2 異物妊娠
朝の9時15分、夜勤明け。
ギンギンに冷えた病棟から開放された途端ジリジリと表皮を焦がす猛々しい太陽。
スクーターを置いてある駐車場が病院から5分のところにある。
精神病院単科のこの病院にも駐車場はあるが、もれなく患者にいたずらされるので距離をとっている。
あづい・・嫌んなっちゃうぜ。
烏崑は汗を拭い、立ち止まる。
閉鎖病棟なので施錠が必須だが、鍵を閉めた筈たか確信には至らない。
でも振り返りたくはない。
あづい・・・。
そして骨に異常がある事もあり全身が痛い・・・・。
看護業界の人手不足で夜勤者の年齢制限は今年から17才にまで引き下げられたはいいが、4月に入職して4ヵ月なのに月に9回も夜勤を入れられている。
超優良ブラック企業だ。
先輩の仮眠時間には何も起きないよう祈り、ドキドキが止まらない。
ドッキンデッキン、ディグダディグダ。
ついモグラポケモンを召喚してしまうところだった。
ピロリキンピロリキンピロリキン・・
携帯が鳴る。
ヒぃ・・。
夜勤直後のたぶん病棟からの電話、命の先端がジリジリ縮まる。
何かやらかしただろうか。おそるおそる表示を見るとロク(勒)からであった。
ほっ。
夜勤明けにかけてくる事は珍しいが、ちょうど愚痴を聞いて欲しかった。
「ロッ君、どうした?今日ダイビングじゃなかったの?」
「あ、いや、今日はやめにした」
ロクは母親の付き合いでダイビングに行っていたが、いつの間にかハマってしまい、非公式ながら、日本記録を越える事が出来たらしい。
今回も誘われたが、夜勤なので断ってしまっていた。
ダイビングの魅力は全く分からないし、僕の身体の性質上、ドザエモンの誕生秘話となるだけだろう。
だが、ロクと一緒にいれるだけで素敵な気分でいられる。
「何かあった?」
「あ、いや、別に大した用事じゃないんだけどさ・・・烏崑は?烏崑今日はどうだった?」
「よくぞ聞いてくれた。腹に溜まったドス黒いものをデトックスしたかったとこなの。余すところなくもらってくれる?」
「へへ、断る」
「からの~」
「ちょっとだけだぞ」
だからロクが大好きだ。
「それが昨日さ、真っ青で胸おさえたおじさんが勤務室の窓ノックしたと思ったら口から血をブフォオ、吐いて、意識飛んで後ろに卒倒。床に後頭部衝突、パッカーン。とりあえずスタッフコール押したけどシーン。誰も来ず。医者に電話してもつながらない。今日は医者のお気に入りのNsの出勤日だからそういう事なんでしょ。僕も腰抜けそうになりながらなんとか先輩の仮眠室のドアをノックしたんだけど、返事なくて、おそるおそる扉を開けたら先輩が手首切っててベッドが真っ赤。精神科の看護師ってメンヘラ多いのよ。んでこんな状況なのにおかまいなしの患者が背中痒いからレスタミン塗ってとか、眠れないから頓服下さいとかもうゾンビみたいに集まってきて。たまたまマシンガンが僕の手元にあったら大変な事になってたよ」
「ははは、『類は友を呼ぶ』だ。ずいぶん呼んだね」
「わー僕、人気者だー、じゃないんよ、ロクー、現場にいたら笑えないんよ。もー泣きたくなるし恐怖とか殺意とかパニックとかぐっちゃんぐっちゃんで。むしろゾンビんなっちゃった方どんだけ楽かってね」
「鬼のゾンビか」
「ちょっと設定がとっ散らかってるか。つーか鬼じゃねーし、ただの何かだし」
烏崑の左前額部の角のようなものの事を言っている。
「説明になってねーし」
「いいの。訳分かんねー角なの」
「角って言ってるし」
他の人にイジられるとムカつくけど、ロクがイジってくれるのは何か嬉しい。
大好きなロクなだけに、いつもとの違いに敏感になる。
「ロク、どうした?」
「いや、ちょっと体調が悪くてね、う~ん・・・・相談があってさ。夜勤で疲れてるところ悪いけど、少し会えないかな?」
