るんだね、知らなかった」
「ああ。そういえば魔法食らって傷一つ無い……」
「変な事言うね! 生徒が魔法で戦うってなったらあの場所しかないだろ?」
「……うん。そうだな輝……」
タクマの戦っていた時を思い出す。
いやあ、よく生きてたな自分。
「……で、勝ったんだよな?」
最後に異能を使ってから記憶が無い。
水使いがベールを纏って、それを破る為に残った体力を全て費やした所までは覚えてるんだが。
「……」
「え」
「……もしボク達が、負けてたら?」
輝はオレに背中を向けてそう言った。
……嘘だろ?
せっかく彼女の異能が開花したのに?
――あの時。
オレの異能が、水使いのベールを破れていなかったら負けだ。
でも、あの時の感覚は間違いなく破っていたはず。
もしかしたら気のせいだったのか?
アレだけの威勢を張って?
結局最後は――負けたってのか?
でも――でも!
「輝!」
「なに……?」
「アイツらに負けたって関係ない、オレは――」
彼女の背中に言葉をぶつける。
《――「星丘に入学なんてするんじゃなかった」――》
そう言った彼女の声を思い出す。
自分は輝に……居なくなってほしくないんだ。
せっかく彼女の異能も開花したのに。
せっかく新しい仲間が出来たのに。
「そんな体操着じゃなくて、ウチの制服を着たお前の姿が見たい!」
「奴らに切られる前の、輝が髪を伸ばした姿も!」
「だから――オレは何があっても! お前をアイツらから守ってやるから!!」
保険室でも構い無く叫んだ。
この声が彼女に届くのなら、恥は捨てた。
「……っ、炎のばか……なんでそんな事、ボクなんかに言ってくれるの……」
オレへと向いた彼女の表情は――泣きながら笑っている、不思議なもので。
「勝ったよ。全部君がやったんだ。ボクの異能の開花も、決闘の勝利も。ボクの全てを救ってくれたのは君なんだ」
「……そう、なのか」
静かに輝はオレへ言った。
安心して――何というか、肩の荷が降りる。
「うん。ねえ、炎!」
「ん、何だ――っ!?」
「『シックスフィンガー』!」
瞬間、オレに飛び込み抱き着いてくる輝。
背中に回される手――そして更に現れた彼女の美しい『片翼』も回されて。
彼女は、こう言ってくれたんだ。
「ボク――星丘に入学して良かった!」
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