39、ビーコン
「向こうとつなげる……?」
「そうだよ。気づかなかったかい。ああ、そうか。まだ話してもなかったね」
興奮気味に、東は俺に話す。その間にも、どんどんと工場の中央へと歩いていく。工場は上から見えなかったところに巨大な釜があった。優に20メートルは越しているだろう。そこに、魂が次々と入れられていく。
「魔術の三要素は聞いてるかな」
「体、魂、精神。だったか」
東に聞かれて、随分昔に聞いたような気がすることを思い出す。師匠は確かそんなふうに言っていたはずだ。
「正解。では、向こうの世界とこちらの世界、魔術の三要素で共通しているものは」
「精神だろ。俺は特別で魂もつながっているらしいんだがな」
「それも正解」
これではまるで何かの試験のようだ。実際のところ、東は何を考えているのかはわからない。おそらく彼女なりの思いで言葉をつないでいるのだろう。俺に何かを気づかせるために。そんな考えも俺の頭に浮かんでくるほどだ。
目で追っていたビーコンは、今までとは別のベルトコンベヤに載せられたようで、急に加速をした。助けるのであれば今しかないのだが、そのとたんに、体の自由がきかなくなった。どうやら何かを察して魔術を掛けたらしい。
「この世界と向こうの世界では、何が違うと思う」
要は表世界と裏世界で何が違うか、ということだ。それについては、考えなくてもはっきりわかる。
「魔法が使えるかどうか。じゃないのか」
「そう、正解。でも、魔術粒子については、宇宙をまたいで存在している。じゃあ、なぜ向こうで魔法が使えないか、それを考えたことはあるかい」
そもそも、そこまではっきり考えたことはない。俺は、何も答えずに口をつぐむ。
それを見て、東はにやりと笑った。そして、さらにヒントを口にする。
「まあ、簡単な問題だと思うけど。ヒントを出しておこうかね」
「ヒント?」
「はるか昔、人は魔術を使えなかったという伝説がある。でも、あるとき魔術を神から授けられた。その際、ケモ耳をつけられた。それは魔術を使えるかどうかという差になる」
「つまり、猫耳なのが、魔術を使えるかどうかという差だということなのか」
ヒントというよりか、もはや答えだ。そう思いつつも、俺は東にこたえてみる。
「そういうこと。まったく、神様も何を考えているんだろうね」
壺の縁のところへとやってきた。中は光り輝いている。もはや、壺というよりも坩堝のようだ。魂はドロドロに溶けて、粘液状に見える。さらにそれぞれは本当は虹色なのだろうけども、それが混じり合って不協和音を奏でている。そのおかげで、音は雑音ののようになり、光は白色にしかみえない。それをのぞき込みながら、東は話し続けていた。
「でも、神様は1つだけ我々に贈り物を残してくれた。それがあのケモ耳に秘められた秘密だよ」
「それは……」
俺が東に尋ねる。すると、坩堝をバックに、両手を広げて勝ち誇ったかのような笑顔を浮かべて叫んだ。
「我々は世界を統一する。2つの世界がなぜつながっているか。ケモ耳の秘密とは何か。それを君に話さなければならない」
そしてビーコンは、俺のすぐ目の前のベルトコンベヤから、坩堝の中へと落ちた。




