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ゴースト・ウィンド:特異超常現象捜査課  作者: さだはる
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EPISODE 97「Me time(私だけの時間)」

この騒動の犯人が雲雀の実の姉、天音であることが判明した。

さらに天音は最初から琥珀たちに仲間意識はないし、雲雀に対しても家族としての情など一切ないと断言した。


そして自身の妖影ゴースト・『人形神ヒンナガミ』を“武装”して全身に兵器を搭載した殺人人形と化した。

そして巨大な怪物となった天音は実の弟にさらに冷酷な一言で殴りつける。


「消えなさい…人生の汚点。」


「…!メス猫、お前はどっかいけ…これは俺たちの問題だ。

てめぇはカシラたちの加勢に行けよ…。」


「でも…。」

「行け!」


雲雀は琥珀に銃を向けて脅してまでも彼女を自分たちから遠ざけた。

今までの全てが嘘だった、怒りに燃える雲雀は一人姉に立ち向かう。



一方花は人形集団に追われていた。


「うわぁぁぁなんなのこれぇぇぇ!!!」


人形たちは四つん這いの体勢で足を高速で動かしながら花を追いかける。

口を大きく開けてカタカタと音を鳴らしながら花を捕らえようとする。


花自身もこの組織の全体構造が分からないため、道が続く限り逃げ続ける。

もう息も絶え絶えで脚が棒になる。


必死で逃げた先でたどり着いたのはかつてシンを捕らえていた独房の近くであった。

密室に自ら入り、自らで道を閉ざしてしまった。


「オーマイガー!」


そして階段の上からカタカタとかいう轟音を鳴らしながら花の目の前まで迫る。

思わず空いている独房の中へと入ってしまい、そこに五体の人形たちがジリジリと歩み寄る。


「いや…来ないで!(どうしよう鉢合わせただけでこんなことになるなんて…風雅助けてぇ!!)」


いくら泣きべそかこうとも、感傷を消された人形たちは容赦しない。

一体の人形が四つん這いの状態でとてつもないスピードを使って花に迫ってきた。


花が悲鳴を上げた瞬間、再び彼女の背後から白い脚が伸びて人形の顔面に直撃した。


「また…コレ、なんなの?!で、この人形…キックが当たったら止まっちゃった、体も指も目も…まるで時が止まってるみたいに。」


『そう、止めたのよ私が…時を。』


今まで彼女の背後からは脚だけが伸びていたが、今度は女性の声が聞こえた。

どことなく自分の声に似ていると感じた。


花が振り返ると、そこには純白と虹のオーラを纏った華奢な兎の姿を模した亜人が浮遊していたのだ。

これが花の真の妖影ゴーストである。


「どういうことなの…時を止めたって…。」


『三秒後、答えが分かります。』


花の妖影ゴーストは花に答えを教えるためにキックを入れた人形に指を差して、呟いた。


『三秒経過…時が動き出します…!』


その直後、止まっていた人形の体に痙攣が起きて、その場で激しく暴れながらひび割れていく。

そして頭から脚にかけて粉々に砕け散った。


「す、すごい。あなた誰なの…?」


『私はもう一人のあなた、名前はすでにあなたの魂に刻まれているはずです…。』


「私の…魂。」


そうこうしていると、他の四体の人形たちが一斉に襲い掛かってきた。


『覚悟を決める時です…花。私の名前を叫ぶのです。それが契約、それが私の力を使う証!』

「で、でも…!」


『あなたは何のために…誰のためにその力を使いたいのですか…?』


妖影ゴーストの一言で、花は何かに気づいた。

そして、恐れをなして逃げ回っていた自分の頬をたたいて鼓舞したのだ。


「私は…これ以上誰か辛い目に遭っているを見たくない!そして誰かを傷つけて泣かせている人を許さない!!」


『覚悟は決まったようですね。では私の名を叫ぶのです!』


四体の人形たちが花の腕に触れようとした時、ついに彼女は覚醒した。



        「蹴散らして!『月兎アリス』!!」



叫んだ亜人の名は『月兎アリス』。

花の脚が兎型の亜人と重なり、その白い美脚を連続で人形たちの体に打ち込んで独房を抜け出した。


『時は停止する…!花、覚悟を決めることが出来ましたね…。』


「これでまた皆に近づけたかな…。」


花は階段を駆け上がって他の妖狩エージェントたちと合流することにした。

とりあえず逃げて来た道を戻ってみると、本部中枢にたどり着き、凱たちが苦戦を強いられていた。


「龍我、後ろ行ったぞ!」


と、凱が忠告をする前に龍我が背後に迫っていた人形を撃破してしまった。


「ん?何か言った?」

「いや、なんでもない…幻覚だったわ。わっ!」


逆に背後に迫っていた人形に奇襲を仕掛けられた凱は大剣で受け止めて龍我に助けを求めた。


「頼む龍我…助けてくれ…!」


「エー!ナニーキコエナーイ!」

「こいつわざと…!」


すると、凱に襲い掛かっていた人形の体が凍りつき、高速の斬撃によりあっという間に一刀両断されてしまった。


「まったく…君たち相変わらずだね。」

「助かったぜ真白…。」


しかし人形の波は止まらない。今度は武器を持った人形たちが三人に襲い掛かる。

全員が“武装”を駆使して応戦するが、一体一体のパワーが強いため、苦戦を強いられる。


「鍛えた後にこのザマかよ…オレたちは!」


「みんな!どいてぇ!」


その時、龍我たちの背後から花の声が聞こえた。

凱と真白は仰天して、花を止めようとしていた。まだ力がないと思っているからだ。


「花ちゃん、止まって!」「花子逃げろ!龍我てめぇも止めろ!」


「もう、足手まといの私じゃないの!止まらないよ!」


龍我だけは花を止めなかった。彼女の覚悟を決めた顔を見たからだ。

妖力や術式の使い方を教えた龍我はこのなかの誰よりも彼女の力を見抜いていた。


「「“ラビット・スタンプ”」私だけの時間よ!!」


人形たちの体に連続キックを叩き込んで、全員の時間を止めてしまった。



         ー「“ラビット・スタンプ”」ー

花の新たな術式。妖影ゴースト月兎アリス』と脚を一体にしてキックを打ち込むことで、相手の時間を止めることが可能。任意で解除可能で溜め込んだ衝撃を一気に解放する。



「三秒経過…時が動き出すわ…!」


その瞬間、先程同様に人形たちの体が激しい痙攣を起こして粉々に砕け散った。


その光景に目を輝かせた龍我は真っ先に花へと向かっていき、彼女の肩を掴んだ。


「ついに覚醒したんだね、花ちゃん!」


「うん!これも先生のおかげだよぉ〜!!」


二人はハイタッチを交わして、喜びを分かち合った。

妖影ゴーストと対話出来たのは花本来の才であるが、初見にてここまで力を扱えるのは龍我の教えがあったからだと花は思っている。

実際どの術式も自分の妖力の波をコントロール出来ていないと制御が難しいのだ。


喜んでいたのも束の間、壁に空いた穴から一人の男が現れた。


「なんだぁ?このガキクセェところはよぉ!」


「お前も来たのか…操!」


凱たちは再び構えをとって侵入した糸使いの妖、操から花を守ろうと彼女を三人の体で囲った。


「お邪魔するぜぇ…?」



       EPISODE 97「Me time(私だけの時間)」完

           次回 98話


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