EPISODE 57「迫る財団、悪魔の軍団」
脱獄囚たちを撃破し、一段落ついた…とはいい難い。
まだ花の体の中には『女王』の幼体が蠢いているのだ。
脱獄囚と戦った妖狩たちは全員椿医師の厄介になっていた。
「君たち…私を殺す気か?一人どれくらいの負担がかかるか!」
全員無傷そうに見えるが、実は超回復能力がカバーできないほどの怪我をしており所々骨が折れている。
ベッドに横たわる花はみんなと椿のやり取りをクスクス笑いながら覗いていた。
元々ここに来たのは治療を受けるためではない、花にお見舞いの品を渡すためだ。
風雅は狐のぬいぐるみ、凱はお守りで雷牙と被った。二人はとても気まずかった。
琥珀は服、龍我はプレゼントに慣れていなかったので駅で買ったストラップと弁当を渡した。
龍我のプレゼントを見た凱は顔を歪ませながら突っかかる。
「んだよ龍我そのふざけたプレゼントは!もっと気持ち込めろよ!?」
「うっさいな慣れてないんだから仕方ないだろ!こういうのは気持ちなんだよ!キミは雷牙先輩と被ったことを反省しろっ。」
「んだとこのガキ!」
医務室で二人は掴み合いの喧嘩を始め、部屋の中をぐちゃぐちゃになるのを危惧した琥珀に拳骨で成敗された。
「ごめんね花姉ぇこのバカ!たちは連れてくから〜。」
「あ、あはは…。」
皆は医務室を出ていったが風雅だけは留まり、椿に相談していた。
「先生、俺の“武装”なんか変なんすよ、発動したと同時に鎖が巻き付いてくるんです。あと相手殴ると攻撃が全部、自分の心臓に来るんですよ…。」
「たしかに変だな。君の術式は風で、“武装”も相手の攻撃にペナルティが生じないはずだが…少し調べておこう。」
そしてオマケに「疲れたから。」という理由で湿布を貼ってもらった。
上裸のまま花のいるベッドに近付いた。
「うわっ、なんで裸なの!?」
「こっちの方が涼しいのよ。それよりさ、体の方は大丈夫?腹の中に暴れたりしてない?」
「うん、今だいぶ安定してるよ。」
風雅は怖くないのかと花に聞くが、彼女は不安な様子を1ミリも見せず笑ってみせた。
「だって皆がいるもん、昔言ってくれたもんね『俺が絶対守る』って。今も信じてるよ…。」
「そっか…じゃあ大丈夫だな俺たちが守る!」
すると花はとあることに気づいた。風雅の右上腕に「1」という数字が刻まれていたのだ。
「風雅くん、その…数字って何?」
「これか…これは俺たち妖狩全員に刻まれた財団からの印だ。」
かつてデイブレイク後の東京をたった数人で生き残った非力な子供時代。
そのまま財団の職員に捕らえられ、それぞれ1〜30までの番号をその身に刻まれた。
「じゃあ他の皆も…?」
風雅は右腕、雷牙は右脚に「2」、凱は肩甲骨に「5」、龍我は背中に「6」、琥珀は腹に「8」、椿先生は胸の中央に「14」と刻まれている。
「奴らに刻まれたもんは…もう一生消えないんだ。」
「ごめんなさい。嫌だったよね…。」
「いやいや大丈夫よ。」
その後も二人は雑談をしながら医務室で過ごした。皆からもらったプレゼントについて話したり、今度何をしたいかとか、なるべく腹の中の『女王』を忘れるように。
「あっ、そうだ風雅くん、今度一緒にお料理しよ!ハヤシライス一緒に作ろー。」
「おっ、いいね。じゃあ約束ね!一緒に作って皆の舌を唸らせよう!」
二人は約束をしようとお互いの小指で指切りをしようとした時だった。
彼女の壁の影から何者かの手が伸びて、花の手を掴んだ。
「え…。」
「花ちゃん!」
花の体が影の中に沈み込んでいく。やがてその手の主が風雅に顔を見せた。
「『器』はもらい受けるぞ…妖狩…。」
「『死神』ぃぃぃぃ!!!」
特異課に敵が潜入した。何故出来たのか、それは『死神』が元・妖狩であり馴染みのある場所だからだ。
いくら記憶が消えようとも深層心理のなかでは覚えていたのだ。
「花ちゃんを返せっ!!」
「風雅くんっ!!」
しかしその手は届くことはなく、花の体は壁の中へと消えてしまった。
「クソぉぉぉぉぉ!!!!」
何も出来ずに花を連れ去られてしまった風雅は、怒り、壁を殴ることしか出来なかった。
『女王の器を奪還せよ。』
EPISODE 57「迫る財団、悪魔の軍団」完
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