「もちろん行くよ、行くけどあんま病気の知識とか期待しないでよ。産まれたてピヨピヨの準看護師だし」
電話で話さない話とは何だろう。
胸騒ぎがするが、ここで問いただすのは野暮だろう。
ロクの神社の鳥居の神額には既に蓮寺久麻野宇須神社となっていた。
ロクと御朱印を書くアルバイトをやった事があったが、その文字も変わるのか。
手水舎で参拝者に並ぶ。
神社は八百万の神様のお家と聞いて、毎度簡易な禊を行ってからお邪魔している。
今思えば本当にお邪魔だったろうな。
中1の時、人外駆除組織『モーターヘッド』の動画が格好良くて、エアガンがめちゃくちゃ流行った時期があった。
本殿の裏山でサバゲ―をしたり、人気のない時には境内でも撃ち合った。
なのであらゆるところにBB弾が落ちている。
僕は先天的な骨異常で全身性有棘骨と言われており、走ったり素早い動きをすると、激痛が走るためどうしてもスローモーになってしまう。
だからサバゲ―の時はロクにはハンデとして四肢に10キロの重りを付けてもらった。
他にも裏山でキャンプをしてボヤ騒ぎを起こした事もあったっけ。
僕のしっかりと踏みしめる大地のないふやふやの生い立ちや不自由な身体のせいで、自己肯定感が低く、何かと消極的で友達は出来にくかったが、ロクとマユと話す時だけは後ろ暗い重いものを下ろし、翼が生え大空を舞えるのだった。
ロクはロクで、僕に同じ思いを抱いてくれていたという。
こんなにもイケメンで、頭も良くて優しいロクだが、以外な事に私立の小学校ではいじめられていたらしい。
仁王像を横目に随神門を抜けると拝殿。
左側には自宅兼社務所がある。
そういえば今日だったか、蓮寺からここに常駐する術師が来る日だったはずだ。
慶さんという40歳くらいの人で、優しくて綺麗な人だとか言っていたな。
もう来てるかな。会えるかな。なんかドキドキする。
でも、ロク大丈夫かな。割と月始めは元気がないような気がする。今日も8月2日だ。
社務所で自宅用のチャイムを押したが返答なく、外からロクの部屋へ回り込み窓を覗くと
ロクはうずくまり腹を押さえ、歯を食いしばっている。
「ロク」
ベランダ窓の鍵は開いており、靴を脱ぎ捨て駆け寄ると、
「わ、悪い、もうちょっとで収まる・・はぅあ・・」
何をしたらいいか分からず、背中をさする事しか出来ない自分に不甲斐なさを感じる。
自分の手にヒーリングのエネルギーを込めてみる。何か出ないだろうか・・・。
焦って割と素早い動きをしたので全身が痛む。
蒼白だったロクの顔は徐々に生気を取り戻し、全身の力みはやわらぎ、静かに吐息が響く。
「烏崑、夜勤で眠いところありがとう」
見上げたロクの瞳はやや充血し潤んでいる。
「いや、こっちは全然何も出来てないし」
「一緒にいてくれるだけで心強い」
「そっか、それなら少しはお役に立てた事にしておこう。それより、お腹どうしたの?虫垂炎?ちょっと見してみ。あと、シャツも湿ってるし交換した方がいいな」
と、ハンガーに掛かっていたオーバーサイズのTシャツを渡すと、ロクは受け取りじっとTシャツを見つめ、立ち上がると、
「烏崑・・お腹の事なんだけど・・」
何か言いたげに口を開くと背を向け、着ていたTシャツを脱ぐとギュッと身体を締め付けるような黒いノースリーブを着用している。
背中越しに前開きのジッパーを下ろし、脱ぐと、
「え?」
ロクの豊かな胸の膨らみが斜め後方から確認できる。うっすらと腹も膨れている。
「お腹の下の方が痛くて・・・」
「ロク・・・」
「一緒に婦人科に行ってくれないかな」
お・・おんな・・・なの?
理解が追いつかないながら、走馬灯のように浮かぶいくつかの断片。
中1からずっと一緒だったが、そういえば、連れションに行く時は必ず個室を使用していた。
マスクを着用している事が多かったのも、髭が生えない事を隠す為だったのか?
