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妖狩:特異超常現象捜査課  作者: 定春
『女王を死守せよ。』

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EPISODE 55「怠惰な暴力」

『神狼』こと風雅は『死神』と戦闘を繰り広げていた。

風を纏った体術を駆使しながら攻撃する。


「凱を何処にやった!!」


「奴への手向けだ…過去に取り逃がした宿敵という手向けをな…。」


風雅は舌打ちをして、『神狼』の“武装”を発動。しかしいつもの“武装”と違って、右腕に銀色の鎖が巻き付いてからガントレットが形成され、装甲にも鎖が巻き付いていた。


「なんだこれ!」


「式神はそろそろお前に愛想を尽き始めたようだな…大人しく俺の刃の錆となれ…。」


『死神』の体から立ち込める赤黒いオーラが刀へと移っていき、一瞬で抜刀し、「“斬月”」を発動した。


風雅は体を仰け反ってギリギリで回避した後、ガントレットのブースターから風を噴射して近づき、全力の「“疾風弾”」を『死神』の胴に叩き込んだ。その際に翡翠の狼のオーラは『死神』の体を突き抜け咆哮を上げながら消えた。


通常の「“疾風弾”」とはどこか違い、拳から放たれた衝撃は体の内側に響き、気づけば吐血していた。


「体が震える…いや、臓器は何も傷ついていない…なんと面妖な術だ…!」


そして間髪入れずにガントレットで顔面を殴り、そのまま馬乗りになって殴り続ける。

「自分の先輩だから。」とか「鴉丸と仲良かったから。」とかそんな情けは一切かけない。

「花を狙う者。」それすなわち全員敵だ。


右手に持った刀・「“月闇ツクヨミ”」を振るって風雅を引き剥がした。


「貴様、なぜあの女に肩入れする…。たかが『器』に情を持ちよって。」


「たかが『器』だと…ふざけんな!俺たちと花ちゃんは…家族だ!これ以上てめぇら財団の実験の被害者なんて…増やしたくねぇんだよ!!」 


風雅は拳を構えて『死神』に向かって走り出していく。


その一方で、『玄武』こと凱は七つの大罪である『怠惰スロウス』に苦戦していた。


『怠惰』は紫と緑色が混じった歪なオーラを持ち、その後凱を苦戦させていた見えざる「何か」を分かりやすく可視化してあげた。


その姿は体調2メートルはあるであろう緑色の巨大な熊だった。


「く、熊だと…!」


「どーお、これが僕の式神『鬼熊』…そして僕の術式「“怠惰アーケディア・暴力モンスター”」!」


         ー「“怠惰アーケディア・暴力モンスター”」ー

『怠惰』の術式。自身の式神である『鬼熊』を顕現させ、自分の代わりに戦わせて本体が動くことはない。まさに怠惰。


実際、凱を『鬼熊』と戦わせている時、本体である『怠惰』は寝転んでいるだけだった。


攻守ともにすぐれた『鬼熊』はその圧倒的なパワーで凱を追い詰める。

負けじと監獄の床を隆起させ、行く手を阻もうとするが爪で切り裂き、タックルで凱を吹き飛ばす。


いくら骨が折れようと、いくら肉が裂けようとも不死身なので完治する。

動く物全てを破壊する『鬼熊』も動くことを止めない。このままではイタチごっこだ。


「あれれ〜もう終わりじゃないよねぇ君は実に弱いな〜あー弱いなぁ、だから仲間も人間も何も守れなかったんじゃないの?かわいそw哀れw…仲間もきっと弱いんだろーなー!もう全員殺されてるよ!」

「…!」


この時、ついに凱の中で何かがプツンと切れた。

激突した際に立ち昇った土煙を利用し、その煙の中から大剣を飛ばした。

『鬼熊』は涼しい顔でまっすぐ飛んでくる大剣を弾いた。

しかし煙の中から『玄武』を“武装”した凱が登場し、黒い盾の一撃がついに式神にヒットした。


「ぶっとべぇぇ!!」


凱の放った「“砕”」により内部に大地の衝撃を与えられた『鬼熊』は『怠惰』の真横まで吹き飛び、同時に彼の腹に歪みが出来て苦しみだした。


「へぇ…お前さんとそのデカブツ、感覚共有してんだな、そりゃそうだろうなぁ自分の分身だからよぉ!必ずぶち込んでやるぜ、地獄という名の監獄によぉ!!」


もう、あの手も足も出なかった凱ではないとこの時『怠惰』は確信した。だがそれでも本体は動かず体勢を変えて座り込んだけ。


「行け『鬼熊』…あいつをぶっ殺せ…マジ死ねよ凱くん、いや『玄武』!」


『鬼熊』は咆哮を上げて凱に向かっていく。しかし、盾からバリアを張って拳を受け止めた。少し体は沈み込むが“武装”により吹き飛ばされることはない。


「俺の祭りは…まだまだ終わんねぇぞぉぉぉぉ!!!」


『鬼熊』の腹に『玄武』の紋章をつけて「“砕”」を繰り出す。さらに倒れ込んだところの顔を殴り、蹴り、アッパーカットで腹を打ち抜く。


同時に本体である『怠惰』も苦しみ始め、ついには血を吐いた。

凱は倒れる『鬼熊』を横目に通過し、無言のまま苦しむ『怠惰』の前に現れた。


「おい、俺のことはなんて言われようが別にいいわ…だけどよぉ、俺の信じる家族たちを馬鹿にするようなことは絶対に許さない!!」


凱の怒りの一撃が『怠惰』の腹に撃ち込まれた。式神経由ではない初めての直撃、息もできないほど苦しんだ。


「あいつらは誰よりも、強いっ!!何も知らないお前が馬鹿にできる相手じゃねぇんだよ!」


みんなと共に七つの大罪が引き起こした“デイブレイク”後の世紀末都市を非力な子供の力だけで生き延びた凱たちは誰よりも仲間を信頼し、愛している。


それを自分たちの本当の家族や罪なき人たちを皆殺しにした犯人の一人に嘲笑されて怒り心頭になるのも当然のことだ。


「ご、ごめんなさ…!」


「てめぇ如きが謝っても殺された人たちは帰って来ない…命の重み…思い知れ『怠惰』っ!!」


最後の一撃を叩き込もうとした時、『怠惰』はニヤリと笑う。

そして『鬼熊』が凱の体を貫いた。

しかし、凱は動じなかった。腹から拳が突き出ているというのに無表情で『怠惰』を見つめ続ける。


「この化け物め!」


『怠惰』の目元に爪型の痣が出現し、緑と紫色のオーラが解き放たれた。そして凱の体を貫いた式神を“武装”した。

その姿は熊の着ぐるみを着たような感じだが微塵も可愛いとは思えない。


たった一撃拳を振り上げただけで凱の上半身は肉が消し飛び骨は砕け散った。


「さすがに心臓と脳は潰した…いくら不死身でももう終わりだろ!…!?」


しかし、下半身だけとなった凱の腰から血管のような物が成長する植物のように伸び、胴、腕、首を形作り、内臓が出来て骨が囲み、やがて筋肉が骨を覆う。さらには顔も復元され、完璧な状態で復活した。


「死ぬかと思ったぜ…!」


「な、なんだってぇぇぇ!!!」


『怠惰』は再び絶望的状況に追い込まれるのだった。


             EPISODE 55「怠惰な暴力」完

           次回 第56話

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