「狂信」のお守り
封筒の中に入っていたのは二つの御札お守り、それと液体の入った瓶。
さらに封筒の中には親父の直筆の手紙が入っている。
『よう麗しき我が息子よ、この手紙はお前に残す便利アイテムの紹介だ、まず一つ目、黒い札の様なお守りがあるだろ? それは「狂信」のルーンが刻まれててな………』
親父が残した代物? 使う気は無いが、持っていて損はないだろう。
黒い札の様なお守り………これか。
見た目は「安産出産」とか「健康第一」とか刻まれていそうなお守りに見えるが、所々小さく文字らしきものが見える。
これは一体何なんだろうか?
『別名「バーサーカー」、それを身に付けると痛みも恐怖も無くなる、死ぬ事に戸惑いの無くなる呪いのアイテムだ、身に付けたら笑う事しか出来なくなるぞ』
シュバッ!!と勢いよくそのお守りを投げつけた。
お守りは一直線に先程俺が叩きつけられた壁にペチンとぶつかる。
「な、なんつーもん差し出してんだあの親父!! 身に付けたら笑う事しか出来なくなるって………最早狂気じゃねーか!!」
「狂信」だから狂気なのは当たり前か、と自分自身で呟き、深い溜息をもらす。
それにしても、あの親父は何故俺を地獄に落としそうな事しかしないのか?
俺があの親父の親父だから未だにこうして生きてはいるが、流石の俺でも死ぬ時は死ぬぞ?
手紙に視線を戻して、俺は「狂信」のお守りに関しての説明の最後のページを見る。
『持って置いて損は無い、まあ使ってみれば分かる』
と、書いてあった。
―――――まあ、一回だけなら。
俺はその黒いお守りを首元に掛ける。
瞬間、意識が飛んだ。
頭の中が真っ白になって、気が付いたらボンヤリと景色が歪む。
胃酸が喉元まで上がって喉がヒリヒリする、血が出るほど引っ掻くが一向に直らないので掻くのを止めた。
そこで血が出るまで引っ掻いたのに、痛みも何も無い事に、「狂信」のお守りが効いているんだな、と思った。
確かにこれは良い、痛みも無いし恐怖も無い、死に対する絶望も何も無い。
「は」
これは好い、まるで無敵になった気分だ。
「ははははっははははははははははははははははははははははははははははははは!!!」
壊れたステレオの様に延々と笑い声を口にする、もう何も怖くない。
「―――」
…………そう思っていた矢先、アイアンメイデンと目が合ってしまった。
これはヤバイ、何がヤバイってパンツ一丁の男が意味も無く笑っているのだ。
俺ならどうする? 見なかった事にする。
案の定アイアンメイデンは目を逸らして二階へ登る。
とっとっとっと、階段を登る音が妙に耳に残って反響する。
そして大きく扉を閉める音がして、俺はそっとお守りを外した。




