38、魂
「美しいだろ?」
東が話す。
確かに、魂は美しい。それは、その人の生命力を表しているからだ。その人が、どのように生きてきたかを象徴しているからだ。その人の生き様を、俺らにありありと映し出しているからだ。だから、人は美しいのだと、とある人は言っていた。
「そうだ、これらすべてが人が人たらしめるために必要な力の源だ。毒され、穢され、それでいて撃つ草を保ち続けている、人間の愚かさの塊だ」
東の話を聞きつつも、俺らは近くにあったエレベーターに乗る。エレベーターは全面ガラス張りになっていて、外がしっかりと見ることができる。そのおかげで、地面に降りるまでの10秒かもうちょっと長い間、見続けることができた。場所は把握した。あとの問題は、どうやって神秘大臣という国内最高の魔術の使い手の魔術から逃げることができるかだ。
「……さて、君がきたことで、この術式は完成する」
「どういうことだ」
どうやら疲れてきたらしい。それとも、ここまでくるともう逃げることもないと考えているのだろうか。東は俺を地面に降ろして歩かせた。一応、すぐに呪文を唱えられるように、杖を彼女の右手に持っている。だが、今のところ、それを使うつもりはない様だ。
「君は、なぜ、この世界の人たちが猫耳なのか、気になったことはないかい」
「いや、向こうの世界とは違う世界だったし……」
その時、あることに気付いた。
「……猫耳がない」
「おや、やっと気づいたのかい。まあ、仕方ないかもね。ずっと魔術を掛けられていたわけなんだしね」
そうだ、それにも一つ。ここで働いている人たちは、みんな猫耳がない。それも、今やっと気づいた。それらが意図していることというのは。
「壮大な魔術実験へようこそ。これから、君を鍵として、向こうの世界とこちらの世界をつなげるよ」
東は、今まで一回も見たことがないような、素晴らしい笑顔を浮かべた。