顔面偏差値マサチューセッツ工科大学みたいな女子に告られても、首を縦に振る事はなかった。
『烏崑が彼女が出来るまではいらない』なんて濁していたっけ。
そして、ずっと胸を潰していた。心も身体も苦しかっただろうに。
「小学校の頃さ、女である事の違和感を親友だと思ってた子に伝えたらさ、一気にワッと広がっていじめられた事があってさ、烏崑にも今まで言えなかった。なんだか自分の存在を全否定された気持ちになってさ・・すごくつらかった。烏崑、ホントに気づいてなかった?」
「今思うと違和感はあったのかもだけど、気づかなかった」
「その鈍感力にずいぶん助けられた」
「褒められてんだか、ディスられてんだか」
「このお腹膨れてるけど変な話、僕は誰ともヤッてないから。人外かもと思うと怖いし、検査に行きたいけど、それも怖くて、烏崑にどう思われるかも怖いし、腹ん中を渦巻くドロドロした思いがどうしようもなくって」
ロクは身体を震わせ、涙をこぼす。
「大丈夫だよ。性別ごときが今までの関係に入り込む余地はない」
烏崑はニコリと笑って見せる。
「烏崑ならきっとそう言ってくれると信じてたけど、言えなかった」
「辛かったね」
「ありがとう。ありがとう・・」
とロクは振り向きかけたところで、
「いや、だけど、あの、裸は少し・・まずい・・かな・・」
「あ、ゴメン」
その後服を着たロクの腹部を確認させてもらったが、下腹部が若干膨らんでいて少し硬かった。それが何なのかさっぱり見当がつかない。
婦人科に行くのに、男っぽい格好はどうかという事で、ロクは失踪した母親の服に着替え、ブラも着用していた。
ロクはどこか憮然と恥ずかしそうにして、
「何か下がスース―するし女装してるみたいで嫌だな」
「嬉しくないと思うけど、似合ってる。ロクみたい彼女がいたら勝ち組何だろうな」
「烏崑、まだ何かよそよそしいな」
「仕方ないだろその見た目は。少し慣れる時間くらいくれよ」
「これ終わったら、男もんの服に戻るから」
「今まで通り男として付き合うけど、多少ぎこちないとこあっても傷つくなよ」
「分かってるよ」
準看学校で母性だとか女性の身体についてひと通り学んだが、テストは先輩の過去問でやり過ごしてきただけで、ましてや童貞の僕にとって、女性の身体など架空の生物の病態生理と同程度、ファンタジーの中のものだ。
そう考えた時マユの顔が浮かんだ。
国旗をくわえている。
我那覇病院は産婦人科で、マユは医学部に通っている。
ロクにはウチの我那覇病院を勧めたが、学校の知り合いに会いたくないと検索した婦人科の中で出来るだけ外観のボロかった土筆病院を選んだ。
男性の泌尿器科みたいな名だ。
陽は高く、つむじに日焼け止めを塗るべきだったと勒と話しながら、廃墟のような土筆病院の前でマユを待ったが、急用が入ったと連絡があり来られなくなった。
何かとよく急用が入る人だ。
そういった時はたいてい絆創膏が増えていたり、鼻血のあとがあったりする。何か大がかりな手品を思いついて、失敗した。そんなところだろう。
土筆病院に入るとどことなく線香とアルコールの臭いが混じった陰気臭い待合い室には女性が一人。
腹がスイカのように膨らんでいるがずいぶんと高齢に見える。
両手首の数珠のブレスレットは黒水晶だろうか。確か邪気を払う効果があるとかないとか。
ハとした。この女性は人外を宿しているのではないか。
でも、確か閉経までの女性が宿すという噂。
この方はお腹に腫瘤のようなものが出来ているのだけかもしれない。
途方に暮れて、妊娠と思われるのを恥じて人気の少ないこの病院を選んだのかもしれない。
いやいや、でも何か違和感がある。やはりこのお婆さんのお腹には人外が?
