第八話 様子見
そう言って魔族は構える。
俺もそれに対抗するように身体強化をかけ、相手の出方を伺う。
魔族は一瞬の静寂の後、俺に突進し爪で攻撃してきた。
そのスピードは普通の兵士なら反応できずにやられていただろう。
「おっと」
しかし、俺はその動きを見切ってかわす。
「そら、お返しだ」
そう言って避けざまに魔族の背中に蹴りを入れる。
「くっ!」
魔族は少し飛ばされながらも踏ん張り態勢を整える。
俺は小さい時から魔法の訓練と合わせて体も鍛えてきた。
いざという時、魔法だけだと何もできない事もあるかもしれないし。
俺は予防に予防を重ねいろいろ訓練していた。
剣、槍、弓矢…ただあまり才能がないのか人並み以上にはならなかったので魔法を極めたのだ。
まぁ体を鍛えたといっても、今のを避けて反撃できたのは身体強化の魔法のおかげだ。
つまり、この魔族の動きは生身の人間では対応が難しいという事になる。
魔法の使えない一般の騎士たちには厳しい相手だろう。
それこそ一流の限られた騎士しか対応できない。
魔族か……やっかいだな。
「ちっ、人間のクセにこしゃくな」
そう言って魔族が振り返り言葉を口にする。
こいつを倒すのは簡単そうだけど、今後の事を少し魔族がどれほどの強さなのか調べた方が良いな。
勝手にこいつ等の事魔族って呼んでいるけど。
「ほら、かかって来いよ」
俺はそう言って魔族を挑発する。
「……後で後悔するなよ」
魔族が真剣な顔つきになった。
さて、ここからが本番だな。
俺は心の中で気を引き締めた。