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おっさん、魔王の玉座になる -幼女魔王と一緒に座っているだけでレベルMAX!-  作者: 椎名 富比路
3-2 みんなでキャンプ ~シコーシ湖畔キャンプ場~

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山頂でカップ麺を

 腹ごしらえをしたボクらも、山登りを開始する。

 魔王と玉座が、二人横並びになって歩く。


「軽めだったから、すぐにお腹が空きそうね! お菓子を買っておいて正解だわ!」

 先頭を歩くマミちゃんが、ガハハを笑った。


「マミ様は、こうなることを予め見越してらっしゃいましたよね」

「あなたは余計なことを言わなくていいのよ!」

「フング!」


 付き添っているケイスさんの脇腹に、マミちゃんが固めた拳を叩き込む。


「ネウロータは、辛くない?」

「この程度。高山病にかかるわけじゃないし」

「ウフフ。辛くなったら、膝枕してあげてもいいのよ」


「バ、バカ言うな! トシコさんはすぐにからかうんだから!」

 赤面しながら、ネウロータくんは先行した。


「元気そうでよかったね、チサちゃん」


 しかし、チサちゃんは少しうつむきがちである。


「どうしたの、ごはん足りなかった?」


「そうじゃない。ククが心配」


 言われてみれば。たしか、ククちゃんってヴァンパイアだから。標高が低いとは言え、太陽が照りつけるお山ではツライのでは。


「あ、あそこにいるのは」


 木陰で休んでいるのは、派手なゴスロリの少女である。付き添っているのは、ヨアンさんだ。


「どうして、山登りなんてあるのかしら?」

 ぜえぜえ言いながら、ククちゃんは岩に腰掛けている。


「仕方ないですよ。元々は神事なんですから」

「山の神様に安全祈願をする必要があるのは、分かりますわ。でも、夜でもよくはなくて?」

「夜だと魔物が出て危険ですよ。寺院も開いていませんし」

「あーもう。融通がきかない神様ですわね! そっちからいらっしゃればよろしいのに!」


 神様相手に、無茶振りするなあ。


「大丈夫、ククちゃん?」


 ヨアンさんが、こちらに気づいた。

「これはダイキ様。お見苦しいところを」

 苦笑いを浮かべながら、ヨアンさんはククちゃんを介抱する。


「ゴハン食べたの?」


 マミちゃんの質問に、ヨアンさんは首を振った。

「ワタシは、エナジーバーをかじっただけです。クク様は、お腹が痛くなるからと、何も口にせず」


「それって、ハンガーノックじゃない!」


 ハンガーノックとは、空腹で動けなくなることを言う。山道では、避けなければならない。だからこそ、登山家はおやつなどを携帯しておくのだ。


「無理して燃費の悪い高級車なんて、乗り回すからよ! それに、ヴァンパイアでしょ? 歩いているだけで消耗も激しいわ!」

 マミちゃんが叱責する。


「うるさいですわね。あなたに言われなくても分かっていますわ」


 だから、大量のお菓子が必要だったのか。


「元気出す」

 チサちゃんは、お菓子の袋を開けて差し出す。


「礼など言いませんわよ。元々わたくしのですから」

「いいから、黙って食べる」


 お菓子に手を入れて、ククちゃんはモグモグと咀嚼する。やがて、少しずつ元気を取り戻したようだ。


「ありがとうございます、魔王チサ様。主人に代わって、お礼をいたします」

「構わない。友達が元気がないのはつらい」

「友達、そう呼んでくださるのですね」


 起き上がったククちゃんを連れて、みんなで山頂を目指す。


 幸い、娯楽目的の小さな山だったので、あっという間に山頂へ。


 寺院でスタンプを押してもらい、ノルマは達成した。あとは下山して、次の朝まで待てばいい。それまでは、自由行動だ。


「景色のいいところで、ラーメン食べる」

 チサちゃんが、展望台へ。本来の目的を達成しに。


「展望台なら、屋根もある。ククも大丈夫」

「わたくしは、早く下山したいですわ」

「まだ明るすぎる。今行くとまた倒れちゃう。ここで日が少し陰るまで、待ったほうがいい」


 夕方前までに、山を降りればいい。調理場にはライトもあるから、暗い中で料理をすることもないのだ。ゆっくり行けばいい。


「そういうことでしたら、ご同行しますわ」


 渋々といった感じで、ククちゃんも展望台へ向かった。


 階段を上がって外に出ると、遠くに町並みが見える。


「あれが、第二チェックポイントの街よ!」

 マミちゃんが教えてくれた。


「わああ」

 さっきまでの疲れていそうな顔は、どこへ行ったのか。ククちゃんは、外の景色を見て一番感動していた。


「これが、わたくしの統べることになる世界ですのね?」

「まだそうと決まったわけじゃないけどな!」


 ククちゃんの言葉に、ネウロータくんが即ツッコミを入れる。


「いいか? 魔界の次期支配者はこのぼくだ。忘れるなよ」

「うぬぼれもそこまでになさいませ」


 ひと悶着やらかしそうなところで、チサちゃんが「まあまあ」と間に入った。


 ボクは水筒を出して、みんなのラーメンにお湯を注ぐ。


「ラーメン食べて、元気出す」

 チサちゃんは、お箸二つと、自分の食べる分を差し出した。


「一つしかないから、二人で分けて」

「あなたのラーメンがありませんわ」

「わたしは、ダイキとシェアするから平気」


 ボクは納得して、チサちゃんと小さいカップ麺を分け合う。


「どうぞ、ダイキ」

「ありがとう、チサちゃん」


 チサちゃんがボクに、最初のひとくちをくれた。子どもでも食べられる、優しい味だ。


「おいしいわね! 外で食べるラーメンは裏切らないわ!」

「ほんとね、少し塩分が物足りないけど、満足感が違うわ。外で食べてるからかも」


 小さなラーメンをすすりながら、ボクらは景色を堪能した。


「ほら、あなたも食べなさい」

 まず自分が食べる前に、ククちゃんはヨアンさんに、麺を持ち上げて差し出す。


「よろしいので?」

「味見しなさい」

「では、遠慮なく」


 ヨアンさんは、少し多めの味見をする。


「おいしいです。では、お嬢様も」

 二人は、小さいラーメンを分け合った。

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