バインダーの本拠地へ
お久しぶりです
あの後、散々はぐらかされ、結局放課後に指定された場所に来るように言われた。
雫という人間は、人で遊ぶのを楽しむ悪趣味をお持ちのようだ。
そんなことを思いながら、雫が指定した場所「大きいテレビのついたビルから歩いて5時間くらいにある古いビルの地下のお店」に向かっているのだが、
こいつ本当に教える気あんのかと思ってしまう。
まず、目印であるビルの特徴が曖昧だし、歩いて5時間って目印にする意味がまずない。
最低限店の名前くらい教えろよと思いながら、学校から徒歩20分にある我らが中央都市のビル街に到着した。
スクランブル交差点の真ん前にあるビルには化粧品やファッション系のCMが絶え間無く流れている大型スクリーンが設置してある。
おそらくこれが例のテレビであろうが、ここから5時間も歩かなければならないのかと思うと億劫になる。
方角も指定されていないので、最近開発が進んだパリピー系ビル街では無く、都市の中でも過疎化が進んでいそうな方向に行こうと思う。
古いビルというんだからな。
さすがにこの辺は飲み屋が多く、時間もちょうどいい頃だ。
スーツを着たサラリーマン風の男が店内でわいわいやっている声が漏れてくる。
道行く人にも既に出来上がっている人もいるので、絡まれないようにしないと面倒なことになる。
街灯がポツポツと点き始め、その中を10分くらい歩いただろうか、まだ活気はあるがさっきよりは町外れにきたようだ。
道の端にはホームレスか、酔っ払いかは知らないが、人が座っていたり寝転がったりしている。
中で目に止まったのが、女性?のようだった。
いやあれは…雫だ。
「何やってんだ、あいつ…」
顔を伏せ、座り込んでいるのだが、まったくこちらに気づく様子はない。
寝ているのか?なんでここで?
しかし目的地がわからない現状、彼女を見つけられたのは良かったと言える。
とりあえず声をかけるとしよう。
「おーい、雫」
反応なし、ピクリともしない。
近づいてもう一度同じように声をかけたが、同じ結果だった。
これは完全に熟睡してる…。
街中で熟睡してしまうとは…。
「起きろって!」
「うがっ!?」
脳天にチョップをかましたところ、女性らしからぬ声を上げた。
良かった、人違いではなかった。
「ん〜…あれ、弘樹くんか、おはよ…」
「今が朝なら返しているところだけど、逆に日が落ちるところだぞ…」
辺りは街灯が照らす、夜空に星が光り出した。
完全に夜だ。
「…そんなことはどうでも良かった。お前が指定した場所が分からなくて困ってたんだよ。んでどこなんだ?」
「どこって、君の後ろだよ」
と言われて、反射的に後ろを振り返った。
たしかにビルはあるが、多く立ち並んでいる一つであり本当に特徴がない。
そもそも…
「お前、歩いて5時間くらいとかいうふざけた案内したよね?かかった時間20分くらいなんだけどここ!」
雫を見つけてなかったら通り過ぎてた…。
怒り心頭の俺、しかし雫はいつもの調子だ。
「いいじゃん、結果着いたんだし。それに私は歩いて5時間くらいかかる時あるんだから嘘ではない!」
「お前途中で絶対寝てるだろ!なんで路上で寝れるんだよ!」
「こればっか諸事情があるのでーす。ほら、お腹減ったし早く行きましょ」
なんか変に言いくるめられたぞ、納得いかない。
しかし、本来の目的、情報の入手のためビルに向かって歩き出した雫を追いかける。
雫は、ビルの正面入り口ではなく、側面に空いた地下へ続く階段を降りていく。
電灯は最小限、うっすらと見えるくらいで先は暗闇だ。
先へ進むたびに何か変わっていく気がした。
臭い?空気?世界?何だが現実から離れていく気がした。
そして…最深部へ
「着いたよ…ここが」
大きな鉄の扉、圧倒的な迫力、そしてそれが雫の手によって開かれていく。
「ここがバインダーの本拠地だよ」
扉が開き切った瞬間、俺は何かを認識する間も無く何者かに引き込まれた。
何が何だか分からず、目を開けると周りに多くの人がいた。
「第一試験の開始だよ、死なないように頑張ってね」
考える間も無く、武器を持った人が襲いかかってきた。