このご時世、妊婦さんは周りの人に「人外を宿しているのではなかろうか」と思われているかもしれない不安と戦っているのかな。胎教に良くないだろうに。
幸せだけを感じていて欲しい。
このおばあさんが変態する姿を想像する。
烏崑は想像を押しのけるようにギュッと目を瞑る。
受け付けから戻ったロクに烏崑は、
「ロク、他の病院に行こうか」
と、おばあさんを見やる。
ロクは首を振る。
そうか、ようやく勇気を振り絞って産婦人科に来たんだもんな。
それに人外を宿した場合、個体差はあるものの急速に成長するという。
異変を感じた時点で受診はするだろう。
こんな大きなお腹になっての初診は考えずらい。そうすると何かの疾患か。でも大腸とかなら消化器科だしな。
「名倉トマトさん」
高齢の女性はヨタヨタと立ち上がると、ロクは素早く脇を支え、1番診察室へ付き添う。
行動がもうイケメンだ。
人間力のこの差よ。
まてよ、僕だってこの不自由な身体じゃなきゃワンチャン・・・ないか。
ロクは2番診察室に呼ばれた。
医師不足のこのご時世にこの病院に医師が2人もいるのか。
逆にこういう小汚い病院だからこそ流行るのかもしれない。
ロクは腹部エコーや採血など検査を行い、子宮筋腫が大きくなったものだと言われたと。
オペで取り除けるから大丈夫だと見せた笑顔に曇りはなかった。
絶えず人外を宿してるのではという不安に苛まれていたのだろう。
どれだけの心労か想像もつかない。
もちろん僕も気がかりはその一点だったが、ロクを差し置いてそのワードを口にする事は出来なかった。
「良かったっていうのも何だけど、ホントに良かった」
「良かった。人外じゃなかったし、誰かとやったと思われたらやだなとか色んな思いがごちゃごちゃあってさ・・ひっく・・」
ロクは口をヘの字にしてぽろぽろと涙をこぼす。
昨日まで泣いた姿なんて見た事なかったのに。
カミングアウトした事で、感情の閾値が下がったのだろう。子供みたいな泣き方だ。
ぎこちなくロクを抱きしめた。ロクの頬が僕の頬に触れ熱い涙を感じる。
・・・・ロクの呼吸を胸で感じる。
ロクは一つ大きく息を吐き、
「子宮なんて男には必要ないから、いいんだけどさ・・最近、女でいてもいいかなって思う時があるん・・だ」
ロクの吐息を首元に感じる。
ロクを神社に送り返す道すがら、コンビニでガリガリくんを買い、ベンチに腰かけ溶けないよう無心に齧っていると、ボカスカ、ハーレイの重低音を響かせる一団が駐車場に入ってきた。
この地域で最も成果を上げている民間の人外駆逐チーム『モーターヘッド』である。
何人かは、魂粥塾に在籍した事のある異能者がいるらしい。
他にも有名どころで言えば『GOKOKU』や『ブッチャーズ』などがあり、調布市が雇用している。
銃器などは市が提供しており、市民税がボカスカ引き上げられた。
ロクとサバゲ―を始めたのは『モーターヘッド』のユーチューブを見ていたからだ。
チームに動画編集の鬼才がいるのだろう。映像がクッソカッコいい。
モーターヘッドは一時は300人くらいいたが、死傷者が後を絶たず、今では70人くらいだと言われている。
リーダーの本名は分からないが、ハードロックバンド『モーターヘッド』のレミー・キルミスターを敬愛していて容姿を真似、長髪で、もみあげと口髭がつながっている。このいかついおっさんは、自身をレミーと名乗り、いつも代表曲のエイスオブスぺイズを爆音で流している。
「烏崑、あれレミーさんがいる」
「ホントだ。レミーさんじゃん」
「カッックィイ」
ロクが興奮している。
いつものロクに戻ってくれたみたいでうれしい。
一時期は本気でモーターヘッドに入ろうぜと約束したりしていた。
「あれ、2代目ベティーさんだよ」
レミーに続くブロンドの白人女性はサングラスに真っ赤なルージュ、白いタンクトップはノーブラで革パンをはいている。
初代のベティーさんは人外に喰われたらしい。
今までモーターヘッドを見た事はあったが、幹部を目にするのは初めてであった。
彼らの入れ墨のいくつかはイビツな縫い傷であった。
コンビニの緑髪の兄さんはカートに瓶ビールのケースを載せ持っていき、彼らとハイタッチをして言葉を交わしている。
レミーさんはバイクにまたがったまま豪快に蓋を親指で開け、ガハハと乾杯をし飲み干す。
動画で見るよりも圧が凄い。
烏崑とロクはモーターヘッドに近づきながら、
「人外を殺ったのかな」
