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【連載】Dark × Marriage[ダーク×マリッジ]〜死せる花嫁と漆黒の護衛騎士〜  作者: シロヅキカスム
▼おまけSS

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がんばれ!リリアちゃん⑥【完】

6 晴れた少女の笑顔


 そして、誕生日の日──。


 青い空の下で、フィオナお姉さまの希望どおり、庭園でのお誕生日会が開かれました。


 落ちたお天気人形をもう一度吊り直したことで、魔法の効果が間に合ったようです。あのあと、お昼ごろには風と雨脚が弱まり、その日の夕方ごろになると不思議なことに雨は止んでしまったのです。


 きっと早めに雨がたくさん降ったおかげで晴れたのだと、リサが言っていました。もちろん、魔法のお天気人形のことはみんなには内緒です。


 残り一日も空ければ土は乾きますので、お義母さまも納得してゴーサインを出してくださいました。


 お招きしたお客さまに囲まれて、祝福の言葉を受け取るお姉さまの顔は本当にうれしそうです。すっかり、いつもの優雅な調子も取り戻されたようでよかったです。


 でも、そんな晴れやかな席でたった一人、わたしだけが固まった笑顔の下でブルーになっていました。

 というのも、じつは……姉に贈る誕生日プレゼントを用意するのを、すっかり忘れてしまっていたのです。


 言い訳がましいのですが、まったく覚えてなかったわけじゃないんです。なにを渡したらよいか、それはそれは頭を悩ませてずーっと以前より考えていました。


 そこへお天気の問題が入りこんだでしょう?

 リリアってば、魔法のことばかり考えて、天気が晴れたことに浮かれてしまって……贈り物のことが頭から飛んでいってしまったのです。


 あぁ、どうしましょう……。

 年頃の子どもたちが次々に、お姉さまにプレゼントを渡しているというのに……。


 わたしは賑わいから離れて、一人目立たない位置から、喜ぶ姉の顔をさみしく眺めていました。


 と、そのときです。

 近くの低木の茂みから、なにかがにゅっと突き出るように現れました。


「きゃっ……あれ?」


 小さく悲鳴を上げましたが、現れたそれを目に留めると今度はぽかんとしてしまいました。


 茂みから突き出たのは、手です。麻の袖を通した子どもの手でした。


 その手には小ぶりな花束が握られていました。

 ピンクと白の薔薇を、紙で包んでリボンで控えめにまとめたものです。手は、花束をリリアに差し出すように向けています。


 反射的に受け取ると、手は──その人物は茂みをがさがさ揺らしながら、どこかへ消えてしまいました。


 両手で捕まえた花束をしばし、まじまじと見つめていたわたしでしたが……大きな拍手が湧いた拍子に、ぱっと顔を明るくさせました。


 晴れた空の太陽に負けないくらいの、とびきりの笑顔で。

 そして賑わう輪の中心に向かって、駆け出しました。


「フィオナお姉さま! お誕生日おめでとうございますっ!」


 ──と。



 * * *



◆ おまけのおまけ



「あぁ、ぐずついた泣き虫天気すらかしずかせてしまうなんて、わたしも罪なオンナね。白嶺の華にふさわしい令嬢とはこのことなのかしら──ねぇ、ディオス」


 上機嫌に笑いながら、贈り物であふれる自室にて、十歳となったフィオナは従者の少年に話しかける。丸テーブルの花瓶には、ピンクと白の薔薇もちゃんと生けてあった。


「あなたが手入れをした庭も評判がよかったわよ。特に薔薇がね。庭師の才能があるって、みなさま誉めていらしたわ」


「ありがとうございます……」


「でも、忘れないでね。あなたはわたしを守る騎士になるんだから。館の仕事も大事だけれど、ちゃんと剣の鍛錬は手を抜かないこと! いいわね?」


 ディオスは「御意」とだけ返事をした。


 用のなくなった彼は部屋から下がろうとするも、「お待ち」とフィオナに呼び止められる。彼女はおもむろに従者のそばに近寄ると、すんすんと鼻を動かして……それから眉を寄せた。


「最近、あなた変な臭いしない? あれでしょ、たぶんあなたの部屋──裏の納屋の地下にある小部屋、きっと雨のせいでカビているんだわ。ちゃんと風通しよくするのよ」


 そう言ってから彼女は従者の脇を通り過ぎ、くるりと身をひるがえす。「それと──」と、まるでドアを背に立ち塞がるようにして、なにかもったいぶった仕草で視線を斜め上へと向けた。


「なにか忘れているんじゃないかしら?」


「?」


「とぼけた顔しなくてもいいわ。ちゃんとあるんでしょ、プレゼント!」


 両腕を腰に当てて、フィオナは少し背の高くなった相手の顔を下から覗きこんだ。


「今年ももらってあげるって言っているの。まぁ、いつもどおり庭で育てた花なんでしょうけれど──」


 言い終わらないうちにディオスが懐からなにかを取り出し、主へと差し出した。それをさっと受け取ると、フィオナは彼に背を向けた。


 花ではなかった。きちんと贈り物の種類を変えるとは殊勝な心がけである。


 それは麻の小袋であった。あえて表情は見せずに、フィオナはわくわく胸を高鳴らせて口紐を解く──が、その中身を見たとたん、彼女は小首をかしげて、こうつぶやいた。


「……(いも)?」

「…………」


 あとで蒸かして食べましたとさ。

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