第83話 ぼへええええ!
あれから一週間後、ポージュースは飛ぶように売れた。
効果が高い上に、安価で手に入るところが評価されたのである。
ヱッチからもらった特大ミカンを、隣で切り売り販売したのがウケたんだとか。
今後はポーションの販売は取りやめ、ポージュースに絞るという。
ジュースを改良した方が早いらしい。
絞りかすを食べさせた牛肉の方も、味がまろやかになったと評判だ。肉が柔らかくなっているという。他の家畜も同等の評価を得た。
王族や貴族に目をつけられるかも、と思ったが、オンコがうまく取り引きの交渉をしてくれたらしい。
おかげで、平民をエンドユーザーにする状態は維持している。
チサちゃんとマミちゃんが砂遊びをしていると、亜神から通知が届く。
「魔王チサ様、ロイリ・ス・ギル様及び玉座・亜神様より通知です」
いよいよ、亜神の審判が下る。
チサちゃんが魔王に相応しいか、この報せで決まるのだ。
「なお、魔王マミ様にも、同様の通知がございました」
亜神からの手紙は、二通ある。
「アタシのも来たの?」
マミちゃんが自分を指さした。
「ここにいらっしゃることは、亜神様も把握なさっているようです」
「見せて見せて!」
マミちゃんに急かされ、セイさんが書類の封を切る。
「なんて書いているの?」
待ちきれない様子で、ケイスさんを踏み台にして身を乗り出す。
「ぬほぉ❤」
ケイスさんも、幸せそうな様子だ。
この二人は、色んな意味で相性がいいなぁ。
「お二人とも、おめでとうございます。合格です」
書面を読み上げ、セイさんが涙ぐんだ。
「やった!」
諸手を挙げて、チサちゃんが喜ぶ。
「アタシも合格よ! よかったわね、チサ」
「おめでとうございます」
マミちゃんと、ケイスさんが祝福してくれる。
二人もいつか、結ばれるのだろう。
「では、魔王の生き残りをかけて、戦闘試験を行ってもらいます。勝った方が、魔王の最有力になります」
セイさんが、号令を掛ける。
ゆるふわなひとときが、終わりを告げた。
ここから先は、真剣勝負である。
ビリビリとした空気が、ボクの肌に触れた。
皮膚が泡立つような熱気が、漂ってくる。
「負けないわよ、チサ」
マミちゃんが立ち上がった。
いつもの陽気さは兼ね備えているとは言え、遊びではないと伝わってくる。
これはもはや、ゲームではない。
「こっちこそ、マミ」
ボクから離れ、チサちゃんも起き上がる。
チサちゃんの放つ気迫に圧倒され、ボクは身動きすら取れなかった。
近づけない。
「ここから先は真剣勝負。どっちかが倒れるまで――」
だが、マミちゃんから攻撃が来ることはなかった。
拳を振るおうとした刹那、背後から何者かの手でポージュースを飲まされたのである。
「ぼへえええ……」
蕩けた顔になって、マミちゃんが腰抜けになってしまった。
「マミ様ぁ!」
愕然とするケイスさん。
チサちゃんは、何もできなかった。マミちゃんを倒した相手が、予想外の人物だったから。
「どうして、セイ?」
彼女にジュースを飲ませた人物は、味方であるはずのセイさんなのである。




