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12、起床
起きると完全に表世界しか見えない。
目の感覚も、耳も、授業の声しか拾うことはない。
ちょうど、時間だ。
チャイムが高らかに鳴り響き、先生が授業の終わりを告げる。
「きりーつ」
委員長の細くしかしはっきりとした声によって俺も含めて立ち上がる。
「れーい」
ありがとうございましたの声が、はっきりと聞こえた。
特に体におかしい所はない。
しかし、自然に体は動く。
トイレの方向だ。
トイレは、教室を出て、すこし廊下を歩いた先にある。
そこの個室に入り、後ろ手で扉を閉めてからズボンを脱いで座ると、ふっと力が抜ける。
その力が抜けるのは一瞬の出来事ではあったが、背中がふたに当たった。
そこで初めて、起きたと、目が覚めたんだいう感じがした。