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内務省所属平和庁直属特務機関「転生局」  作者: 塚山 凍
三章 鏖殺人と証言集
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グリス王国王都日報廃刊に関する号外の下書き(三章 完)

 今まで、王都日報をご愛読いただいた、読者の皆様へ。

 この度、中央警士局から業務改善命令が出たことについての対応をお知らせしたく、こちらの号外をご用意しました。


 さて、率直に申し上げますが、標題に示してある通り、七月三十一日付けで、王都日報を廃刊いたします。

 定期講読を契約されているお客様に起きましては、申し訳ありませんが、八月一日より、王都日報をお届けできなくなります。


 先払いをさせていただいた分の補償につきましては、現在法務省と対応を協議中です。

 しかし、何年かかろうとも、必ず償うことをここに確約します。


 読者の皆様の中には、他の日報から、現在のわが社の状況についてご存じの方もおられるかと思います。

 しかし、その内容には幾つかの憶測や、明らかな間違いが入っており、残念ながら真実を伝えているとは言えない状況にあります。

 蛇足になることは承知ですが、この紙面を使わせていただき、わが社に起こったことについて釈明をしたいと思います。




 始まりは、先日、転生局の調査によって、中央警士局に拘束された、赤羽レン記者の提言でした。

 政治部に在籍していた彼は、七月の特集として、転生局について扱った記事を書きたい、と編集局長に申し出てきたのです。


 もちろん、編集局長を始め、社の者たちは皆反対しました。

 常に自分達に厳しく、清廉な仕事を行う転生局について取材することは、極めて不敬なことであり、かつ、記事にすることは何もないと考えたからです。


 他社の日報では、「部数減少に悩んでいた幹部たちは、こぞって転生局の記事を書くことに賛成した」などと、ありもしない流言飛言が掲載されているようですが、事実は全くもって異なります。

 全ては、赤羽記者の暴走から始まったのであり、他の社員たちは皆止めようとしていたこと。

 特に、現在も社に残っている経営幹部たちは、強く反対していたことを、ここに記します。


 しかし、赤羽記者は、時に暴力も辞さない態度で、幹部たちに取材の許可を迫りました。

 そのことから、仕方なく、本当に不本意ながら、大きな躊躇いを抱えつつも、私たちは取材の許可を与えたのです。


 断じて、転生局の発表にあるような、「転生局長の粗探しをしよう」などと言った意図は、我々にはなかったのです。

 全ては、赤羽記者の独断です。


 中央警士局は、赤羽記者が編集幹部の印が押された取材許可証を持っており、それを用いて取材を行ったと、先日の記者会見で述べていましたが、その事についても弁明があります。

 あの印について、当編集幹部は「記憶にない」と証言しています。


 恐らくですが、赤羽記者が密かに編集幹部の印を盗用したのでしょう。

 他社の日報では、「編集幹部の親戚に転生局の現副局長が存在し、そのコネで編集部は赤羽記者を応援した」などと書かれていますが、これは事実無根の出任せです。


 こういった経緯で記事となった「転生局の意思シリーズ」は、知っての通り、大きな反響を呼びました。

 そしてもちろん、読者の皆様から寄せられた意見は、赤羽記者の記事の中にある、転生局の業務について疑義を呈する文章について、批判するものでした。

 断じて、転生局の批判を応援するような読者様は存在しませんでしたし、我々も、それを根拠として赤羽記者をサポートするような悪行は行いませんでした。


 私たちは、読者の皆様から寄せられた意見の一つ一つに耳を傾け、それを元に、赤羽記者を説得しました。

 しかし、彼は私たちの忠告に耳を貸さず、尚も取材を続行しました。

 そうして、彼は白縫副局長にアポをとったのです。


 もちろん、白縫副局長は賢明な方で、すぐに彼を拘束しました。

 既に転生局は、彼がナイト連邦に存在する反政府組織にして、現存する最大の転生者結社「人の翼」の構成員であることを掴んでいたのです。


 ティタン局長によれば、彼自身は異世界転生者ではなかったようです。

 しかし、彼は長年の間、記者という立場を利用して異世界転生者に同情的な記事を書き、彼らを援助していたのです。


 人間でありながら、異世界転生者たちを支援していた赤羽記者の考えは、もちろん、私たちの考えとは異なります。

 そのような手前勝手な正義感が、第二、第三の佐藤トシオを産み育ててしまうことを、私たちは理解しています。

 彼の行動については、理解不能というしかありません。


 さらに、ここで付け加えておかなくてはならないことがあります。

 既に掲載された、赤羽記者筆による「転生局の意思シリーズ」では、とある診療所と、とある牧場について取り上げました。


 その中では、インタビュー対象者が、転生局を批判するような発言をしていたように描写されていますが、これはもちろん、赤羽記者による捏造です。

 彼は、ろくに取材もせず、そのような記事ばかりかいていたのです。


 ティタン局長が異世界転生者の墓を作っただの、色んな病院に異世界転生者を拘束するように言い含めているだのというのも、全て出鱈目です。

 そのような反社会的な発言をする人物が、存在するわけがないですから。


 また、彼のような危険思想を持つ人物を入社させてしまった、私たちの責任についても語らなくてはならないでしょう。

 実は、彼が入社した際に、面接を担当したものに話を聞いたのですが、彼のことをよく覚えていないというのです。


 これは、異世界転生者により精神干渉系の魔法による可能性があります。

 彼が、「人の翼」の仲間を使った可能性は、考慮されるべきでしょう。




 以上のことが、私どもがこの件について説明できることの全てです。

 勾留中の赤羽元記者は、我が社について根も葉もない暴言を吐いているようですが、甚だ遺憾です。

 いずれ、彼が悔い改める日が来ることを祈るばかりです。


 王都日報最後の号外が、このような内容になったことは、極めて残念ですが、これこそが私たちの知る真実です。


 今まで、ご愛読ありがとうございました。



 グリス王国王都日報社主 桑原ケイスケ

















































※ティタン局長様へ。

 この内容の号外を、三日後に配布しようと思っています。

 ぜひ、ご精査ください。

 ご指示があれば、どのようにでも書き改めます。

死人(囚人?)に口なし。

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