37、工場
通路は、階段のところ以外は真っ暗に塗られている。階段の部分も、やや灰色に見える程度だ。まるで、光自身が吸い取られているかのように、黒さは増していく。
「怖いかね」
東に言われるが、怖くないはずがない。それを答えるよりも先に、再び扉が見えた。取手は見えない。暗闇に浮かび上がる灯台のように、それは金色に輝いて見えた。
「“我は命ずる。万物の精霊、祭政の神。その扉を開けよ”」
東が歩きながらいうと、扉はひとりでに開いた。まるで自動ドアだ。間違えた時、どうなるのかは、考えたくない。だけど、考えてみると、ここまで来ること自体が難しいだろう。
「よろしい。さあ中に入ろう」
東が言うが、俺に拒否権なんて、もとから持ち合わせていなかった。
高いところへと出たと思うと、天井からはまるで外にいるかのような柔らかい白色光が降り注ぐ。まるで何かの工場のようだ。巨大な水槽、忙しそうに動き回る人々、ベルトコンベアに載せられる小さな瓶。水槽は青色、赤色、黄色、まるで虹のようにいろんな色が満ち溢れている。その色はマーブルのようにどんどんと動き回っていた。
俺の目のビーコンは、そのうちの一つを指示している。他のどこにも目をくれず、俺はそこだけを見た。すでに東は俺にかけられている魔法を知っている。そのおかげで、俺は何の気兼ねなく。見続けることができた。