「人外サイレンあったっけ?」
「鳴ってないよね。サイレンの前に遭遇したのかな」
自治体によって多少違うらしいが、ライブカメラ搭載のAIが人外を確認する、もしくは一般人が人外アプリで特殊生物対策局にリアルタイムの映像を送信する。
すると、精査された情報を元に特殊生物対策局は各自治体に指示を出す。
必要に応じて市民には防災無線のサイレンとともに、人外のランクと場所、人外の特徴などが放送される。
基本的にはそんな流れである。
人外のランクとは、同種の人外が出現したり、人外同士で子が産まれ、群れをなす事もあるので、おおまかなものがデータベースに振り分けられているだけである。
あくまでも目安なので、ランクが低くても、個体差や成長度合いによって大きく変化するものもある。
未知の人外であれば、ランクXと表現される。
僕らの視線に気付いたレミーさんは、僕らにサムアップしてくれたので、咄嗟にサムアップで返し。
「本物ですか?」
「最近は偽物もいるらしいな、ガハハハ」
レミーにオリジナルがいる事はさておき、
「祝杯ですか?」
「おうよ、見るか?新鮮、ピチピチのヤツだ。今まで長い事やってきたがランクCは2匹目でよ」
ベティーさんはカタコトで、
「ランクCて分かる?」
ロクは思い出すように、
「ランクCといえば、民間の人外駆除組織は速やかに退避すべきレベルって聞いたような・・」
レミーは自慢げに、
「そう。ランクC以上は銃が効きずらいから陰陽六氏に任せるんだが、情報の間違いがあって、ランクDっていうので急行したらCだった訳よ。変態の途中だったから、判別しずらかったんだろうな。アカヤドク1型じゃなくて2型だった訳。そもそも普段からC以上の情報はこっちに回ってこない。2型はまだデータベースに更新されてなかったのかもしれん」
ベティーは身振り手振りで胸を揺らしながら、
「変態完了してたら、レミさん以外全滅してたね。危なかたたよ」
メンバーのハーレイに連結した荷台を開けると、その人外は名前の通り、二足歩行のアカヤドク蛙のようで、背面に数百の歯や牙が生えている。
何かしら攻撃的な不穏さを感じる。
この歯は周囲の筋肉からしてウネウネ動いていたのだろう。
「こいつら柔らかそうに見えるが外からじゃ目ん玉まで弾丸を通さないんで、取り押さえて、こじ開けた口から銃口をを3つねじ込んでダダダダダダダダっつてな。やったと思ったら、プククククって全部肛門から排出しやがった。ガハハハハハハ」
がははははじゃないだろう!
「んで、魂氣を回しに回して、最大出力で内臓ミキサーを見舞ってやったのよ」
ロクは目を輝かせ、
「じゃ、やっぱりレミーさんも、陰陽六氏の関係者なんですか?」
「う~む。六氏の落ちこぼれだ。ガハハハハハハ。お前もどこかの塾生か?」
「いえ、これからです。蓮寺に入塾する予定になってます」
「入塾前とは思えんがな。そっちは?」
と、レミーは烏崑をみやる
「僕はてんでダメです」
「そうかね?」
と、レミーは烏崑を上から下まで見つめ、
「何かありそうだが、落ちこぼれには分からん。 ガハハハハハ」
ロクは、人外の違和感に気づき、
「これは・・・」
と、手を伸ばすと、ベティーさんがその腕を制し、
「危ないよ。毒あるよ。神経毒よ」
ロクが触れとしたのは、人外の左ふくらはぎにめり込んでいる数珠状のブレスレット・・・。
「これって、この人、どこで?」
「どこってそこの土筆病院」
「う・・ッ」
烏崑とロクは込み上げる嘔気に口をおさえた。
「診察中急に変態始めたらしい。ほんの目と鼻の先をモーターヘッドが巡回していたから良かった。でなきゃ病院スタッフ。全員喰われてたぞ。変態後の人外は空腹で気が荒い」
トマトさん・・・・。
この人外は間違いなく名倉トマトさんが変態したもの・・・。
レミーはメンバーを見渡し、
「前回Cランクを駆除した時にゃ、かなり色をつけてもらったからな。期待できる。おまけに誰一人怪我もない。最高じゃい。チアーズ」
レミーはビール瓶を掲げ、メンバー達の野太い歓声が上がる。
人外は元の人とは別の生命体と捉えられているので、駆除という言葉が使われるが、人から人外への連続性を容易に切り離す事は難しい。
レミーさんは帰り際に、何かあったら使えよとモーターヘッド印の発煙筒をくれた。
メンバー間で使用するものらしいが、期限が近いからと6つも渡された。
これは何かのフラグか?




