EPISODE 31「止まらぬ獣」
妖狩:『玄武』を連れ戻すため、風雅は彼と激闘を繰り広げ、勝利を収め凱を連れ戻すことに成功した。
それからどした一週間後
激闘で負傷した風雅はすっかり回復し、凱を連れて本部へと訪れていた。
凱は今までの謝罪をするために鴉丸の前に立っていたが中々口を開かない。
「…凱、俺になんか言う事ないか…?」
鴉丸はジト目で気まずそうな凱を見つめる。司令室に入った時は平然として何も恐れぬ顔をしていたが、改めて司令官に詰められると、ダラダラと大量の汗をかいて固まってしまった。
風雅は凱の腕にトントンと肘を当て、小さな声で謝罪の言葉を言うように促す。
「ほら、ちゃっちゃと言えよ、言えば全部丸く収まる鴉丸のおっさんに殺されなくて済むぞ?」
「ご…ごご…ごめ…ごま…」
カシラとしてのプライドが「コイツにだけは頭を下げたくない!」と身体に訴えかけ、中々頭を下げようとしない、体も小刻みに震え始め、歯を食いしばる。
その時、突如凱の体が床に突っ伏し、とてつもない重圧を感じた。
「ごめんなさい、でしょ!カシラ。」
この力の正体は重力だった。そして司令室の入り口に小悪魔みたいな顔を浮かべた琥珀が立っていた。
「ニャハ♡」
「琥珀!?お前もう起きていいのか?」
「こ、子猫か!おいこの重力解け!」
「ごめんなさい言うまで解きませーん。」
そういう琥珀はどこか嬉しそうだった。デイブレイク後の子供時代、琥珀が一番懐いていたのは凱だったのだ。兄のような父親のような雰囲気を感じていた。
「カシラ」と呼び始めたのも琥珀だった。
「ご迷惑をかけて…ご、ごめんなさい!!」
上からの強大な重力に押しつぶされそうになりながらも土下座の姿勢を作ってついに鴉丸司令官に謝罪することに成功した。しかし凱本人はふと疑問に思った。
(あれ…何で俺謝ってんだ?)
圧力に抑えられながらも頭を上げて鴉丸の顔を見た。すると今まで見たことのないような不敵な笑みを浮かべていた。
「そうだ、それが見たかっただけだ。」
「こんのクソ親父ぶっ殺すぞっ!!」
琥珀は“重力”を解除して動けるようになった凱は立ち上がって鴉丸に襲い掛かるが、鴉丸渾身の腹パン一発で白目を向いて倒れた。
「あーりゃりゃ。」
「カシラー、カシラ起きて〜。」
琥珀は倒れた凱の脇腹を人差し指でツンツンと突く。その直後に目を覚まして腹を押さえながら立ち上がる。
「いってぇ…さすがボスのパンチだぜ。まぁ謝罪の件は百歩譲ってやる、重要なミッションがあるんだろ?ボス。」
「察しがいいな、お前には重大なメインミッションを与える。」
そして鴉丸の口から語られた凱のメインミッションとは
『囚人たちを地獄に送れ。』
「去年お前が殺し切れなかった囚人どもがまだのさばっている。特定次第ミッションが発令される。今度は失敗するなよ、特異課に貢献しろ…。」
「その言い草は気に入らねぇが承った…これは俺の贖罪だからな…!」
さらに二日後
風雅は夕飯の買い出しを済ませ、スーパーマーケットから出てきた時だった。
ケータイを開いて時刻を確認していた。
「凱は頑張ってんだろうか…取り逃がした囚人全員倒さないと行けないって結構大変だよなぁ…。」
その時だった。突如スーパーマーケットの中から巨大な灰色の物体が壁をぶち破って現れた。
その姿はまるでサイ、あまりのパワーでそのまま走り出し、止まることを知らない。
壁を破った衝撃で風雅は尻もちをついてしまう。
さらに雄叫びを上げながら信号待ちをしていた乗用車の列に突っ込み、大事故を起こした。
「っ!馬鹿野郎っ!!」
風雅は買い物袋を置いて、特殊防護服を装着してサイ型の妖の元まで走る。
掌から風を噴射して跳び上がり、物を破壊しながら全力疾走をする妖の巨大な鉄の装甲に飛びつく。
そこからさらに跳び上がり、拳に風を纏わせて妖の頬に一撃を入れる。
しかしダメージが入ったのは風雅の方だ。体どころか顔も頑丈でパンチ一発がまったく効かない、逆に体が痺れて動けなくなってしまう。
サイ型の妖はその一撃で動きを止め、まるで顔に付いたハエを払うように手で風雅を払い飛ばし、その威力で駐車場に落下し、クレーターを作ってしまう。
「なんか最近の俺ボコられてばっかじゃない!?」
妖は破壊行動より風雅に狙いを変えて、ゆっくりと鉄の塊が歩み寄る。
「お前…俺の邪魔するな!!」
妖の拳が風雅に振り下ろされる瞬間だった。その拳は風雅の体の上で止まった。
何事かと辺りを見渡すと聞き覚えのある声が聞こえた。
「よぉ兄弟、ボロボロじゃねぇか。」
「…凱!」
風雅のピンチに駆けつけた男は、妖の巨大な拳を片手一本で受け止めていた。さらに拳を大地の力で赤熱化させて、その衝撃波で妖を転倒させた。
そして背中に背負った大剣を下ろして宣言する。
「妖狩:『玄武』、ミッションを遂行する…さぁ祭りの始まりだぜぇ!!!!」
EPISODE 31「止まらぬ獣」完
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