抱擁
短めです。夜にもう一話投稿します。
「ほ、炎……! やっ!?」
「ハハハ! おらどけ――俺達に勝てる訳ねえだろうが!」
倒れる俺の身体。
向こうを見たら火使いが輝を振りほどき――水使いの元へ走っていた。
「輝はもうどうでも良い。おい、降参しろよ『ハズレ』君」
「おらっ聞いてんのか? 輝が見てる前で言えよ、『降参します』ってな! ハハハ!」
用心しているのか、二人が距離を取って俺の前に立つ。
……分かってる。
二人を倒す魔力も体力も残ってない。
パイロキネシスを発動出来るのは……気絶する覚悟で出来て一回、いやゼロかも。
もう――『詰み』だ。
――「あーあ、終わりだな」「やっぱあの転校生とは違う」「見てて辛いわ~」――
聞こえてくる観客の声。
ああそうさ。
もし今――ここにいるのが優生だったなら。
目の前の二人なんて一瞬で倒しちまうんだろう。
自分が憧れた『最強』なら。
こんな奴らなんて。
でも――俺は――
「……!」
「ごめんね、炎。ボクなんかの為に……」
立ち上がろうとした俺に、前から暖かな感触が身体を包み込む。
目を開ければ、俺を抱く輝が居た。
「――!? なんだコイツ」
「うぜぇ……気持ち悪いんだよお前ら――『ファイアーボール』!」
「うっ――! はぁ、はぁ。ね、炎……」
背中で火球を受けながら――彼女は俺に耳打ちする。
辛そうな声。
それでも何かを伝えるように。
「……今なら。きっと炎みたいになれると思うんだ」
「!」
「だから――」
「『ウォーターボール』」
「『ファイアーボール』! ハハ、サンドバッグじゃん」
「うっ、あ……お願い……炎」
攻撃を背中で受けながら輝は続ける。
「ボクね、アイツらは大っ嫌いだ。だから、アイツらじゃなくて――」
必死な声。
そして覚悟を決めた声。
「――炎のその『火』で、ボクの異能を目覚めさせて?」
「……ああ!」
「ありがとう……っ」
俺は彼女の身体を抱き締める。
優しく、壊れないように。
それでいて離さないように。
「なっ、何なんだよコイツら――」
「気持ち悪ぃ……もう終わらすぞ! 水よ――!?」
雑音は無視して。
俺は――手に最後の火を宿す。
「……いくぞ、良いか?」
「うん、来て――」
そして。
「『パイロキネシス』!」
「っ――あっ、ああああああああああ!」
燃え上がる火が、俺達を包んでいったのだった。




