シナリオ #01
その少女の名は、フィオナ・ベルベット。
交易都市ドレシアを中心とした領地一帯を治める侯爵、イゴール・ベルベット卿のひとり娘です。
母親はフィオナを出産後すぐに亡くなり、父親は仕事に一辺倒の人物であったため、彼女はとても孤独でした。
館での唯一の相手といえば、お付きとして迎えられた少年──ディオス・シュスだけです。
七歳になるとき、さらなる悲しみが彼女を襲います。
父のイゴール卿が再婚したのです。
継母とアマンダと、その連れ子で義妹となるリリアという新しい存在は、少女の心に暗い影を落としました。
「ああ、ついにわたしはお父さまから見捨てられてしまったのね。
継母に、血のつながらない妹……きっと、手ひどく虐められるにちがいないわ」
かわいそうなフィオナ嬢。
継母らを館に迎えるその日、彼女はディオス少年とともに、亡き母の部屋に忍んでいました。
肖像画でしか知らない母の姿──そのぬくもりが残る夫人部屋に出入りできるのも、今日かぎりです。
馬車が到着するまでの時間……フィオナは思い出のつまったこの部屋で、従者の少年にみずからの考えを打ち明けました。
「わたしは哀れで無力な子ども……。
でも、そんなわたしにもたった一つだけ、ほかの子どもにはない『特別なもの』を持っているの」
それは『侯爵令嬢』という、高い身分でした。
しかし、身分を持っているだけではダメです。
より価値のある存在になるためには、教養を身につけ、稽古ごとに尽くし──その品格を輝かせなければなりません。
貴族の令嬢として、最上の『白嶺の華』を目指すこと。
愛されない自分が幸せになるには、それが唯一の道であると、少女は少年に語ります。
「花はか弱いの。ディオス、あなたはわたしを守る剣に──護衛騎士になりなさい」
「……はい」
華と生き、剣と生きる。
フィオナ嬢と、従者ディオス。
二人の子どもは互いに、己の運命を誓い合うのでした。




